61.クーガとの出会い
当時のスバルの任務は、反乱兵が逃げ込んだ村の調査及び反乱兵の抹殺であった。クーガの始末を任されていた。
スバルとしてはさっさと見つけだすつもりでいた。しかし、クーガは非常に巧みに逃げていた。人望もあり、かくまってもらえる。逃げ道の確保が容易だった。
王族直下特殊部隊の隊長は、力づくではクーガを倒せない事が分かっていた。そのため、あまりにも非常識な手段を用いる。
王族直下特殊部隊になったばかりのスバルをタコ殴りにして、クーガが逃げ込んだはずの村の近くに捨てたのだ。スバルにとっても予想外だった。隊長の憂さ晴らしに使われたとさえ思った。
村人たちは、幼さの残る顔立ちの少年を放っておけなかった。大怪我をしている少年は、息も絶え絶えに村へと連れて行かれる。
そこで、とある男と出会う。茶色い髪と黒い肌が印象的な、筋肉質の男だった。
「大丈夫か?」
「……見りゃ分かるだろ」
「思ったよりも元気だな」
男は笑った。
「大怪我をしたようだが、命に別状はない。大したものだ」
「……皮肉にしか聞こえねぇ」
「へらず口が叩けるなら大丈夫だ。少し痛くなるが、我慢しろよ」
スバルは男の背中に担がれる。急に運び上げられて、痛みが全身をめぐる。
「もっと丁寧に扱えよ。こっちは怪我人だぜ!」
「心配いらない、死にはしない」
男は豪快に笑いながら、村の隅にある家に入る。
「フィン、お客さんだ。大怪我をしている」
「大怪我!? 大変だ!」
家の奥から、包帯を持った男の子が現れた。スバルの身長の半分くらいしかない、幼い子だ。
男はスバルを降ろすと、包帯を手にとった。
「脱げるか?」
「包帯くらい自分で巻ける」
「露骨に警戒しなくてもいいだろ。男同士だ」
「知らない人間を信用しないのは当然だと思うぜ」
男は頷いた。
「そりゃそうだ。名乗り忘れてたな。俺はクーガ。事情があって住処を転々としている」
「クーガ!?」
スバルの声は裏返っていた。こんな形で出会うとは思っていなかった。
クーガは笑っていた。
「そんなに驚くかよ。こっちが恥ずかしくなる」
「……本当に、あのクーガか? 反乱を企てているという……」
「ちょっと違うな。本当にやりたいのは反乱じゃない。単に国王軍に逆らうんじゃなくて、みんなのために何かしたいと思っている」
スバルは首を傾げた。
「何かってなんだ」
「具体的には決めていないが、そうだな。例えば人助けだ。今みたいに、大怪我をしている見知らぬ少年を助けるとか」
「……警戒した方がいいぜ。助けた人間が反乱兵だったら、村ごと焼かれる。反乱兵と知らなかったとしてもな」
クーガは両目を見開いた。
「怖すぎる!」
「それとクーガ、国王軍に逆らうつもりならやめておけ。反乱兵をかくまったとして、この村が焼かれるだろうから」
「乱暴だな!? まあ、遠い未来の話は置いといて、今はおまえの怪我が心配だ。さっさと包帯を巻け」
スバルは舌打ちをして、包帯を受け取る。親切に忠告しているつもりだったのに、無下にされたと思ったからだ。




