表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
馬上の騎士たち
52/91

51.騎士との決着

 村人が歓声を上げる。スバルには受け入れがたいが、ウルスラは人気者のようだ。

 クロードが声をあげて笑った。

「やっぱりスバルはお姉さんと内通していたんだね! 確かに聞いたよ、君を助けるって」

「知るか! こいつが勝手に言っている事だ。反乱軍のリーダーなんだから、こいつ倒そうぜ」

 スバルに指差され、ウルスラは優しい瞳で微笑んだ。

「反抗期か。成長したな」

「てめぇは俺を窮地に立たせたいのか!」

 スバルが飢えた獣のように殺意をむき出しにするが、ウルスラは平然と受け流していた。

 クロードは口の端を上げて馬を駆けさせる。スバルを葬る絶好の機会が与えられている。ウルスラは不意をついたにも関わらず、クロードに傷ひとつ負わせられなかった。まともにやりあえば勝負は明白だ。加えて、彼の仲間が一人いる。村人の相手をしているが、すぐにかたを付けるだろう。

 クロードの槍はスバルの心臓目掛けて突き出される。スバルは身体をひねり、最小限の動きでかわすが、反撃ができない。ウルスラが双剣を振るうが、クロードの槍に弾かれる。武器を扱う技量が違いすぎる。

 ウルスラは額に汗を流す。


「思っていた以上に手強いな。私では勝てない」


 ウルスラはスバルを見遣る。立っているのがやっとの弟だが、目は死んでいない。

 クロードが再び馬を突進させる。

 同時に、ウルスラはスバルへと片方の剣を投げつけた。そっと投げてやるつもりだったが、剣は勢いよく回転する。

 スバルは何を投げ飛ばされたのか瞬時に理解した。

「殺す気か!」

 怒号を飛ばしながら剣の柄を握り、クロードの槍を受け止める。スバルが剣を持った瞬間に、クロードが攻撃してきたのだ。ウルスラの剣を叩き落としていたら、その間に串刺しにされていただろう。

 ウルスラは深々と頷いた。

「素晴らしい判断だ」

「ぜってぇ殺してやる! クロード、邪魔するなら容赦しねぇぜ」

 クロードは鼻で笑った。

「今の君に何ができる」

 再び槍を突き出す。切っ先はスバルの頭を貫く、はずだった。しかし、スバルは薄ら笑いを浮かべている。


 その光景に青ざめたのはクロードの方だった。


 事態を理解するのに、わずかであるが時間を要した。槍の切っ先が地面へと転がっている。

「そんな……」

 クロードは切っ先を失い、銀の棒と化したものを一瞬だが見つめてしまう。その隙は、ウルスラにとって充分すぎるものだった。ウルスラは馬の足を浅く斬る。

 馬がバランスを崩した所で、今度はスバルがクロードの腕をつかんで、地面へと叩きつけた。クロードは受け身が取れず、うずくまる。スバルの容赦無い蹴りを腹に受け、そのまま気を失った。

 村人を相手にしていた騎士は、大慌てで逃げていく。勝てないと踏んで、報告に帰ったのだろう。

 スバルは、クロードの槍を切り裂いた剣を握り直す。暗い声で笑っている。ウルスラの剣を持っているのは癪だが、ウルスラを血祭りにあげられると思うと笑いが止まらない。


「さぁて……」


 満身創痍だが、その気迫は見るものを圧倒する。ウルスラは少しずつ後ずさりしていた。

 スバルはゆっくりと距離を詰める。血が足りないため、最小限の動きでウルスラを仕留めるつもりだ。

 ウルスラが足を止める。覚悟ができたらしい。

 スバルは標的を見定めて、剣を構える。一呼吸置いて駆け出した。

 

 しかし、その勢いは思わぬ形で止められる。

 

 透明な硬い壁が突然出現していたのだ。スバルは無防備にぶつかって、反動で地面へと転がった。

 起き上がろうとした時に、押さえつけられる。ガタイのいい男と、ひょろ長の男がそれぞれ腹と両足に乗っかっていた。ウルスラの仲間たちだ。


「弟様、申し訳ありません」


 腹に乗っている男がスバルの顔に透明な液体を掛ける。

 いきなり浴びせられて、スバルはむせる。あらん限りの力で暴れる。しかし、強力な薬を盛られたのだろう。どんどん力が抜けていく。意識がもうろうとしてくる。ついには全身が動かなくなった。

 意識が遠のく中で、ウルスラたちの会話が耳に入る。

「よかった。殺さずにすみそうだ」

「しかし、目を覚ました時にどうなるか……弟様は恐ろしい男です。騎士に苦戦した後でなければ、俺たちが瞬殺されていたでしょう」

「分かっている。だが、まだ諦めるつもりはない」

 スバルの顔をウルスラが布で拭く。

 俺に触るな!

 スバルは叫びたかったが、口が動かなかった。

 ウルスラの優しい声が耳に入る。

「この子は騙されているだけだ。きっといつか分かってくれる」

 騙されている? 俺が? 誰に?

 疑問は付きないが、スバルの思考は働かない。間もなく意識を手放した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ