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マイク






 笑い死にした息子のことを忘れられないまま暮らす男がいたが、また彼が笑顔を見せることが増えてくる。

 それを許せない少年少女たちがいた。



 朝と夕、駅前ひろばに集まったメンバーで、見事な連携で男の一日の動向を調査することを彼らはけっして止めようとしない。



 高学年から中学へと上がるまでのこの時期、メンバーのなかで、誰にどんな言葉をもらおうともこれを止めようだなんて思ったことのある者はいなかった。

 なぜなら少年の声が、いつも尾行中の少女たちの耳元ではささやいているから。

 なぜなら少年の声を装う少年の声は、いつも斜め後ろから少年たちにささやくから。






 全員が、待つことにしたのだ、偶然が訪れるのを待つことにした。そして偶然を待つことはいつだって結局、実感をなくすことでもあった、見失いたくない感じはあまり大きくない、水溜まりはあった。



「息を、やつから僕は学ぶ」

「息を、しっかりとわたしはしなくちゃならない」

 彼が最初で最後の人、という、それは吐き方だった。

 今はただ息をするだけ、という、それは吸い方だった。



 今も昔も、ささやくだけなのが怪物。

 少年の声は、いつも斜め後ろから少年たちにささやく。

「いろんなことが下手くそなおれたちは、おれたちまで下手くそなんだ」






 死んだ男の子の声を追いかけている、この時間が存在する限りは、撫でて、というだけの仕組み、声に出していった瞬間からちゃらにもうなるような仕組みが以前はあって、それがかつてはあった、ということを、撫でている今だった。











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