表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/618

驢馬






 子ども時代の思い出の場所をいちいち再訪したりする人はいない。それらの場所を全て、今のじぶんの目で確かめるために、数日の休暇を申請してまでわざわざ足を運ぶといったような真似をする人はいない。

 そうするまでもないからだ。

 じつに多くの人々が、頭の中ではもうそれを随分やっている。



 今彼は、一組の家族の、その後ろを尾いていく。

 彼は思う存分、電柱に身を隠したりもしつつ、その幸福な家族の絵を眺め続ける。



 彼は、父親の着る服の色の好みであったり、母親のリップの好みであったり、妹ののちの変化の予兆であったりと、様々なことをその絵の中に見つけていく。

 一枚の絵としては完璧な一枚である。



 ただし、と今や青年になった彼もそれを何度めかに思ったし、他の三人の、夕陽が眩しかったあの日の無言の眼差しもそれとまったく同じことを語っている点を、彼はみとめる。

 ただし、お前がいなければの話だが。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ