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残酷な俺の仕事  作者: 今晩葉ミチル
ゲベート王都の貧民街
10/91

9.絶句

※やや残酷な描写があります。

 狼男がニヤニヤしながら距離を詰める。

「今生の別れはすんだかな?」

「ああ、あんたとの会話はもうすぐ終わりだ」

 スバルが一気に狼男の懐へ飛び込む。不意をうたれたのだろう。狼男は一瞬スバルを見失う。

 その一瞬のうちに、銀の鎖が狼男の眼球に打ち付けられる。


「ぐっぎゃああ!」


 狼男は目から血を流し、地面を転がりまわる。

 スバルは狼男の懐へ飛び込む時に、銀の輪っかを引きちぎり、一本の鎖にしていた。これにより銀の鎖が届く範囲が飛躍的に伸びた。スバルの身体能力とあいまって、回避するのは至難の業であった。


「銀の武器なら、狼男も死ぬんだよな」


 スバルは、狼男の血で染まった、ちぎれた鎖を手にしながら睨む。狼男は冷たい眼光に威圧され、震える。狼の群れも怯えていて、絶対的な優位は消えていた。

 狼男がわめく。

「なぜ、そこまでする!? 君はその女のなんだ!?」

「聞いただろ。ただの通りすがりだ。俺はあんたを見飽きた。狼を連れてさっさと失せろ」

 狼男はうめき、もだえる。しかし、狼の群れが一匹、また一匹と減っていくと諦めたのだろう。朝ぼらけの広がる空を背に、走り去った。

 スバルは安堵の息を吐く。

「とんだ災難だったぜ。ペンダント壊して悪かったな」

「こちらこそ巻き込んで……本当にごめんなさい」

 ちぎれた銀の鎖と宝石を渡されて、シュネーは心の底から申し訳なさそうに頭を下げた。

 しかし、スバルとしては構うつもりはなかった。シュネーは貴重な情報源以外の何物でもない。ゲベート王都の貧民街のボスについて情報を絞り出した後は、きれいさっぱり別れるつもりだった。


 シュネーの驚くべき言葉を聞くまでは。

「でも、私はあなたと婚約した事を後悔しない。メーア姉さんにもいい報告ができる」


 スバルは絶句した。

 シュネーは話を続ける。

「ナトュール国の王家が持つペンダントは、婚約者にのみ渡す事が許される。あなたから欲しいと言われた時にはためらったけど、よく考えれば強いし顔も悪くないし……」

 頬を赤らめてもじもじする猫耳の王女は愛らしい。

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