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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
遠い記憶・双剣の魔女
23/91

22.どこまでも広がる闇

 ウルスラは悲しそうな瞳で微笑んだ。

「そうか。あの子がここにいるのか」

「いる。でも、あなたを殺すと言っていた。だから帰って」

 シュネーの声はよく通る。凛とした瞳は月影に輝き、猫耳をあらわにした銀髪が風になびく。小柄で華奢な身体からは信じられないような威光がある。

 集団は互いに顔を見合わせた。シュネーの猫耳に驚きを隠せずにいるようだ。


 しかし、ウルスラは落ち着いていた。


「話がしたい。あの子の居場所を教えてほしい」

「……本当にお話をするだけ?」

「あの子が何もしないのなら」

 シュネーはしばらく黙っていたが、頷いた。ついてきてと言わんばかりにゆっくりと歩き始める。スバルのいる民家に近づいている。居場所を教えるつもりらしい。

 窓から外を見ていたスバルは舌打ちをした。ギルバートに小声で話しかける。


「どうするんだ?」

「暴れるなら村の外にしろ」


 答えはすぐに返ってきた。

 スバルは胸の内が沸き立つのを感じた。ようやく長年の悲願に手が掛かる。


「ウルスラは俺が殺す」


 スバルは呟き、静かな足取りで民家を出る。外は思ったよりも冷え込んでいた。

 スバルに真っ先に気づいたのはウルスラだった。歓声をあげて、両手を広げる。

「ずっと見ないうちに大きくなったな、スバル」

 優しい口調だった。

 だが、スバルの表情は険しい。

「おかげさまで、あんたがいない間は楽しい人生を送らせてもらったぜ」

 口をついて出た言葉は、皮肉以外のなんでもなかった。


 しかし、ウルスラは微笑みを返していた。


「楽しいのは、猫耳の女の子の事か? 二人っきりになりたかったのなら、悪い事をしたな」

「気にしてねぇ。あんたが大人しく命を差し出してくれれば、それでいい」

 スバルの殺気に呼応するように、風が強くなった。砂埃が立ち、虫の鳴き声が一段と大きくなる。その場にいる全員の服が、髪が、風になぶられる。

 集団が、フローラを除いて武器を構える。

「やはり、分かりあえぬか」

「ウルスラ様、お下がりください」

 集団はウルスラを気遣っているのだろう。スバルには不愉快であった。長剣の柄に手を掛ける。

「全員まとめて相手にしてやるぜ」

「おまえの気持ちはよく分かった。しかし、この村で騒いだら後々めんどうだろう。場所を移さないか?」


 ウルスラの提案にスバルは苦笑した。


「俺もそう言うつもりだった」

「話は決まりだな」

 そう言って、ウルスラは村の外へと足を運ぶ。集団はスバルに警戒しながらついていく。

 スバルも歩き出そうとした時に、シュネーが駆け寄ってきた。


「行かないで! 殺しあわないで!」


 涙目で訴えてくる。

 スバルは笑った。

「心配すんな。一方的に虐殺してくるから」

「絶対に行かせない!」

 シュネーがスバルを捕まえようと飛び掛るが、難なくかわす。スバルは松明の集団の後をついていく。

 明かりに照らされているのに、その先はどこまでも闇が広がっているように思えた。

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