24.荒野の戦い
一太刀を、スバルは長剣で難なく受け止めた。首筋を狙われていたが、直線的な軌道で読みやすかった。スバルにとってはあまりにも分かりやすい。
問題は次である。
ウルスラは双剣使いだ。
当然のことながら、長剣で一太刀を防いでいる瞬間にもう一撃がくる。スバルは最初の刃をいなし、もう一撃を後ろに跳んでかわす。致命傷を避けたとしても、ダメージの蓄積があれば動きが鈍くなる。
無駄なダメージは命取りだ。
ウルスラが追撃を掛けてくる。急激に間合いを詰めるのは、長身かつ長剣使いのスバルが攻撃しやすい範囲を外すため。スバルは逃げるために後ろに避けたのではなかった。
避けてばかりいては勝てない。しかし、下手に仕掛ければ身体の一部をもっていかれる。最悪の場合は首が飛ぶだろう。仕掛ける時には確実に仕留める。ウルスラの剣技を見切るのは簡単ではないと分かりきっているが、スバルには自信があった。
リーチと、戦闘や人殺しの経験に分がある。
スバルはゲベート王都の貧民街で育った後は、軍人の中でも過酷と言われる特殊部隊として戦場に出ている。その功績が認められてギルバート配下の王族直下特殊部隊として任務を与えられている。腕前はもちろん、戦闘における駆け引きは並々ならない。
若さゆえに侮られやすい状況でも、相手を圧倒する力がある。
もっとも、双剣の魔女ウルスラを相手に圧倒できるとは考えていないが。
国王軍にとって、ウルスラの冷血さは身の毛がよだつ。
戦闘慣れした屈強な男が何人も双剣の餌食となった。苦悶の表情で絶命した男も多い。死の恐怖を味わって抵抗しても、助からなかったのだろう。
そういった男達の無念をスバルは背負っていた。
ウルスラの刃を受け止め、あるいはいなし、わざと隙を見せるマネをしては反撃をする。同じような条件なら、スバルは自分の方が体力が持つのを知っている。短期決戦にならなかった時点で、スバルは優位に立つ。
ウルスラの顔が青くなる。しかし、その目は死んでいない。勝負を諦めてはいない。
スバルは身体中に熱が駆け巡るのを感じた。ウルスラは強い。簡単には勝てない。
だから自分の手で殺したい。仲間の仇を討てるのは自分だけだ。
双剣が同時に襲い掛かる。間合いは詰められている。後ろに下がるのは間に合わない。しかし、剣速は明らかに鈍っていた。
仕掛けるなら今だ。
スバルはウルスラに体当たりをかました。不意をつかれたのだろう。ウルスラはあっけなく後ろに倒れ、地面に頭を打つ。
スバルは歓喜の声をあげてウルスラに斬りかかる。
「もらった!」
ウルスラの胸に長剣が突き刺さる。心臓は外したが、致命傷だろう。ウルスラが血を吐いた。
スバルは長剣を引き抜き、今度こそ息の根を止めようと振り下ろす。
しかし、ウルスラは抵抗した。片手で砂を掴み、スバルへと投げつける。
スバルは砂を吸い込み、咳き込みながら長剣を振るった。そこにウルスラの姿はなく、乾いた地面を削ったのみ。
ウルスラは胸を押さえて、片膝をついていた。スバルの剣をくらう前に、地面を転がり、一瞬で起き上がったのだ。
だが、ダメージは尋常じゃない。
ウルスラは血を吐いていた。




