返済その5「空っぽの胃に、コーラはキツイ」
有希は、居候させてもらている定食屋『色彩園』の手伝いをしている。不器用だが、気の優しい店主と、美人で優しい従姉の紅美に囲まれ、ハッピーに毎日を過ごせると思ったが、借金取りの赤井秀人の存在で、過ごせそうにはなかった。
気付いたら、奴は、いつも店に居て、飯を食っているのだ。
「紅美さん、鯖のみそ煮で…」
と、赤井は、紅美の前では普段の狂暴さを抑え、紳士的に振る舞う。
「はい、いつも、ありがとうございますー」
と、赤井の本性を知らない、というか、気付いてない紅美は笑顔で、彼に接する。
そんな二人の様子を、遠くの厨房から、有希と店主は見ている。店主も、奴の本性を知っている。だが、奴が怖いので、紅美に、奴が本性を言えないでいる。
「店主、なんで、あいつ毎日来てるんですか!?僕が、ここに来てからの四日間、毎日ですよ!」
と、有希が店主に言う。
「奴には、借金してる身だ…。うかつに、下手なこと言えないし、なんだかんだで、結構ー、返済を延ばしてもらってるし…」
苦い顔で、店主は答える。
「大体、借金したのは何故です?失礼ですが、この店は繁盛してる方じゃ?」
有希は堕落した親のせいで、借金を背負ったが、店主には堕落している感じはない。なのに、何故、借金したかを聞いてみた。
「わしが、毎日、パチンコ、麻雀、酒浸りしてる(現在進行形)のが、悪いのかなー」
そう言う店主を見て、大人ってなんなんだ…、と有希は思った。
更に、店主は…。
「思えば、奴が初めて、ここへ来たとき…」
と、頼んでもないのに、勝手に回想を始めた。
あれは、ちょうど、半年前だったそうだ…。この頃には、紅美は、すでに店に居候していたそうだ。
当時、店に借金を取りに来ていたのが、細くてガリガリの弱そうなヤクザだったんで、店主が小指一本で…。
「今度、払うって言ってんだろう!!去れ、この野郎!!!」
と、逆ギレして、あしらっていたそうだ。
それで、あまりにも払わないで居たら、一ヵ月後、借金の取り立て人が、赤井に代わってしまったそうだ。
さすがの店主も、巨漢で筋肉質の赤井が、店に借金を取りに来た時は恐怖した。
「払えよ、ジジイ…」
威圧をかけて、赤井は店主を睨んだそうだ。
(いよいよ、俺も借金払わなければならない時が来たのか…)
と、店主は思ったそうだ(なにか、おかしいが気にしない)
そんなとき…。
「いらっしゃいませー」
と、赤井を客だと見誤り、空気が読めず、あいさつしてしまった紅美が、赤井の前に現れた。
すると…。
「いらっしゃいました…」
急に、赤井の態度が変化した。おかげで、借金の返済を先延ばししてもらい、奴は、それ以来、毎日来るようになってしまったそうな…。
「…」
そんな話を聞いた有希は…。
(えっ、それだけ…?)
と、思った…。
そして、店主も金返せよ…、と心底思った…。




