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信号
少年がどれだけ速く歩いても、彼の嫌っている人たちが変わることはなかった。少年がどれだけ遅く歩いても色の変わらない信号もいくつか。少年が嫌悪感を抱いている唇が変わることは万一にもなくて、だから、いつも素晴らしく充実した練習時間だった。この場所は地獄だ。
少年が顔を背けたあとになって始まる話題は無数に、少年が場を去ったあとにしかできない面白いことがいくつか。
目に入るもの全てが敵だ。
このごろの少年はむしろ、笑顔を増やしていっている、ただし終始無言で。それの意味するところは、「ぶつかることは避けられないこの場所を、どうか愛したりしないで」。




