表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/618

非常用






 あたしは兄の非常食になりたい、何度でも。行ける気もする、地球にはまだまだつよいやつがいっぱいいるもんね、ガンガン新しい扉が開いていくよ、みんなガンガンやってる。少年ガンガンやってる。ガンガンやって、ガンガン進んで。



「ごっそさん」



 我に返った。

 あたしは無意味に兄の退席に頭を下げる。近くを通り過ぎていくとき、軽く髪を手の甲で触れられて、でも返せない、こちら側にある何もかも、兄が向けてくる兄お得意の整理整頓されすぎてる親密さに合うようなものが、だってひとつとしてないのだし、あたしのこれもどこかに行ってしまうということは、可能性として考えられないのだった。

 けっきょく、あたしは兄以外の誰かの非常食になるしかない。それは初めから決まっていたこと。







 あたしはあたしを指差し、何度もじぶんを指差し、非常食はここ、ここで、あたしが非常食、ここで非常食、そうやって、兄に見られるのを期待しじぶんを指差すことを何と呼ぶのだろう。

 ここだと叫ぶことが適切でないのはあたしもわかってた。



 あたしの美しい兄。美しい人。

 その非常食にあたしはなりたかった、でもあたしは醜いから、ただ通路として、ここに存在し続けているしかない。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ