返済その10「働こうぜ、ダブルアクション」
前回までの話。
もしかしたら、有希はアッチ系なのかもしれない。
そんな危険な果実の虜になりそうになっている有希の隣の席で、赤井は『ロボアニメ、聖戦士ダ○バインの終盤で、ビルバ○ンの色が、赤から迷彩色に変わった理由』を、真剣に考えていた。
赤井が、正気に戻った頃、『ベーコン・レタス』のサラダやら、『カルボナーラ』やら、有希が頼んだ『イカスミのパスタ』など、いろいろなイタリアン料理が、イケメン店員の青木龍聖の手から運ばれていた。
「うほっ!美味そうな、ベーコン・レタスだぜぃ!!」
さっきから、何故か、やけに楽しそうな有希は運ばれてきたイタリアン料理に、大興奮だった。
「それでは、ごゆっくり…」
と、青木が去ろうとした時。
「まちやがれ!!」
と、赤井は叫んだ。
「ん!」
その声に驚いた青木は、思わず、足を止めた。同じくして、いきなりの大声に、ベーコン・レタスを食べようとしていた有希の動きが止まった。
「いかがなされました、お客様?」
と、赤井の席まで青木は寄る。赤井の顔は、静かな怒りに燃えるような表情だった。
「貴様、こんなものを客に出すのか…」
赤井は出された料理の皿を見て、そう言う。彼は、なにかに不満を持っていた。
「お客様、なにか、ご不満でも…?」
青木は、赤井のクレームを聞き取ろうとしていた。
しかし…。
「見て解らねぇのかよ…」
と、赤井は冷たく言い捨てる。
そう言われ、青木は自らが出した料理の品々を見た。が、やはり、なにが不満なのかが解らない。同じく有希も。
「赤井さん、なにが、不満なんだよ!」
そう有希が聞いても、赤井は、なにも喋らなかった。
(なにが、不満なんだ?このお客は…。『見て解らないのか?』だと…?)
と、青木は再び、自らが出した料理の品々を見る。そして、赤井のクレームについて、細かく思考を走らせた。
(皿が汚れていた?いや、ソースなどによる、汚れは拭いた…。
オーダーミスはない…。
なにより、この赤井とかいう男は、オーダーを同席の少年に任せていた…。
提供時間も、問題はないはず…。
むしろ、早かったはずだ。
料理に、異物が入ってのか…?入ってたとしても、見て解るのは、提供前に、こっちで確認できたし、食べてからじゃないと、異物の確認は出来ないはずだ…。じゃあ、なんだ?なにが、不満なんだ?盛り付けが、不満なのか?いや、そんなクレームは、今までなかったし…。それに…(さすがに、長いので省略します))
さまざまな思考を張った青木だが、自分の落ち度が見当たらなく、まったく持って、赤井の無言のクレームが解らない。
「見ても、解らないのか…」
と言って、赤井は立ち上がった。
「お客様、不満があるのでしたら、教えてもらえませんでしょうか?なんだったら、商品をお取り替します」
青木は冷静に、赤井を静めようと努力していたが…。
「見て解らないんなら、言ったって仕方ないだろうが…。考えな…。マニュアル通りの接客なんて、この程度か…。字数と、展開の都合と、作者の都合で去るぞ、有希…」
そう冷たく言い放ち、赤井は席から去る。有希は、残念そうな表情をして、店から離れていく赤井の背中を追う。
「僕の接客が、マニュアル通りで中身のない、形だけの接客だって…」
二人が去った席にある料理の品々を見ながら、青木は赤井に言われた言葉を噛み締めた。
「で、なにが不満だったんですか!?赤井さん!!」
楽しみにしていた料理が食べられなくて、有希は怒り心頭に、赤井にクレームの内容を聞いた。
それに対し、赤井は…。
「あんにゃろう、墨汁のぶっかかったスパゲッティ出しやがって…。普通、食えるか、あんなもん。なんで、あんな墨汁かかった奴を客に出すんだよ」
有希は、その赤井の発言を聞いて固まった。
赤井が言っているのは、『イカスミのパスタ』のことだった。
「赤井さん…、あれ、イカスミソースのパスタで、普通に食べられるんですよ…」
有希が、そう言うと、赤井の顔が固まった。
赤井秀人は、パスタの種類を、ミートソースとナポリタンしか知らなかった。




