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崖までの道を一緒に歩いてこっか
「きみはきみに何をあげられるの」
「不合理を。あと雪見だいふくに属するものも今日はあげられそうな予感がある」
「きみはきみ自身にあげられると思うものの中で何がいちばんいけてるの」
「おれはおれにあげれてたと思うものの中で、いいものだと思えるようなもんは何一つなかったというよ。その理由はいいたくないんだともおれはいう」
「はしたないね。そしてきみはきみ自身にあげられるものの中でいいものが何もなかったという、そのいいづらい理由はいいたくないという。でもきみはそれを声に出していってちゃんと」
「おれはおれにあげられると思ういくつかのものの中で、いいものなんて何もないと感じている、おれは明確にそれを感じていて、おれは信じている。きっと徒労に終わることになる。ここももうすぐ終わりになると思う、もう二人には吹かない風のこと。その匂いをかいで、おれを忘れないようにしようと考えたことも忘れるのなら。キミはその匂いを感じていてほしいとおれはここでいうよ」




