閉園後のきみが好き
閉園後のきみが好き。帰るべき時刻に帰るべき場所を持つ地元民に振り返られることのないきみ、きみと僕とだけがここに残ることになる。僕はきみが本当に好きだ、誰にも見せられないときみの思う顔を見てるとまた好きになってた。居て。きみの声がいうのが、きみの起こす強い風に紛れて聴こえた気もする、閉園後。きみという幽霊屋敷、きみという回るティーカップ。僕は一人きみというジェットコースターに乗り込んでじぶんなんか見失うし、音声案内の時のきみを見上げる。ここは、いつか廃れることになる場所。きみは誰とも、何の約束もできはしない。きみはあまりに儚い存在だ。一日効果を発揮しない。だから、いつ見離されてもいいように、笑い顔できみはいる。きみの声がなくなる、閉園後のきみ。
夜中に雨が振りだす。
きみが、毎朝、毎晩、考えることを止められないのを僕は知っていた、少なくない数の人々が知っていた、きみを知ってる。きみが忘れなきゃいけないきみ、きみが忘れてしまうきみも、僕は欲しいから、さ迷い歩く。
屋根のある場所では、濡れずに済む。うつむいて、靴先を見て、でも、いつか、と僕は呟く。
昔、きみに辿り着いたみたいに、まだ何かあるって、信じさせていて。




