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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
レーベン村
35/91

34.理解できない

 日が昇りきらないうちに、レーベン村の朝は始まる。老若男女の村人たちが、時折おしゃべりをしながら畑を耕していた。

 話題は尽きない。この間の旅人は面白かった、かわいかったなど、訪れた人間を話題にする事が多い。

 誤って反乱兵をかくまった時には、国王軍から村を焼かれて苦労したが、彼らは旅人を迎えるのをやめない。訪れる人がいるのは楽しいだからだ。


 そんな彼らに朗報が入る。誰か来たぞ! 女の子と若い男だ!


 村の若者は蜘蛛の子を散らすように各々の家へ逃げていった。若者は国王軍に見つかれば捕まる可能性が高い。捕まれば家畜のように扱われるという噂だ。相手が誰でも警戒するのは当然だ。

 一方で老人たちは穏やかな表情で訪問者を迎えようとする。訪問者が楽しみなのはもちろんだが、レーベン村には老人しかいないと印象付ける狙いもある。

 村の若者を守る意図がある。

 ところが、今回は事情が違った。訪れた女の子と男の様子がおかしい。女の子は涙目で、男は怪我をしている。

 村人が声を掛ける。


「ネーとスバル、どうした!? 何があった」


 ネーとは、シュネーの偽名だ。王女の身分を隠すために使っている。

 シュネーはしゃくりあげた。


「争いを止められないのが悔しくて……私のせいでスバルが怪我をしたし……」


 シュネーの表情は暗かった。

 老人たちはシュネーを囲むように寄り集まる。若い女の子が泣きそうになると、心配になるのだろう。

 老人たちはシュネーを励ます。あんたは悪くない、自分を責めるな。

 そんな中で、一人だけ周りと雰囲気の違う男がいる。スバルだ。険悪な態度で舌打ちをした。


「ウルスラを殺せば争いは止まるのに。邪魔しやがって」


 スバルにとって、ウルスラは真っ先に倒すべき女だ。反乱軍の旗頭で、生かしておくと脅威だ。国王軍の戦士が大量に殺される危険がある。早急に怪我から復帰して、打つ手を考えなければならない。


 しかし、レーベン村では同意を得られなかった。


 老人たちが口々に反論をする。

「ウルスラちゃんを殺すな!」

「小悪魔的な美女に振り回されるのは男のロマンじゃろ!?」

 スバルは困惑した。

「おまえら、なんであの女を庇うんだ」

「ウルスラちゃんはミステリアスな美人じゃ。畑仕事を手伝ってくれた恩もある。儂らはあの子が好きじゃ。反乱軍にいようと国王軍にいようと関係ない!」

 老人は拳を振って熱弁した。村人は拍手をして讃えた。ウルスラは人気者のようだ。

 スバルは呆れ顔で溜め息を吐いた。

「反乱軍を庇うマネをしたら、そのうち村が滅ぼされるぜ」

「既に滅んだから大丈夫じゃ」

 スバルの言葉を、老人は笑って切り返した。健康的な歯を見せて胸を張っている。

 老人はスバルの右手を掴む。スバルが痛みのあまり小さな悲鳴をあげるが、お構いなしだ。

「もしも国王軍が攻めてきたら頼むぞ。そのためにしばらく休むが良い。怪我も治さなければな」

 老人は強引にスバルを引っ張り、カッカッカッと笑いながら家へと連れていった。

 スバルにはこの村の住民が理解できない。しかし、心に誓った事がある。

 

 この村は苦手だ。ここに来るのは今回が最後だ。

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