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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
ゲベート王城
16/91

15.思わぬ運

 だが、運はそう簡単にはやってこない。

 複数の男女が怪訝な表情で口を開く。

「余分な耳があるが、やはりシュネーでは?」

「シュネーに違いない! 獣の耳は我々の目をごまかすために、邪悪な魔導士が生やしたに違いない!」

「そもそも耳は本物なの?」

 一度に反論するのは困難だ。スバルはこの場から走り去りたい気分だ。

 しかし、ぐっとこらえる。後戻りはできない。

「耳は本物です! 邪悪な魔導士はいったいどこの誰でしょうか。もしいるのなら、そいつの始末をしなければならないのでは!?」

 スバルはあえてソーラーとは目を合わせなかった。ソーラーがありあまる殺気を放っている。目を合わせたら射すくめられる。


 負けるわけにはいかない。スバルはあくまで言い放つ。


「この娘はシュネー王女ではありません!」

「……随分と強く主張するのだな。貴様は何を隠している?」

 ソーラーの言葉が重くのしかかる。視線を合わせるのが辛いが、よそ見をすれば怪しまれる。スバルはソーラーへと向き直る。深く頭を下げて直視を避ける。冷や汗と震えが止まらない。

 だが、恐れる事はない。

 スバルは自分にそう言い聞かせながら、言葉をつむぐ。


「恐れながら、俺はありのままを報告しております」


 隠し事をしているのはあんただ、という言葉を飲み込んだ。

 ソーラーが不適な笑みを浮かべる。


「この儂が間違っているというのだな。そこまでの自信があるのなら、化け猫とおぬしを尋問しよう。よいな?」


 ゲベート王都における尋問は、拷問と大差ない。死ぬまで自白を強要される。二度と日の光を浴びる事はないだろう。

 いずれにせよシュネーは捕まるのでは。

 スバルの脳裏にそんな言葉がよぎった。しかし、諦められなかった。

「化け猫のために時間を使うのはもったいないと思いますが……」

「その娘がシュネー王女で、邪悪な魔導士によって姿を変えられているのなら一大事だ」

 ソーラーが引く気配はない。絶対的な権力者は自らの嘘も恐れていない。言い返すのは絶望的だ。

 しかし、臆さない人物がいた。シュネーだ。

「私は何度でも言う。ナトュール国は無実の罪を着せられて滅ぼされ、王族は殺されたり改造されたりしたと」

 凛とした瞳と、高貴な威厳は神聖だった。

 この不幸な元王女に、幸運の女神が思わぬ微笑み方をする。

 エイベルが口を開いた。


「無実の罪? ギル兄に恥をかかせたのは本当だよ! 死んで償うのが当たり前だ。改造は知らないけど」


 ソーラーが見るからに青ざめるのが分かった。シュネーに猫耳を付けて売り飛ばそうとした事を、息子にも内緒にしているらしい。

 エイベルは話を続ける。

「スバルの言っている事は本当だと思う。だって、お父様がシュネー王女を逃がすはずがない! そうだよね、お父様」


 ソーラーは無言だった。

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