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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
荒野の戦闘
24/91

23.はじめよう

 村からいくらか離れた所に荒野がある。草も木も生えていない。固い大地が広がる。

 ウルスラが足を止めて、両手を広げる。深く息を吸い、気持ちよさそうに吐き出した。


「相変わらず、いい空気だ。決戦にふさわしい」


 集団も足を止めて頷いた。

 フローラ以外が頭上に武器を掲げて、雄叫びをあげる。彼らにとって、王族直下の特殊部隊は数多くの仲間を殺してきた宿敵だ。スバルもその一人である。血が煮えたぎっているだろう。

 目の前の敵を殺したくてしょうがない、という意味ではスバルも同じような想いだ。反乱軍はピンからキリまでいるが、ウルスラ達はスバルの仲間を何人も殺してきた。見過ごす事のできない強敵たちである。


 スバルは口の端を上げた。


「さっさと始めようぜ。寒くなる」

 ウルスラは笑って応じた。

「冷えは美容の大敵だからな。決着は早めにつけよう。そこで、提案がある。私とスバルで一対一で戦わないか?」

 この提案に、スバルは眉をひそめた。

 ウルスラの仲間たちも非難の声をあげる。

「スバルは俺の手で討ちます!」

「ウルスラ様、どうか落ち着いてください」

 殺気立つ仲間たちとは対照的に、ウルスラは穏やかなに口を開く。

「今のおまえ達では、この男の相手は務まらない。無駄に命を落としてほしくはない。それに、一対一の決闘にしておけば万が一に私が負けても再起を計れる」

「そんな都合のいい条件を俺が呑むと思うか?」

 スバルは鼻で笑った。彼の標的はウルスラだけではない。反乱軍の掃討こそ、王族直下特殊部隊に与えられた最重要の任務だ。そのためならどんな犠牲を払ってもいいとされている。村に逃げ込んだ反乱兵を、村ごと焼き払う権限さえある。


 ゲベート国にとって反乱軍の殲滅はそれほど重要な課題なのだ。


 ウルスラは溜め息を吐いて、首を横に振る。しかし、微笑みを浮かべている。交渉を諦めたわけではないようだ。

「おまえにとって、これ以上の好条件はないというのに。考えてみてほしい。いくら強いと言っても、六人を相手にするのは無茶だ。私一人と戦う事で決着をつけられるのなら、それに越したことはないだろう」

 スバルはにんまりと口の端を上げた。


「あんたに勝てば他の奴ら全員が死ぬなら考えてもいいぜ」

「分かった。そうしよう。私が負けたらここで自害するように命令する」


 ウルスラの返事は早かった。スバルはもちろん、ウルスラの仲間たちも呆気にとられていた。

 ウルスラは話を続ける。

「その時はおまえも相応のものを賭けてもらう。私は仲間たちの命を賭ける。おまえ一人の命では足りない」

「……俺が負けたら、仲間に死ねと言うのか」

 スバルはシュネーに視線を移す。シュネーは猫耳も含めて、全身を震わせていた。

 だが、ウルスラは笑った。


「私はおまえの仲間の命は欲しくない。おまえが二度と戦場に現れない事が望みだ」

「なるほどな……」


 スバルは顎に手と当てて考え始めた。

 スバルが戦場に出なければ、国王側の部隊にとって損失だ。

 しかし、戦争は武器を使う以外に役割はある。ウルスラ達の命を奪えるチャンスだと考えれば安いリスクだ。


「いいぜ」


 スバルは口の端を上げた。

 ウルスラも頷いた。

「交渉は成立だな。では、早速はじめよう」

 松明の灯りは闇にゆらめく。

 集団は、二人を囲うように陣取る。全員が足を止めた時に、ウルスラが双剣を抜いて地を蹴った。

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