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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
昔話:痛ましい思い出
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64.男たちの言い分

 男たちが得物を振り上げると、村人は悲鳴をあげた。涙ながらに懇願する。

「お、お許しください。もう少しで用意しますから」

「待てるか! てめぇを切り刻む!」

 男たちは理性のない獣のように声を張り上げ、村人に詰め寄った。

 その様子を見て、スバルは溜め息を吐いた。


「やめろ、見苦しいぜ」


 複数の血走った目が、スバルに集中する。しかし、スバルは動じなかった。

 よくよく見ると、男たちの得物は刃先がボロボロで使い物にならない。男たちの服装もみずぼらしく、哀れになる。

「食べ物が欲しいだけなら普通に頼めばいいだろ。何の見返りなく奪おうとか虫が良すぎるぜ」

「てめぇ、生意気な口を……! やっちまえ!」

 スバルの正論が腹に据え兼ねたのか、男たちが牙をむく。それぞれの得物を一斉に振り下ろした。

 しかし、そのいずれも虚しく空を切るだけ。男たちは目標を見失い、辺りを見渡す。


「自分の力量も分からないのか」


 声に気づいた時には対応が間に合わず、男たちは次々と昏倒していく。スバルとしては何の工夫もなく殴ったり蹴ったりしただけだが、村人にはひとりでに男たちが倒れていくように見えた。

「すごい……まるで魔法だ。あんたは魔導師か!?」

「ちげぇよ」

 村人の言葉をあっさり否定すると、スバルは男たちのうち、一人の胸ぐらを掴んだ。一番しゃべっていた男だ。おそらく村を襲った首謀者だろう。

「てめぇの仲間はこれだけか?」

「あ、ああ……そうだ」

 男の目線は泳いでいた。スバルは愉快そうに両目を細め、口の端をあげた。

「なんだつまんねぇ。もっといたぶり甲斐のある奴がいると思ったが」

「は、はは……残念だったな」

「全くだ。数人で村一つ襲った割には、大した目的もなかったらしいな。もっと楽しめると思ったが、仕方ねぇ。憂さ晴らしに付き合ってもらうぜ」


 男が困惑の表情を浮かべる。


「えっと……あんた、正義の味方とかじゃないのか? 小さな子供も見ているのに、いいのか?」

 男の視線の先には、フィンがいた。フィンが大声を出してる。

「ダメだよお兄ちゃん! 優しくしてあげなきゃ」

 誰がお兄ちゃんだ。

 内心で呟きながら、スバルは男の首を掴む。

「楽しみにしていた分だけ、痛い思いしてもらうぜ」

「ひぃ……!」

 首謀者が悲鳴をあげると、他の男が起き上がった。

「許してくれ、俺たちはただ食べ物に困っただけなんだ。食べ物を持って帰らないと、女や子供が餓死するんだ」

 首謀者を脅したのは他に仲間がいないか、自白を迫るためのものだったが、結果的に成功したと言える。

 スバルは男の言い分に驚いたが、表情には出さないようにした。侮られたり、付け入る隙を与えてはいけない。

「てめぇらの空腹には同情するが、この村が飢えていい理由はねぇぜ」

 スバルは貧民街で暮らした経験がある。空腹の辛さは知っている。自分も盗みを働いた事は何度もあった。

 しかし、今は罪のない人間を守らなければならない。時に冷酷な決断をくださなければならない。


 そんな時に、能天気な人物が帰ってきた。


「よぉ! うまそうなイノシシを捕まえたぜ。みんなで食おう!」

 クーガであった。大きなイノシシ肉を背中に担いでいた。

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