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この世界で居残り錯文






 私だって私だって私だって、私にだって日々がありそしてこれまでの日々の私だって私だって私だって、とか残像のようなものが無闇にやたらめったらこの部屋の中をノンストップでうごきわっているのをがらんどうの瞳で見上げて、いる。私だって私だって私だって。忙しくカーテンを開け閉めする私、私なりに古い人間のダンスを踊る私も、見えたり見えなかったりし、かけがえのないじぶんを自分で抱きしめてあげてる私も見えたり見えなかったり、した。もういやだ、限界がきた。もう辛抱ならない。

 私は絶叫する。



 両隣から壁を叩くか、蹴るかされる。

 私は、誰かの髪の毛をひっぱる、この誰かとは、きっと誰でもない誰かなのだから、これはいいのだ、痛みを訴える資格なんかこいつにはないのだ。

 一通り済む。

「アイ・ニーヂュウ・ソー」

 これを指でかき回し渦を巻かせる。

「アイ・ニーヂュウ・ソー」

 それを、昨日というひとつのカップに注ぐ。

 血走った目に違いない目で今、私はこれを見下ろすことしかできない、これだけが私の精一杯。

「アイ・ニーヂュウ・ソー」



 一回、放置することにする。

 床に倒れたいように倒れた私は、私は泣きたい、それからとうとう私は泣きだして、もちろんこの部屋にとっての私が異物混入罪だった、とてもひどい気分だった。ふいに思いたち私は、回りながら窓のほうに行き、カーテンを開けるか閉めるかし、盛大に息を吸って吐いて、吸って吐いて、吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐いて吸って吐く。生きてると、忙しいことばかり。

 私は外を見る。



 何年か振りに見た世界。世界は夜だった、ガラス越しに見えた綺麗な夜だ。なぜかしら? 人影が見えないからだ、ふるえる指がある。

 ガラスがここら辺にあるのだよと、私は私に教える。あるのよ、ガラスは。これがガラスでこれは私。

 今は夜で、暗い世界。

 いまは冬よ。

 なんにもないわね、その代わりに見せてやるわねといわんばかりに照明のついた私のお部屋が、窓には映っている。狭い室内の様子が。なんでここにあるのかよく分からないタイプのガラスに。そしてそこにいる私。私は、ひどい様子をしていた。ボサボサの髪と血走った目。

 私は探す。



「アイ・ニーヂュウ・ソー」

 そして、それが窓に映っているのを見つけた時の、私の気持ち。なんてこと、なんだってこんなに小さいのだ。なんて小ささ、小さい私の小さな気持ち。私の本当。本当の私の。小さな。

 目が回る。

 すると私の床の上の私は考えがまとまらないままに、じぶんを畳むことさえできないから私は尻餅をついた、これがつまり私の本当だった。弱さ。小ささ。この、小さな、夜の片隅にあった、私のこと。

 世界のどこかで誰かが、笑い声を上げ始めたようだった。

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