表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
レーベン村
36/91

35.毒見

 丸太小屋に連れてこられた。床は木の板で作られていて、真ん中は四角く掘られている。四角の中は灰が敷き詰められている。何かを温めるのに使いそうだ。

 老人がスバルの右手から手を放し、口を開く。

「ここが儂の家じゃ。ゆっくりしていくがよい」

 老人は笑いながら家の奥に消えた。家の中は程よく温かい。

 スバルはどっかりと腰を降ろした。

「よく分からん村だ」

「みんなが元気でいい村ね」

 シュネーは静かに座った。木と灰の臭いをかぎながら、深呼吸をしている。ほがらかな表情だ。レーベン村を気に入ったらしい。


 スバルは溜め息を吐いた。


「悪気はないんだろうが、ウルスラを庇うなんてな……国王から討伐命令が出るのも時間の問題だぜ」

「でも、スバルはこの村を滅ぼす気はないでしょ。国王軍がきたらよろしくとも言われているし」

 シュネーが期待の眼差しを向けてくる。猫耳は垂れていて、甘えているようにも見えた。とても愛らしい。お願いされれば思わず聞いてしまいそうになるほどだ。

 しかし、スバルは首を横に振った。

「俺はギルバート王子の配下だぜ。村人の頼み事よりも、国王の命令が優先だ」

「つれない事を言うでない。薬膳汁でも飲んで落ち着きなさい」

 老人が口を挟んできた。土鍋を抱えている。土鍋には薬草が大量にしきつめられている。老人は四角く彫られた区画に土鍋を乗せ、火を入れた。

 老人は鼻歌を口ずさみながら、木のおたまで鍋の中をかき回す。鍋の中身はみるみるうちに黒紫色に変わり、異臭を放ちだす。生ゴミを投下したような臭いだった。

 老人は生ゴミ臭のする汁を木の器に入れると、スバルに差し出す。


「毒見を頼む」

「俺に死ねというのか」


 スバルの目が据わる。

 老人は歯を見せて笑った。

「安心せい。蘇生できるように努力する」

「努力の方向を間違えるな! まずはてめぇが飲め」

「なんの! 飲ませるというなら手加減はせぬぞ。老いても軍人。若いもんに負けはせぬ!」

 老人は立ち上がり、両拳を握った。

 スバルは舌打ちした。

「……自分が飲みたくないものを人に飲ませようとするなよ」

「でもスバル、飲んでみて。臭いは酷いけど、美味しい」

 器の汁に、シュネーが口つけていた。満足そうに微笑んでいる。

 老人は薬草汁を器に入れる。ニッと口の端を上げた。


「女の子が飲んだのに、野郎が飲めない理由はないな。身体にいいから、飲んでみろ」


 老人に言われて、スバルは逡巡した。

 シュネーが飲んで無事だから、即効性の毒ではないだろう。しかし、遅効性の毒の可能性は捨てきれない。村人はウルスラを庇っている。スバルがウルスラの命を狙っていると知られていたら、危害を加えてくる恐れがある。

 しかし、シュネーはそんな可能性があるのを考えていないだろう。


 老人から器を受け取ると、スバルへ差し出してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ