表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
昔話:痛ましい思い出
74/91

68.重さ

「それで? クーガをどうした?」

 ウルスラの問いかけに、スバルは憮然となった。

「土に埋めてやった。フィンがうるさかったぜ」

「そうか……」

 ウルスラはうつむき加減になった。その瞳から一筋の光が見えた。涙をこぼさなように堪えているのだろう。しかし、悲しみを隠せないでいる。

 唇をギュッと噛み、胸の前で何度も十字を切る。その様子を、ウルスラの仲間たちは言葉なく見つめていた。

 しばらくすると、ウルスラは深い溜め息を吐く。そして天を仰いだ。天井は暗く、当然のことながら何も語らない。

「スバル、初めておまえを憎いと思った。あれほどの人が死んだのに、ロクに反応を示さないとはな」

 呟きは力なく響く。

 スバルは感情を乱す事なく答える。

「クーガは仇だったし、国王軍が恐れる大敵だ。人格者かもしれないが、見逃す事はできなかった」

「約束は果たしたか?」

「ギルバート王子に報告する事か? 戦闘以外の報告は謁見行為だ。やるわけねぇだろ」

 ウルスラは頷いた。

「そうだな。だが、もうおまえは国王軍から離反しただろ?」

「……まあな。エイベルが、もっといえば国王が俺たちを裏切ったんだ。忠誠を誓う理由がない。だが、勘違いはするな。あんたの味方をするつもりはないぜ」

「分かっている」

 ウルスラは一つの長剣を手に取る。柄に透明な宝石がはめこまれている。クーガが使っていた癒しの剣だ。淡い光を放っている。

「これは、おまえが使って欲しい。クーガの重みを背負ってくれ」

「ウルスラさん、あなたが使ってくれ!」

 それまで黙っていたアレクが堰を切ったようにまくし立てる。

「クーガ様はきっと、あなたに使って欲しいと望んでいる。騙されていたとはいえ、呪われし血族に忠誠を誓い、罪のない人を殺した人間に癒しの剣を手にしてほしくない!」

「……気持ちは分かる。だが、スバルはずっと仲間のために戦ってきた。理解しがたいかもしれないが、癒しの剣を使いこなせるかもしれない」

 ウルスラの口調は落ち着いていた。

「受け取れるか? スバル」

「気持ちわりぃ。なんで仇が愛用していた武器を俺が」

「これで黒剣を受け止めただろ?」

「他に手段が無かったからだ」

 ウルスラは声を大にして笑った。

「他に手段がなかったら受け取るのだな。分かった。それまで私が預かろう」

 癒しの剣を自身の背中に手際よく結わいつける。


「……やはり、重いな」


 ウルスラは寂し気に笑う。クーガの微笑みを幻視しているのだろうか。

 アレクも複雑な表情を浮かべていた。彼もクーガを尊敬していた。両の拳を握り、何度もスバルを睨みつける。しかし、ウルスラを気にしてか、恨み言や罵倒をぶつける事はなかった。意を決したように言葉を放つ。

「スバル、僕は君を許さない。だが、今はウルスラさんのために協力しよう。しっかりと休んでエイベルとの戦いに備えてほしい」

「もともとそのつもりだ。とりあえず、こいつを借りるぜ」

 スバルはあくびをしながら長剣を手に取った。魔力はないが、名匠の代物だ。

 アレクはあきれ顔で溜め息を吐いた。

「緊張感がないな」

「無駄に精神をすり減らすつもりはねぇぜ。さっさと休みたいから案内してくれよ」

 アレクが露骨に舌打ちするが、スバルは気に留める様子はなかった。ようやく一休みできる、と思っていた。

 しかし、事態はスバルの都合のいいようにはいかない。

 轟音が鳴る。衝撃で床が揺れた。何か巨大なものがぶつかったのだろう。

 慌しい足音が聞こえてくる。警告を告げる鐘がけたたましく響き渡る。

 足音は案の定、スバルたちのいる武器庫の前で止まった。足音の主は血相を変えて、事態を告げる。

「エイベル来襲! 出陣を!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ