47.後始末
「ちげぇよ。なんで俺がシュネー王女を助ける?」
スバルは苦い想いで返答した。王城の大広間で猿芝居をした記憶が蘇る。
敵国の王女であるシュネーをかばったと疑われ、国王を前に大嘘をついたのだ。その場でシュネーと共に殺されるのは免れたが、怪しまれてしまったのだろう。
ギルバートにも、顔に嘘だと書いてあったと指摘された。
根が正直なのが災いしている。
クロードは、スバルの表情の変化を見逃さなかった。
「お人よしの君の事だ。同情したんだろ?」
クロードの指摘に、スバルは眉を寄せた。
「誰がお人よしだ。だいたい、同情で命かけるかよ!」
「じゃあ、変な仲間意識が芽生えたのかな。違うと言うのなら、彼女の首をここに持ってきてよ。簡単だろ?」
村人がざわつく。互いに顔を見合わせて、囁いている。
まさかあの女の子……。
黙ってろ! 殺されるぞ。
村人の反応は、クロードを確信させるには充分だった。
「シュネーはここにいる。スバル、君が村と共謀して隠している」
「……なんで俺がこんな村と」
「シュネーを大人しく差し出せば何もしないつもりだったけど、彼女の首を持ってこれないんだね? 残念だぁ、僕はこの村を滅ぼさなければならない」
クロードがわざとらしく溜め息を吐く。その目は笑っていた。
村人が悲鳴を上げる。
「なんで!?」
「儂らが何を……?」
クロードは口の端を上げた。
「そもそも、獣ふぜいがシュネーを逃がさなければ良かったんだ。獣ふぜいの罪は重い。そんな彼を排出した故郷も同罪だ」
馬上の騎士は銀の槍を握りなおす。他の騎士達も狼をつつくのをやめて、村人たちと向き直っていた。彼らの闘志に反応するように、馬がいななきをあげる。
そんな時に、馬上の騎士達の前に躍り出る少女がいた。
「待って! 私はここにいる」
透き通るような声が響き渡る。シュネーだ。白いフードを外し、夕暮れに銀髪と猫耳をさらしていた。
「私はここにいる。大人しくついていくから、村には手を出さないで。村は何も知らない!」
よほど慌てて走ったのだろう。肩で息をしている。しかし、その声はよく通る。
だが、クロードの心には響かない。
「ああ、シュネーとよく似た化け猫だ。高く売れるだろうけど、シュネーじゃない。そうだよね、スバル?」
スバルは苦虫をかみつぶしたような表情になる。
「……シュネー王女がいなくても、村を滅ぼす気だったのかよ。おかしいだろ」
「そうだね、おかしいかもね。じゃあ、君が責任を取ってくれるのかな? シュネーが逃亡した責任を。誰かが後始末をしなくちゃいけないんだ。全ての罪をかぶるのは、君がいいかもね」
クロードはおどけた口調で言っていた。
次の瞬間に、クロードの馬が大地を蹴り、スバルへ突進していた。




