返済その18「生きることが好きさ!青く光るコスモー!!」
5時間経っても、金本は注文を言わなかった。
そのため、とうとう、青木の思考回路にスイッチが入った。某ノート漫画みたく、彼は金本が注文しない理由を事細やかに考えた。
(彼は、何故に、注文をしない?最初、腹が減ってなかったとしても、五時間経てば、腹が減るはずだ…)
青木は、金本の表情を見た。彼の顔は、なにかを我慢している顔だ。そして、腹の音がなっている。
(否!減っているのでない、減っていたのか?この切ない表情!?じゃあ、何故、注文を言わないのだ!!)
青木の独り相撲が始まる。一気に、有希が背景と化した。
(何故、言わない…。好きなメニューがないのか?いや、人間だれしも、腹が減れば、空腹を満たすことを優先するはずだ。適当に、とりあえずは、無難なのを注文するはず!というより、この店のメニューは意外に多い、ジャンルも広い。だから、嫌いなメニューがあるのか?というか…、好き嫌いなら、頼んだメニューに入ってたとしても、嫌いな食べ物を残せばいいはずだ。彼だって、それが解るはずだ…)
青木は周囲が見えなくなるほど、自分の世界に入り込んだ。
(何故、注文しない!?メニューに、目を通してるじゃないか!なら、何故、頼まない…。何故…)
すると、ある考えが青木の頭に浮かんだ。
(まさか…)
金本は、メニュー表を見ながら、切ない顔をしていた。なにかを言いたいのに、言えない辛い表情。だが、それが青木の浮かんだ考えを確信に変えた。
「そうか…、わかったよ…」
青木は、金本の肩に手を優しく当てた。
「ん…?」
金本は、青木のなにかを悟った表情に目をやった。
青木の目は、あまりにも綺麗な深い青の色に染まっていた。すべてを悟り切った優しい瞳だった。
(えっ…、なんて優しい目をしてる奴だ…)
思わず、金本は男であるのに、胸がキュン!となった。
そして、青木、金本の二人は無言で見つめ合う。
そんな異質な二人の光景に、有希も胸がキュン!とした。
「なんだ、この同性の壁を越えた美しい光景は!?畜生、俺もあの輪に入りたいぜ!」
青木、金本のイケメン二人から放たれるオーラに、有希は大興奮した。
そして、青木は静かに口を開く…。
「わかったよ…。君が、注文をしない理由が…」
「えっ…」
「君は注文をしたいのに、出来なかったんだ…」
そう青木が言うと、有希は…。
「なんだってぇぇえええーーーー!!!!一体、どういう事だ!キバや…、青木さん!!」
何故か、有希はノリノリでリアクションをした。どうやら、有希は青木と居るとテーションが上がるらしい。
「君は…、注文をしたいのにしないのは…。なにを頼めばいいのか解らなかった…。つまり、この店のメニューが解らなかった…。何故なら…」
青木は、眼鏡を上げた。
そして…。
「君は、メニュー表の難しい漢字が読めない、お『バカ』さん、だからだ!だから、なにがあるのか解らなかったんだ!!」
と、青木が事の真実を話した瞬間…、悲劇が始まった。
その時の状況を、福梨有希(17)は語る…。
「はい。青木さんの回答は正解でした…。確かに、彼は漢字が読めなかったのです…」
「はい…。正しかったんですが、使った言葉が悪かったんです…。なんで、青木さん…、知らなかったとは言え、『バカ』って言っちゃったのかな…」
「本当に、青木さんはカッコ良くて、頭良くって、金持ちで…」
「でも、なんでしょう…。彼は知らずに、知らずに、不幸な目に遭うんです…」
「だから、『バカ』と言われた時の金本君は、やはり、クロックアップしました…」
「そして、金本君は…」
その夜、色彩園の天井に大きな穴が開いた。
そして、青木の悲鳴が聞こえ、辺り一面に響いた。
「師範代が言っていた…」
と、金本は天井に開いた穴に指を差し、こう言った。
「『バカと言う奴が、一番、バカだと…』」
本当に、その通りだったから、有希は苦笑いをした…。




