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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
遠い記憶・双剣の魔女
22/91

21.遠い記憶

 松明の明かりは近づいている。スバルは息をつめて、目をこらした。

 六、七人の男女が歩いていた。身長が高かったり、図体が大きかったり、小柄だったりと体格の差はあるが、共通点がある。


 全員が緊張した面持ちだ。


 特に、先頭を歩く女性の表情は悲壮だった。年の頃は二十代の前半。整った目鼻立ちだが、目元に隈を作っている。美しい顔立ちだが思いつめているのが一目でわかった。

 しかし、スバルはその女性に同情をしても警戒を解く事はない。細身で背が高く、長い黒髪を一つにまとめている。腰元には二つの剣を備えている。双剣の魔女ウルスラで間違いないだろう。

 ウルスラは口を開く。


「あの子と本当に戦うのか」


 彼女の後ろを歩く男が答える。

「抵抗してくれば止むをえません。あなたの弟はおそらくゲベート国の思想に染まっています。場合によっては俺が殺す事になるでしょう」

「ありがとう。でも、何があっても私が方を付けたい。あの子のせいで、おまえ達は随分と苦しんだから」

 男はしばし逡巡したが、ゆっくりと頷いた。

「分かりました。決断はお早めに。王族直下特殊部隊といえば、かなりの実力者でしょう。ためらってはいけません」

「分かっている。敵に遅れを取る事はない」

 ウルスラは口の端を上げる。思いつめた表情はどこへいったのか。眼光は鋭かった。


 ふと、別の女が口を開く。


 年の頃は二十代半ば。茶髪を肩より眺めに伸ばした、穏やかな瞳の女だ。

「ウルスラさん、もっと聞き込みをしましょう。弟さんは戦うつもりがないのかもしれません」

「そうかもしれないが……スバルの意思までどうやって調べるつもりだ、フローラ」

「相手の心を調べるのは難しいと思います。でも、私達が最初から拒絶しては分かるものも分からなくなります」

 フローラの口調は穏やかだが、しっかりしていた。胸の前で両手を合わせて、お祈りをしている。

「私には十年前から五年前の記憶がわずかしかありません。様々な人と出会って、いろいろな思い出を作ったはずなのに。でも、思い出そうとしなければ永遠にその記憶は失われます。諦めなければいつか取り戻せるはずです。人の縁もそうだと思います。ましてやウルスラさんとスバルさんは家族でしょう?」

「……家族の絆が取り戻せるといいが、まず無理だろう。あの子はギルバート王子に忠誠を誓っていると聞いている。ギルバート王子を倒して洗脳が解けるかどうかだが……」

「ギルバート……う、頭が」


 フローラは頭を押さえてしゃがみこんだ。ひどい頭痛がしているらしい。


 ウルスラを初め、松明を掲げた男女が駆け寄る。

 フローラはすぐに立ち上がった。

「心配かけてすみません。もう大丈夫です」

「すまなかった。あの男の名前は禁句だったな」

 ウルスラが深く頭を下げる。

 フローラは笑顔で首を横に振った。


「とても大切な記憶が眠っている気がします。その人を思い出せれば、失った記憶が蘇る気がします。私が死なない程度に聞かせてください」


 会話を聞きながら、スバルはギルバートに目配せをした。

 ウルスラを倒すなら今だと思うぜ、と。

 しかしギルバートは頷かなかった。窓の外を指さす。

 

 見れば、シュネーがウルスラ達の傍にいた。


 いつの間に!?

 スバルは怒鳴りそうになったが、こらえる。気配を殺しているのが無駄になる。しばらく様子を窺う。

 ウルスラ達は呆けていた。その隙にシュネーが口を開く。


「帰って。スバルはあなた達と仲良くする気がない」

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