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砂の城
彼女はいう、その火をもっとこっちに近づけて。耳を照らし出して。あなたならみつめて。
彼はいう、みえてないと思ってこっそりと食べてたねさっき。
彼女はいわない、押さないで。
彼はいわない、針千本。
彼女はいう、誰にも追い払えなくてしかも青いベンチの位置ばかり意識するのは止めて。
彼はいう、お前の頭の中のキスは冥王星でかますタイプのだけどそこんとこどうよ?
彼女はいわない、不自然な午後の紅茶。
彼はいわない、楽しいな毎日。
彼女はいう、お揃いがいいの。
彼はいう、決めたここにこれを置くって。白くて野蛮な句読点。
彼女はいわない、いつだって彼はいってはくれない。
彼はいわない、いつだって彼女はいう。




