表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
馬上の騎士たち
47/91

46.馬上の騎士

 夕暮れの下でいくつもの影が走る。一つは老人が予想したとおりの狼だった。獰猛な吠え声をあげながら、幾人も食い殺す牙を持つ。実際に彼は追手を何人も血祭りにあげてきた。

 しかし今、狼は逃げていた。その目は恐怖に揺れ、時折振り返り、焦っているように見える。彼の後には銀の槍を握る馬上の騎士達がいた。人数は五人。いずれも二十代後半くらいの男性だ。


 銀の槍は、狼を簡単に葬れる。その槍がいくつも狼を狙って追いかけているのだ。


 狼は隠れる場所のない平原で、本能のままに走っていた。

 彼の行く先には、故郷のレーベン村があった。助けを求めるためでなく、死に場所として選んでいた。

 

 

 レーベン村は臨戦態勢に入っていた。鍬や鎌を持ち、構える。彼らは久しぶりの戦闘に高揚していた。

 足音が近づく。敵が向かってきている。今か今かと待ち構える村人達は頼もしい。

 そんな中で、溜め息をしながら小鎌を見つめる男性がいた。スバルだった。


「俺が戦う必要はあるのか?」


 黒い服を着崩して何度もあくびをする姿は、やる気のなさしか感じられない。

 老人がスバルの背中を叩いた。

「何を言うか。おまえが逃げる方が違和感あるわい。レーベン村のために狼退治じゃ」

「……暇を出されているんだ。ちったぁ休ませろ」

「暇などいらん。若いうちには苦労せい!」

 老人は白い歯を見せてカッカッカッと笑った。スバルの溜め息は止まらなかった。

 狼退治と息巻く村人達は、野生の獣よりもぎらついていた。

 しかし、彼らの予想よりも遥かに恐ろしいもの達が近づいてきていた。銀の槍を持った馬上の騎士達だ。彼らは逃げる狼を代わりばんこに突っついて、あざけり、遊んでいた。

 村人達がどよめきをあげる。狼は彼らの獲物でしかない事に、驚きを隠せないでいる。

 やがて狼は村の入り口で倒れた。血まみれで、虫の息だ。

 狼は消え入りそうな声で呟く。


「僕じゃない……僕じゃないんだ」


 スバルには聞き覚えのある声だった。どこかで見た事がある。

 じっと凝視したためだろう。狼と目があった。

 狼が殺意を剥き出しにして両目を吊り上げた。


「おまえさえ……おまえさえ、いなければ。シュネーを捕まえたのに」


 シュネーを?

 スバルは眉をひそめた。シュネーはゲベート王都で出会った猫耳の少女だ。彼女を守るために、敵国の王女だとは知らずに、狼男と戦った記憶がある。

 馬上の騎士達が、手負いの狼を囲んで、せせら笑う。

「あの男がどうしたんだ? 獣ふぜい」

「シュネーを逃がした面白い言い訳は思いついたか?」

 狼は声を張り上げる。


「あの男が僕を追い払ったんだ。シュネーを逃がしたのはわざとじゃない!」


 騎士達の視線を浴び、スバルは首を横に振る。何も知らないフリを決め込む。真実を知られれば、自分の身が危うい。

 だが、スバルの思惑を外すように、騎士の一人が声を出す。


「スバルじゃないか! こんな所で何をしている?」


 声を出したのは一段と顔の整った銀髪の男性だった。スバルは心臓が飛び出そうになった。彼の名前はクロード。スバルとほぼ同じ時期に王城に出入りするようになった。

 クロードは琥珀色の瞳を細めて、口の端を上げる。


「君がシュネーを逃がしたという噂は本当かい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ