13.殺気
会場が沈黙に包まれる。
しかし、ソーラーは不適な笑みを浮かべていた。
「これはこれは……よもや人魚と血のつながりがあると言うのか。自分のものにしたいのだろうが、なんと愚かで欲深い事か」
「違う! その人はメーア姉さんよ。あなたの魔力で改造された!」
「儂がどんな魔術を使ったという? 証拠でもあるのか?」
ソーラーがせせら笑うと、会場の貴族達もつられるように失笑する。
どんな魔術を使ったのか。
この問いに、シュネーは答えようがない。シュネーの頭には猫の耳があるが、なぜ生えてしまったのか理解できていない。ソーラーの悪事を証明する手段がない。シュネーは涙をこらえるので精一杯だった。ソーラーと貴族達の嘲笑は声高だった。
ふと、スバルが小声で口を開く。
「ギルバート王子、ちょっといいか。ソーラー国王は、なんで自分がやったって言わないんだ」
「無抵抗な王女にむごい仕打ちをしたなどと口が裂けても言わないだろう。国の統一にはイメージ操作が欲しい。少なくとも、俺達はそうしている」
ギルバートは、スバルよりもさらに小声で答えた。口にしたくないのかもしれない。
スバルには、もう一つ疑問があった。
「実は狼男に会ったんだ。そいつはソーラー国王から力を与えられているが、普段は人間の姿でいるように言われていたらしい。なんでだ?」
「言っただろう。イメージ操作だ。化け物を引き連れているなどとおおっぴらにはしたくない」
「あんたも化け物なのにな」
スバルの言葉に、ギルバートは苦笑した。
「おまえには言われたくない」
スバルは声を出しそうになるのをこらえて、思考をめぐらす。
おそらくシュネーとギルバートの言っている事は本当だ。
ナトュール国の第一王女メーアは人魚にされ、さらしものにされている。また、ソーラーは狼男の存在をおおっぴらにしたくない。シュネーに猫耳をつけたのも秘密にされているだろう。
なぜ秘密にするのか。
「魔法を使える事を隠したがっているのか?」
スバルは呟き、ギルバートに視線を送る。しかし、ギルバートはスバルの方を見ていなかった。
鎌掛けに失敗したと思い、スバルは舌打ちした。ソーラーがもしも自分の魔力を隠したがっているのなら、弱みを握れるかもしれない。スバルにとって、ソーラーの弱みを握る目的はないが。
ここまで考えてスバルは思考を中断した。命の危険を感じたからだ。
ソーラーが身の毛もよだつような殺気を放っていた。
「先ほどから無礼な男だ。この儂に挨拶せず、シュネーを抱えておる。敵国の王女を捕えておきながら、なぜ報告をしない?」
ソーラーの目がぎらついている。その目に映しこまれるだけで、スバルは両手が震えるのを感じた。身体がどうしようもなく動かない。ソーラーがどんな魔法を使うのか分からないが、確かな事はある。
勝てない。このままでは、虫けらのようにひねりつぶされる。
ソーラーは容赦なく言葉をつむぐ。
「死にたくなければシュネーを差し出せ。それとも、二人で仲好く処刑されるか?」




