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極彩タップス  作者: 夜助
15/19

返済その15「人は人を愛すると弱くなる。だが、それは本当の弱さではない」

 前回までの話。

 赤井は青木のフェアレディを破壊してしまい、修理しようと、伝説のチューナー、『鬼の桃太郎もも たろう』に頼むが、彼の両腕はクライマックス状態で、フェアレディの修理なんか出来る状態ではなかった。

 果たして、フェアレディを直るのか!?

 ちなみに、一番クライマックス状態なのは、青木だぜ!!



「俺、惨状…」

 と、両腕複雑骨折の桃が二人の前に現れた。

「なんで、桃さんの両腕は、最初からクライマックスになってるんですか!?」

 ギブスに巻かれた桃の腕を見て、焦ってる赤井が叫ぶ。

「昨日、飲み屋に行ったら、近所の格闘道場『レッコウ』の館長、金太郎きん たろうが酔って、俺の腕にアームロックかけてきて、ポキッ!って…」

「格闘家のくせに、なに一般人に危害加えてんだ、そいつ!!?」

 赤井は顔の知らない、金太郎を恨むしか、今は出来なかった…。


 とりあえず、二人は工具の散らかっている工場で、桃に事情を話した。話したところで、どうにでもならないが…。

 ちなみに、有希は『生まれて初めて、車が潰れる音を聞いたんだ…』と、少女漫画のポエムで語った。

「なるほど…。いつもの俺なら、あのフェアレディを直せるのだが…」

 と、桃は自分の両腕のギブスを悔しそうに見つめた。

 すると、赤井は…。

「桃さんの手が動けないなら、仕方ないです…」

 さすがの彼も諦めモードかと思われた…、が…。

「なら、俺が桃さんの代わりに修理します。桃さんの指示どおりに、俺が動いて、この車を直します」

 と、赤井が言った。

「なに!?」

 有希、桃は同時に驚いた。いきなりの赤井の発言に、二人は目を見開いた。

 直すと宣言した赤井本人は上着を脱ぎ、工場に投げ捨てられているツナギを着始めた。そんな彼を有希は、止めようとした。直せるわけがないと思ったからだ。

「無理だよ、赤井さん!支持どおりに直せるわけないじゃん!」

 だが…。

「やってみなきゃ、わかんねぇだろ」

 と、赤井は言い去り、ツナギに着替え半壊したフェアレディに向かって行った。

 その赤井の決意に有希は、なにも言えなかった。



 こうして、すぐ様、両腕骨折の桃の代わりに、赤井がフェアレディの修復を始めた。

 決意に打たれた桃は、赤井を指示した。赤井は、初めての修復作業を慣れていない不器用な手でやっていた。当然、スムーズに行くわけがなかった。

「バカヤロウ!そんな工具の使い方があるか!!」

 と、頭に血の昇りやすい桃が赤井の手際の悪さに、蹴りを入れた。だが、赤井は素直に謝り、また、作業をやり直す。

 まだ、始まって二時間しか経ってないのに、赤井の顔やツナギは、オイルで汚れ始めた。さらには、その時間内に、かなり桃から蹴られ、殴られた。

 有希は、そんな赤井に…。

「赤井さん。青木さんだって、そこまでやれ、とは言いませんよ!桃さんの腕が治るまで、待ちましょうよ!」

 と、言ったが…。

「黙ってろ!クソガキ!!てめぇのケツ、てめぇで拭いてるだけだ!!」

 と、赤井は言い返す。

 その言葉に、有希はビクッ!と体を震わせた。赤井は、また作業を無言で始めた。

(この人は…)

 元はと言えば、確かに赤井が悪い。

 謝罪なんかは、金を払えば済むのが今の世の中だ。だが、赤井は金だけで済ませようとはしなかった。ちゃんと反省の気持ちを込めて、こんなにも真剣に、自分が壊してしまったフェアレディの修復を殴られながらも、取り組んでいる。

 例え、詫びの金を払えって、青木が許しても、赤井自身が自分を許すことが出来なかったのだ。

 そんな彼の姿に、有希は…。

「赤井さんだけじゃ、不安ですから、僕も手伝います…。僕にも、フェアレディに乗る赤井さんを止めなかった責任がありますから…」

 そう言って、有希も赤井と共に修復作業をやることにした。



 そして、かなりの日にちを掛け、二人は毎日ボロボロになりながらも、フェアレディの修復を進めて行く。

 日に日に、ひどいポンコツだったフェアレディに、かっての輝きが戻って行き…、ついに!


「出来たー!!」


 赤井、有希、桃の三人は歓声を挙げた。

 とうとう、あの半壊していたフェアレディを元通りに修復したのだ。

 これには、三人抱き合って喜びあった。だが、その際の勢い余って、桃の腕がまた折れた。


 完成してすぐに、赤井は、青木を携帯で『ゴウカ整備工場』へ呼び出した。このまま、甦ったフェアレディを彼に返そうとした。

「ははは、あいつ、驚くだろうな!」

 と、赤井が無邪気に笑った。つられて、有希も笑い声を挙げた…、が…、次の瞬間、二人の笑い声が止まった。


ブォン!ブォン!


 激しい排気音が、ゴウカ整備工場に近づいてきた。

「…」

 赤井、有希の笑いが止まった。そして、同時に嫌な予感が頭に浮かんだ。

 工場に迫ってきた車を、二人は駆け足で見に行った。

 工場から出て、外を見ると、ホンダがバブル時代に作った最高級スーパースポーツカー、青いNSXの姿…。フロントガラスの先には、青木の顔が…。


「えっ、フェアレディ直したんですか?別に、気にしてなかったのに…。むしろ、車買い替えるきっかけになったし。直さなくても良かったのに…」

 と、新しい車から降り、二人の前に立った青木が言った。

 その言葉に、赤井、有希の額に血管が浮かび上がり、拳には強烈な握力が走る。二人のフェアレディ修復の際の苦労、苦痛、疲労、喜びなどの感情が、すべて怒りに変換された。

 青木は、NSXを撫でながら…。


「良かったら、そのフェアレディを、二人にあげましょうか?」


 その一言で、青木は二人の強靱な握り拳を顔面に受けた。

 このとき、青木は思った。


「次からは、車買い替える時は、一声掛けよう…」


 とことん、知らず知らずに不幸を食らう男だった。

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