16.便乗
ギルバートが便乗するように口を開く。
「シュネー王女とよく似た外観の娘か。正体がばれなければ、いくらでも使いようがあるだろう」
ソーラーは、二人の王子の表情を窺っていた。しかし、二人に掛ける言葉が見つからなかったのだろう。下手に声を掛ければ自らの悪事が明るみになる。
それを恐れたのか、盛大に笑った。
「なるほどな。確かに、化け猫と考える方が自然だ。世の中は広いものだな。本当にシュネー王女だと思ったぞ、素晴らしい演技を楽しませてもらった。よいものを見せてもらった。もの言わぬ人魚よりもよほど面白かった」
言いながら、ソーラーはシュネーに視線を送る。シュネーは唇をかみしめるが、何も言わなかった。
水槽の中でメーアが安堵の笑みを浮かべているのを見たからかもしれない。
ソーラーは言葉を続ける。
「饗宴はこれにてお開きだ。ゲベート国に栄光あれ!」
貴族達が拍手をする。ソーラー国王万歳! ゲベートに栄光あれ!
ソーラーが奥の扉へと姿を消す。メーアが入ってる水槽も同じ扉へひっこめられた。槍を向けていた兵士達も会場の隅へ戻る。パーティーはお開きになったが、何人かの貴族は食事や会話を楽しんでいた。
スバルは深い溜め息を吐く。全身の力が抜けるのを感じていた。
「なんとかなったか……」
「ああ。なかなかの猿芝居だった」
声を掛けてきたのはギルバートだった。口調は淡々としているが、穏やかな笑みを浮かべている。
スバルは心臓が飛び出る感覚がした。冷や汗が止まらない。
「……やっぱりあんたにはバレていたか」
「顔に嘘だと書いてあったからな。俺以外にも何人か気づいたはずだ。だが、化け猫が役に立つというくだりは本当にしてもらう。使えるようになるまでよく訓練しておけ」
ギルバートは低い声で笑う。しかし、その目元は笑っていなかった。シュネーが使える部下にならなければ、射殺すような雰囲気をまとっている。
やっぱりこいつ、ソーラーの息子だ。
スバルはそんな事を思った。




