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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
ゲベート王城
13/91

12.人魚……?

 貴族達が踊りをやめ、演奏家達が手を止める。その場にいる全員の視線がシュネーへと集中した。

 戸惑い、警戒、好奇など様々な表情が垣間見える。本当に? というささやき声から、殺せ! という怒号まで、反応もまちまちだ。

 ただ一つ言えるのは、彼らにとってシュネーの存在はあってはならない事だ。

 会場の隅に控えていた兵士達が一斉にシュネーと、シュネーを押さえるスバルへと槍を向ける。


 しかし、シュネーが臆する事はない。


「私の国はあなた達に滅ぼされた。罪のない多くの国民が死んだ。それを功績として讃え、パーティーに参加している人達も同罪よ! 私達が何をしたと言うの? 答えられる人はいる!?」

 シュネーの声は震えていたが、よく通る。小柄な娘だが威厳がある。その場にいるほとんとの人が圧倒され、言葉を失っていた。


 ただ一人を除いては。


 不適な笑い声が会場の奥から聞こえる。ライオンのたてがみを思わすような金髪が印象的な、大柄な男だった。

 朗々とした声が響き渡る。

「なんと戻ってきたのか! 愚かな小娘よ。何をしたのかと問うていたが、貴様らは弱い。力も頭もな。この儂から自国を守る力を持たぬのに逆らいおって。その弱さ、その愚かさこそが大罪だ」

「ソーラー国王……」

 シュネーは驚きのあまり両目を見開き、その男を凝視した。

 灰色のダブレットに、赤いサーコートを羽織った姿は雄々しい。見る人を威圧するそのカリスマが、ゲベート王都の最高権力者たる所以だろう。野心にあふれた目は常に獲物を探している。あらゆるものの支配を望む王は、戦いを忘れない。

 彼が歩みを進めるごとに、周囲の人間は道を開き、頭を下げる。ソーラーは畏怖の対象であった。

 やがてソーラーは、スバルとシュネーに槍を向ける兵士達を挟む位置で、足を止めた。傲慢で、残忍な、勝ち誇った笑みを浮かべている。

「戻ってきた姫君に褒美をやろう。儂の戦果を堪能するがよい」

 ソーラーが言い終えるのと同時に、屈強な数人の男が現れる。男達はそれぞれ頑丈な鎖を引っ張り、一つの巨大な水槽を引きずっている。水槽は丸く、一人の大人がのびのびと泳げる大きさだ。なみなみと水がためられて、中には一人の美しい乙女が浮かんでいる。腰まで伸びた銀髪がゆらめき、見る人を魅了する。儚げな白い肌と、悲しげな瞳は心の琴線をかきむしる。


 だが、その乙女は明らかに異質だった。


 本来なら足がある位置に、魚類の尻尾がついていた。上半身は人間だが、下半身が魚だ。好奇の目にさらされた彼女は、バラ色の唇をかみしめ、じっと耐えているようでもあった。


「人魚……?」


 スバルが呟くと、ソーラーは愉快そうに笑った。

「ナトュール国に囚われていた。かの国を滅ぼした事により、救出したのだ。時に船を沈める歌を口ずさむが、今はご覧の通りおとなしくしている。この儂に忠誠を誓い、ゲベート国の発展を導くだろう!」

 ソーラーが言い終えると、喝采が沸いた。ゲベート万歳! ソーラー国王万歳! 多くの貴族達が杯を交わし、踊り狂う。

 しかし、人々を凍りつかせるような声が発せられる。


「その人は人魚じゃない……人間よ」


 声の主に視線が集まる。シュネーだった。静かな怒りに満ちていた。

「その人は、ナトュール国の第一王女。あなた達のギルバート王子との婚約が持ち上がったのよ。どうしてこんな風に改造したの? メーア姉さんはどうしてこんな目に遭っているの?」

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