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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
ゲベート王城
18/91

17.伝言

「何があったのか簡潔に報告しろ」

 ギルバートに言われ、スバルは正直に報告した。

 ゲベート王都の貧民街でたまたま出会った女の子がシュネーであったこと、シュネーは狼男に追われていたこと、貧民街のボスは王城に関係のあるものの可能性が高い事、そして……。

「狼男を倒す時に、シュネーのペンダントを壊しちまったんだ。直せるか?」

「見せてみろ」

 ギルバートに言われて、シュネーは壊れたペンダントを見せる。ちぎれた先はボロボロで、狼男の乾いた血がついていて、ひどり有様だ。


 だが、ギルバートは笑みを浮かべた。


「なるほど、逸品だ。ナトュール王家に伝わるものだな。並の細工師では手も足も出ないだろう」

「……直せそう?」

 シュネーが不安げに尋ねると、ギルバートは頷いた。

「元のデザインが分からないから時間がほしい。汚れは取り除いておこう」

 そう言って、ギルバートはペンダントに手をかざす。乾いていたはずの血が鮮やかな赤色になり、ギルバートの手のひらに吸収された。さびも取り除かれたのか、ペンダントは銀色に輝いていた。


 シュネーは目を疑った。


「何が起きたの!?」

「大した事はしていない。改めて見ると、見事な首飾りだな」

 ギルバートが目を細める。

 シュネーはペンダントをそっと胸に寄せた。

「ありがとう。大切なものよ。ナトュール王家の家宝で、婚約者以外に渡してはいけないと言われている」

 言いながら、シュネーはスバルに視線を送る。両頬がほんのり赤くなっている。

 だが、スバルは言い切る。


「おかしいだろ。武器に使っただけで、婚約成立なんて」


 ギルバートが眉をひそめた。

「婚約の証を武器に……? 不敬極まりないな」

「仕方ねぇだろ。知らなかったんだ」

「知らず知らずに女心をもてあそんだのか」

 ギルバートは溜め息を吐く。しかし、その目元は笑っていた。

 一方で、シュネーは涙を浮かべていた。

「私は……本気だった。でも、知らないと言われても仕方ない」

 スバルは言葉が見つからず、焦った。何も言わなければシュネーは泣くだろう。しかし、下手な励ましや同情は逆効果だ。


 狼狽していると、エイベルがやってくる。


「何の話をしているの? 僕も混ぜてよ」

「おまえには早すぎる話題だ」

 ギルバートの返事はそっけない。エイベルは頬を膨らませた。

「いいよ、わかったよ。ギル兄は本当にそっちの話題が好きだよね! 僕だって暇じゃないんだ。さっさと用件を伝えるよ」

「用件?」

 ギルバートは眉をひそめる。エイベルはニッと口の端を上げた。

「お父様からギル兄へ伝言。レーベン村に集まる反乱因子を潰してこいだって」

「……なぜ、おまえを通す」

「確実に命令を伝えるためだよ。お父様はナトュール国の陥落もギル兄にやらせるつもりだったんだ。でもギル兄は、急用を思い出したとか、反乱兵の見回りに行かないととか言って、何かにつけて逃げたよね。おかげで僕がやるハメになったんだ。まあ、僕の実力が評価されたからいいけど」

 ギルバートは顔を引きつらせた。額に汗をにじませている。

 彼がここまで感情をあらわにするのは珍しいな、とスバルは思った。

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