表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
馬上の騎士たち
49/91

48.危険

 騎士の馬が大地を蹴りながら、猛然と迫ってくる。軍馬の突撃は、どれほど屈強な戦士でも命を奪われるだろう。スバルも決して小柄ではないが、所詮は人間だ。馬とぶつかってタダですむはずはない。


「てめぇ……!」


 すんでの所でかわして、スバルはクロードを睨みつける。強気な瞳とは裏腹に、背中には悪寒が走っていた。

 異様なまでの歓喜と共に殺しにかかってくる輩は、あまり経験がない。殺意があるのは間違いないのに、殺気がないのだ。虫をいたぶり殺す子供のような、無邪気な残酷さがある。

 クロードの馬は通り過ぎた。地面から伝わる振動は、まだ命の危険が回避されていないと告げている。すぐに戻ってきて、スバルを仕留めにかかるだろう。


 だが、危険なのはクロードだけではない。


 馬上の騎士は、クロードを含めて五人いる。彼らが黙ってただずんでいるはずはなかった。

 四騎は二手に分かれる。二騎はシュネーに向かい、二騎はスバルの両側から銀の槍を突いてくる。

 スバルは小鎌で応戦するしかない。村人から渡された、唯一の武器だ。しかし、使い古された農業用の小道具で、磨きぬかれた銀の槍を受け止めるのは心細い。勘と体術でかわしていく。二騎の攻撃をかわしている間に、クロードの馬が戻ってきて、スバルの背中へと槍が伸びる。


 心臓を狙った一撃だった。


「くっ……!」

 スバルは左肩を押さえて地面を転がる。心臓は避けたが、かわしきれなかった。左肩から血がにじむ。しかし、激痛にうずくまる暇はない。

 騎士達は容赦がない。スバルが死ぬまで、槍を突き続けるだろう。

 五人の騎士に遊ばれ、虫の息となっている狼男が、横目に入る。騎士の猛攻を可能な限り回避して、倒す手段を考えるしかない。

 ふと、シュネーの悲鳴が聞こえる。彼女は騎士の一人に抱えられていた。

 騎士がそのまま走り去ろうとしていた所を、大勢の村人が命がけでせき止めていた。しかし、相手は馬だ。ほとんどの村人が、数秒もたたないうちに蹴散らされる。

 そんな中で、立ち上がる老人がいた。


「元王族直下特殊部隊の人間として、見過ごせないのぉ」


 シュネーと共に家に上がらせてくれた老人だった。鍬を握ってただならぬ気配を放っている。

 シュネーを抱える騎士が声を上げる。

「ディーザ王子の部下だったジジイだ。どうすればいい、クロード!」

「退治しちゃいなよ。エイベル様を通じて言いくるめておくから」

 クロードは嬉々として答えていた。

 老人は両目を丸くした。

「あのような子供を傀儡にする気か!」

「エイベル様は僕を信用しているからね。僕が君たちを反乱軍の一味だと言えばいい。エイベル様が君たちを反乱軍と言えば誰も疑わないよ。ナトュール国をほぼ一人で滅ぼした実績もあるから、怖くて誰も逆らえない」

「ならぬ! せめてシュネー王女は返してもらうぞ」

 老人はシュネーを抱える騎士へと、鍬を振り上げていた。しかし、馬に乗っている相手には、効果が薄い。銀の槍で簡単にいなされてしまう。もう一騎の槍もある。シュネーを取り戻すのは至難の業だ。

 スバルも三騎の槍をかわすので精一杯だ。状況は最悪だ。


 だが、ここで音を上げるわけにはいかない。仲間の無念を晴らすために、スバルは生きている。むざむざと殺されるわけにはいかない。


 そのためには、多少の犠牲もやむを得ないのかもしれない。

 スバルは駆け出した。三騎は当然のごとく追いかけてくる。

 そのうちの一騎は声をあげて笑っていた。

「逃げ切れると思うのか!」

 馬がいななき、加速される。スバルは小鎌を先頭の一騎へと投げつける。

 騎士は苦もなく払う。ほんの一瞬だが、小鎌へ注意を向けていればたやすい事だ。

 だが、スバルにはその一瞬で充分だった。スバルはあるものを蹴りとばしていた。

 次の瞬間、先頭の馬は前足をとられ、勢いあまって派手に倒れた。馬の足元には狼男が倒れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ