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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
ゲベート王城
15/91

14.化け猫

 スバルは震えが止まらなくなった。

 エイベルが追い討ちをかけるように口を開く。


「そういえば、僕の知り合いの知り合いが片目に大怪我を負って帰ってきたんだ。スバルも怪我をしているし、関係あるのかな?」


 幼い王子の瞳は、疑心に満ちていた。

 スバルは片目に大怪我を負った人物に心当たりがある。シュネーを捕らえようとした狼男の片目をつぶして、追い払ったのだ。狼男が人間の姿に戻った時に、怪我も残ったのだろう。

 幸い名前は知られていないが、シュネーをかばった人物がいるという報告を出されただろう。


 特定されるのも時間の問題だ。


 エイベルが再び口を開く。

「ギル兄は何か知ってる? スバルに何か命令してる?」

「俺はゲベート王都と周辺の見回りを命令した。あとは知らん」

 ギルバートの返答はそっけなかった。反乱軍がいつどこに隠れているのか分からないため、近衛兵以外の人間に見回りの命令をするのは不自然ではない。


「スバル、報告があるならしろ」


 ギルバートに言われて、スバルは迷った。

 シュネーをかばったと言えば反逆罪が成立する。ペンダントの修理をするために王城に連れてきたが、この会場にいる者達にはあってはならない事だ。

 だが、成り行きとはいえシュネーを助けてしまった。スバルに後戻りはできない。この場をどうにかして切り抜けるしかない。 

 スバルは心舌打ちしたい気分だ。たまたま助けた女の子がシュネーでなかったら、言い訳は簡単だった。

 野盗から逃げていた女の子を助け出したと言えば、誰も調べようとはしなかっただろう。


 そこでスバルは思いついた。


「この娘は本当にシュネー王女ですか?」


 会場にいる貴族はもちろん、ソーラーすら困惑の表情を浮かべた。エイベルは両目をぱちくりしている。

 やるしかない!


 スバルは意を決してシュネーの白いフードを取った。彼女の猫耳が露にされる。


 会場がどよめきに包まれる。

 銀髪の頭頂部に位置する猫耳は、誰の目にも異質だった。シュネーは指さされ、化け物だと罵られる。

 涙目になる猫耳の少女から手を離し、スバルは両手を広げた。

「ご覧ください! 一国の王女に猫の耳など生えていると思いますか? この娘はシュネー王女とよく似た化け猫だと考えるのが自然ではありませんか? こんな化け猫と関わりのある人間が、ここにいる高貴な貴族様にいると思いますか?」

 スバルはチラッとソーラーを見る。両手をワナワナと震わせているが、反論の余地を与えずにすんでいるようだ。ソーラーは、自分がシュネーを改造したなどと公言する事ができない。


 畳みかけるなら今しかない。


「俺は断言します。この娘はシュネー王女ではないと! 誰が仕込んだか分かりませんが、ここまで迫真の演技ができる娘なら何かとお役に立つでしょう。どうぞご期待ください!」

 言い終えて、スバルは全身からどっと汗が噴き出すのを感じた。まともに戦ってもソーラーには勝てない。シュネーと自分自身を守るためにはこれしかない。


 やる事はやった。あとは運を天に任せるだけだ。


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