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ぼうけんの書
〈序〉
彼はとかげが苦手だと僕にいった。彼は、じぶんの心の、暗い部分を切り取りそれが自律行動を取るようになったとするならこういうふうだろうと、昔からそう考えて見てきた。
でも実際のところは違うのだそうだ。
彼女たちの意見では、それは全くの正反対ということだ。
それは彼の善なるものだった。
「彼が嫌いなとかげ、あれは彼の心の最良のところを可視化したらこうなるもの、とわたしたちがずっと思って納得していたものだった。彼の、わずかばかりある素晴らしい部分、それが動き出したとしたらこんなだろうと。サイズ感もぴたりと一致だし、あとそれに、フェンスのところでチョロチョロチョロチョロしてるとこと」
〈結〉
この世にはバックミラーを所有する資格がない男が大勢いる。




