返済その12「信じる奴が、ジャスティス!!だから、俺を信じて、金貸して!!」
「で、どーするんですか?赤井さん?」
青木が店に来る数分前…。前回、一文字も名前が出なかった主人公、借金してる側の有希が、店内で借金されてる側の赤井を責めていた。
「『イ○メン・パラダイス』での、仮面ライダーカ○トは…」
「だから、どう謝罪する気ですか」
赤井は話をすり替えようとしたが、目に見えぬスピードを超えるモーションで、有希は話を戻す。
「有希…。どうしても、謝らなきゃならないのか?」
「答えは、聞いてない」
と話している間、青木が現れ、本編スタート。
「あなたは、今日の…」
と、たまたま入った色彩園の店内に居た赤井と有希に、青木は驚いた。赤井と有希の方は、もっと驚いていた。二人に驚きつつも、青木は静かに席に着く。
紅美が笑顔で、水を彼の席に静かに丁寧に置いた。
(…!)
その水の置き方を見て、青木の体に電気が走った。
「ご注文が決まったら、呼んでください」
と、紅美は青木に言う。
「あっ、はい…」
青木は、彼女の水の置き方の丁寧さに驚愕していた。
(座ったと同時に、水を置き、しかも、単純に水を置いたように見えて、その実、事細やかで丁寧な水の置き方…!しかも、グラスの水滴が不快にならないレベルに滴れている…。そして、なにより、人を労りつつも、癒している笑顔…)
と、ただ紅美は普通に水を置いただけなのに、青木は、キムチと納豆が合うのを発見した時のような感動に襲われた。
赤井と有希は、なんて謝罪を言うべきか、真剣に口論を小声で始めていた。
(どうすんだよ!有希!?)
(とりあえず、謝りなさいよ!)
(ていうか、なんで、あいつが居る!?)
(知らないよ!!)
(ていうか、有希のくせに生意気だぞ!!)
(なに、そのジャ○アンイズム!?あんたが、イカスミでキレたのが、悪いんだろ!!?)
(SATTUGAIするぞ!クソガキ!!)
(なんだと、この赤いひでぇ人!!)
と、口論になっていた。
しかし、青木の方は、紅美の接客対応に関心を示し、感動していて、二人のことなんて忘れていた。
しばらくして、青木が注文した生姜焼き定食を、紅美が運ぼうとしていた。その彼女の動きを、青木は凝視していた。
彼女は、皿の汚れを綺麗なハンカチで拭き取り、ご飯をちょっと多めに盛り付けていた。そんな彼女の動きを見て、青木は過剰なまでに感動した。
(なんて、繊細で柔らかな心遣いなんだ!!)
青木は、目から鱗だった。やっていることは、普通なんだが、美人の紅美のエフェクトが掛かり、物凄い気配りに見えていた。
同時に、今日までの自分の接客に嘆いた。
(確かに、僕はホールの仕事なんか、やりたくなかった…。だが、仕事だと割り切って、とりあえずは、マニュアル通りにやってみた…。しかし、そんな形だけでやる接客など、機械がやることだ!)
なんか、青木は勝手に自分を責め始めた。たぶん、学生時代のテスト期間中も、こんな感じで乗り越えてきたのだろう。
(『客に接する』と書いて、『接客』…。『接客』は、客に料理を運ぶだけじゃなく、客にシェフの心を運ぶ役割だったのか!!)
と、なんか勝手に結論を出し始め、さらには、涙すら流し始めた。
(僕は勘違いしていた…。料理は、シェフが魂を込めて作るものだと。だが、運ぶ人間が居なければ、料理は客に届かない。料理どころか、シェフの魂まで!!そうか!浦太郎さん、赤井とか言う名前の人は、このことを、僕に知ってほしかったのか!!)
あみだくじの結果で回されたのと、イカスミを墨汁と間違えたのを、今の彼が知ったら、どうなるのだろうか。
(時を越えろ!空を駆けろ!この星のため!!)
(熱く燃やせ!涙、流せ!明日という日に!!)
(仮面ラ○ダー…)
(ブラック!!)
と未だに、赤井と有希は、互いの襟首を握りながらの口論は続いていた。だが、もはや、口論ではなくなっていた。
「どうぞ、熱いので、気を付けて…」
紅美が、青木の席に生姜焼き定食を丁寧に置いた。 その時…。
ガシィ!!
「えっ?」
青木は、いきなり紅美の細く柔らかい手を握った。これには、紅美は驚く。
「感動しました…。僕を、ここで働かせて下さい!!」
紅美の接客に感動しすぎたあまり、料理を食べてもいないで、いきなり、青木は発言した。
それに対し、紅美は…。
「いいですよ」
店主に相談もせずに、独断し、笑顔で彼の懇願を聞き受けた。
「こぼれ落ちる砂のようにー」
「誰も時、止められないー」
新たな恋のライバルの出現なのかもしれないのに、赤井と有希は、この状況に気付かず、未だ口論と言う名のデュエットを続けていた。
「その運命侵す者ー」
「僕が、」
「俺が、」
『消してみせるー、必ずー!!』
果たして、青木龍聖と言う名の、その運命侵す者を二人は消せるのか。




