第4話 「チート職業」
つ、疲れた……!
宛がわれている部屋に着き、大きくため息を吐く。
腹は膨れたけど、味わからなかったぞ!
気安い王様とはいえ、一国の王様と談笑しながら飯を味わうなんて高等技術、俺には出来ん!
アリサのお蔭で、それなりに受け答えできたと思うけど、それでも緊張は折角の美味そうな食い物を味のわからないものに変えていた。
きっと美味かっただろうに……!
メインのあれって、何の肉だったんだろうなー。
備え付けのソファに体を預け、美味かったであろう昼飯に想い馳せていると。
「シュウヤ様。この後、アリサ様、ディア様、私の4人で“職業鑑定組合”まで行く予定になっております」
傍に控えていた無表情のミリアが秘書よろしく伝えてくる。
「あー、うん。そういえば言ってたねー」
異世界のことに興味津々のジーク様の相手をしてた所為で忘れてたよ。
「ですので、シュウヤ様。さすがにその格好では怪しすぎますので、こちらの服にお着替えください」
「え? あぁ。まぁ、そうだよね」
ブレザーにネクタイは、この世界じゃ浮きまくるね。
「じゃあ、着るから、ちょっと席外してくれない?」
見られてたら恥ずかしいし。
「いえ、手伝わせていただきます」
「ははは。一人で着れるって」
幾分渇いた笑いになるのはしょうがないとおもうんだ。
「いいえ。こちらの服とあちらの服では、どんな違いがあるかわかりませんので、手伝わせていただきます」
「いや、いいって!」
「これもジーク様から仰せつかったことですので」
あの、残念イケメンが!
はっ!
思うだけなら、大丈夫だよね?
不敬罪で死刑とか言われないよね?
大丈夫、大丈夫。
って、そんな縋るような目で見ないでよ。
無表情なのはそのままだけど、結構目に感情出るのかな。
「………」
「じゃあ、その。……頼むよ」
あえなく、陥落したのであった。
……………。
俺もうお婿にいけないかもしれない……。
紆余曲折の果てに、白の長袖シャツの上に革製のベスト、黒のズボンという高いんだか安いんだかわからない服装に変えられた。
…着るまでにどんなことがあったのかは察してくれ。
若い女の子に着替えを手伝ってもらうだなんて、貴族でもなんでもない俺には精神的ダメージが高すぎる。
「よくお似合いですよ、シュウヤ様」
「うーい。で、もう行くのかー?」
気怠い感じな返事になってしまったのは仕方ないよね?
「はい。参りましょう。アリサ様方はまだでしょうが、殿方が女性よりも遅れてくるのはいかがなものかと思いますので」
「あぁ、うん。そうだね」
女の子の支度に時間がかかるなんて知ってるよ?
彼女いない歴=年齢の童貞だがな!
言ってて悲しくなるな、おい。
というわけで、またミリアの後についていくのであった。
で、ロビーに到着。
ロビーっていうか正門前の空間なんだけど、二階までの吹き抜けに階段がどーんとある。
テレビで見たお城そのまんまな景色だな。
……どっちかというとゲームに出てくるお城の方が近いかもしれない。
「あら。待たせちゃったかしら?」
「いや。俺もさっき来たとこ」
セリフだけ見るとデートの待ち合わせみたいな会話だけどそんなことはない。
「さて。これから、“職業鑑定組合”に向かうわけだけど…って何?」
「……美人って何着ても美人なんだなって」
早速、予定を話そうとするアリサに思わず見入ってしまってた俺。
さっきまで着てた豪奢なドレス姿もいいが、今のちょっとした上流階級のお嬢様って感じの格好もいい。
シックな色合いの普通のワンピースだけども、素材がいいお蔭で野暮ったさが全く無い。
うん。美人ってのは何着ても似合うからずるい。
「…そ、そう? ありがと」
ちょっと赤くなってぼそって言うその姿も可愛らしい。
「アリサ様? ご説明の続きを」
はっ。
救いの手かどうかは定かじゃないけど、ディアの一声で、なんとなく変な空気だったのが普段通りに変わる。
「あ、そ、そうね」
わたわたと手を振るアリサに生暖かい目を送るディア。
やけに気安い主従関係だな。
ディアの格好は、鎧姿じゃなく、執事っぽいパンツルックだ。
スカート穿いても似合うと思うんだけどな。
「で、向かうにあたっての諸注意よ。一つ、異世界から来たことを公言しないこと」
まぁ、言っても誰も信じないだろうけど。
「二つ、あなたの身分は、一応は英勇ってことになってるわ」
「え、一応とはいえ、英勇なの?」
そんなものでは全くないのだけれど。
「ええ。遥かな未来から来た英勇。だけれども、魔法陣の欠陥で英勇になる前の状態で召喚されてしまった。ということにしてあるわ」
「なるほど。それなら俺がこの世界について疎いことや、レベルが低いことってことも解決するか」
「ま、そういうこと。大体、英勇ってみんな普通は30代以降らしいしね」
「過去の英勇はみんなおっさんってことか」
「中には、女性も居たみたいだけどね。さて、こんなものかしら。何か質問ある?」
「あー、と。アリサは普通に街まで出ても大丈夫なの?」
普通なら、お城の外はお忍びってことになるよな?
「あ、大丈夫大丈夫。私よく外に遊びに行くから」
あっけらかんとのたまう王女。
「い、いやいや。大丈夫なの?」
思わず後ろに控えるディアに訊く。
「あぁ、問題はないな。10歳を超えたあたりからアリサ様が勝手に抜け出すようになってしまってな。仕方なく、私が護衛として一緒に出ている。かれこれ7年近くそうしてきたからな。街の皆も、アリサ様には危害を加えたりなどしないさ」
「へー。お転婆にも程があるな」
10歳でお城脱出は中々できないことだと思う。
「今はそんなにお転婆じゃないわよ。ね、ディア?」
「返答しかねます、アリサ様」
お転婆未だご健在ってとこか。
「あ、そうそう。ミリアはシュウヤ付きのメイドってことになったから。頼んだわよ、ミリア」
「はい。誠心誠意お世話させていただきます」
無表情ながらも目に力を込めて礼をするミリア。
「って、ちょっと待ってよ。聞いてないよ、そんなの?」
「だって、さっき決まったし」
「マジかよ。ミリアはいいの?」
この無職低レベル男の世話で。
自分で言ってて悲しい。
「はい、もちろんです。未熟とはいえ、英勇のお世話ができるなんてメイド冥利に尽きます」
未熟は余計だと思うんだ。
「ミリアがいいなら、いいけど。じゃあ、よろしく」
「はい、シュウヤ様」
おぉ!
ミリアが笑った!
今まで無表情だったからか、微笑みを浮かべただけでもかなり可愛さレベルがアップしてる。
やはり、女の子は笑うのが一番だな。
「おほん。それで、シュウヤの寝床についてなんだけど」
おっと、あんまり女の子の顔を眺めるのはよくないな。
「どっかの宿屋に泊れ、なんて言わないよな?」
俺、無一文なんですけど。
いや、財布の中に日本銀行券とか硬貨とかは入ってるけども。
「言わないわよ。さっきまでの客間だと、落ち着かないみたいだし、もう少しグレードの落とした部屋を用意しておくわ。荷物とかも一緒に移動させておくから」
「落ち着かないの良く分かったな」
「ミリアの証言ね。人伝いに聞いたのよ」
いつのまに?!
「シュウヤ様でも高い物がある、と気付いていただいたようで落ち着きなく過ごされていましたので。さすがに、自ら庶民と言われる方です」
なんか段々言葉ひどくなってない? 気のせい?
「そんなわけで、今日の夜はそれなりに落ち着けると思うわ」
「あー、その。ありがとう?」
「なんで疑問形なのよ。さて、それじゃ、行きましょうか」
「おう」
「は」
「はい」
三者三様の答えを返して。
いざ、〔聖王都グリンドナード〕へ!
来たよ、来ましたよ!
これぞまさに、異世界の街!
大通りのそこかしこから。
「ルディアラ産の瑞々しくて美味しいピアータの実が、なんと一個150ミニアだよ! 買って行ってくんな!」
「男なら肉! 肉を食わなきゃ男じゃない! ってことで、ルガウアのマウア牛の肉4人前で、1000ミニア丁度だ! 美味い肉を家族でどうぞ!」
「御嬢さん方に朗報だ! マウアバターとマウアミルク、さらにはナザーリアから仕入れた白糖までたっぷり使ったクッキー、一袋300ミニアだぜ!」
などなどの活きのいい客引きの声が聞こえてくる。
見知らぬ名前ばっかりで胸が躍るな!
あ、そういえば。
「なぁ、アリサ。俺って、お金もらえるの?」
一歩半ほど前をどんどん行くアリサに声を掛ける。
「何言ってるのよ。貰えないに決まってるじゃない」
「え、マジで? 俺ずっと無一文?」
「英勇として、三食寝床を提供してるんだから文句言わないの」
「えー。でもさぁ、俺だって、折角だし買い物したいって思うんだよ」
「そうねぇ。それなら、ラジャイルの連中を追っ払った後に、請負人でもやればいいじゃない。実力さえあればあっという間にお金持ちよ?」
「請負人、ってなんだ?」
「いろんなところからくる依頼を請け負う何でも屋ってところね。……ちょうどいいわね」
「何が?」
「ここがその請負人たちの組合の施設よ」
目の前には大きな石造りの二階建ての建物。
入口の上の看板に“総合依頼請負組合 グリンドナード支部”とある。
「“総合依頼請負組合”じゃ長いから、みんな“依頼組合”って言ってるわ」
あぁ。なるほど、ファンタジーものの定番ですね。
てことは、ラノベとかに良く出てくる冒険者=請負人ってことでいいのかな。
「ここでは、庭の草むしりから、王侯貴族の護衛まで、なんでもござれよ」
「ようは、自分で使える金が欲しいなら働け、ってことだろ?」
「ぶっちゃけちゃえばね。うちだって、財政が潤ってるわけじゃないのよ」
「了解。お国の台所事情は突っ込まないよ。ここは、二週間後だな」
「ま、そういうことね。で、今日の本題はこっち」
すたすたっと“依頼組合”の建物から歩き、すぐ隣の平屋へ。
「ここが、“職業鑑定組合”のグリンドナード支店よ」
確かに入口の上には看板にそう書いてある。
同じ組合でも、一気に施設のグレード下がったな。
「ほら、3人とも入るわよ」
後ろも見ずにさらにすたすた組合の中に入っていく。
あの王女様は、実は猪突猛進タイプなのではなかろうか?
「あ、アリサ様。お待ちください!」
「シュウヤ様。行きましょう」
「お、おう」
てなわけで、マカロニウェスタンで見るような木で出来た首から腰までしかない両開きのドアを潜った。
「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用でしょうか?」
木で出来たカウンターの向こうから小柄な髭面のおっちゃんが話しかけてきた。
カウンターの上のあの石版ってなんだ?
「今日は、この人の職業適性を見てほしいのよ」
「これはこれは、アリサ姫様。こちらの方は一体どのような方で?」
そりゃ、王女様に連れられてくるようなやつは気になるわな。
「すぐにお触れが街に出るだろうけど、彼は英勇よ」
「なんと! では、儀式は無事に終わったのですな!」
嬉しそうに言うおっちゃん。
英勇が居れば、帝国の奴らを追い返せるかもしれないしな。
だが、すまない、おっちゃん。
「それが、…ごめんなさい。魔法陣に欠陥があったみたいなの」
しょぼんという擬音が付きそうな雰囲気だな。
「あぁ、それでかい。英勇様にしてはやけにお若いと思ったんだよ」
こんな若造が英勇なわけないよな。
「英勇になる前の状態で召喚してしまったみたいなの。それに未来から来たようで国の記録にも残ってないのよ」
という、設定でお送りしております。
騙してごめん、おっちゃん。
「なるほどなぁ。アリサ姫様のせいじゃありませんよ。そんな悲しそうな顔をされては儂まで悲しくなってしまいますわい」
「ありがとう。それで、職業が分からないみたいだから、ここで確認しようと思ってきたのよ」
「おぉ。任せてくだされ! さて、それでは英勇様」
「あ、俺の名前はシュウヤです。できればそっちで」
英勇様なんて言われるのは申し訳ない。
「はい、シュウヤ様。左手をこちらの石板の上に」
「こうでいいですか?」
おっちゃんに促されるまま、カウンターの上のA4サイズの石版に左手を置く。
「では、そのままで《ジョブリスト》と唱えて下され。シュウヤ様が転職可能な職業をステイシア様が腕輪を通して教えてくださいます」
ステイシア様凄いな。流石、神様。
あ、でも《称号》見られたりしないよな?
ちらりとアリサを見ると頷いてきた。
大丈夫ってことだよな。よし。
「《ジョブリスト》」
ゥン。
と、お馴染みの音を上げて窓が現れる。
今回はいつもと違って最初から実体化してる。
「こ、これは……!」
驚愕するおっちゃん。
「何よこれ……」
「シュウヤ殿は一体……」
「羨ましい限りです」
後ろの3人も驚きの声を上げる。
「え、と。どうなってるんですか?」
「シュウヤ様。リストを良くご覧になってください」
驚愕のあまり少し青ざめたおっちゃんがいうので、よく見てみる。
転職可能な職業一覧
一次職。
戦闘職。
近距離系。
[戦士]
[剣士]
[槍士]
[斧士]
中距離系。
[弓士]
[盗賊]
遠距離系。
[法術士]
[魔術士]
生産職
[鍛冶師]
[細工師]
一般職
[丁稚]
↓
と、出てた。
やった、[魔術士]がある。
「なんか一杯ありますねー」
「バカ。一杯なんてものじゃないわよ!」
え、なんで怒られるの、俺?
「まさか、英勇様とはいえ、一次戦闘職全てに適正があるとは……。聞いた事がありません」
青いおっちゃんがさらに顔を青くする。
「えーと、誰か詳しく」
へるぷみー。
「では、私が」
「ミリア、頼む」
我らがメイド様が一歩前に出てきた。
「一般の人であれば、生産職か一般職が一つ、多くても二つまで。それが職業一覧に現れるのです」
「生産職や一般職って?」
「一次職では、[鍛冶師][木工師][細工師][裁縫師]を生産職。[農夫][丁稚][漁師][牧畜家]を一般職と言っています」
「多いな……」
「派生などを含めると倍以上になりますね」
「多過ぎだろ……」
「多過ぎなのは否定しません。これらが一般の人が就く職業です」
「なるほど。で、問題の戦闘職っていうのは?」
「何人かに一人の割合で、生産職や一般職に加え、戦闘職と呼ばれる職業を得られることがあります」
「[戦士]とか[魔術士]とか?」
「はい。この戦闘職は、多ければ3つまで転職が可能です。それだけで十分才気あふれるということになりますが……」
「この量は異常ね」
言い淀んだミリアへ、アリサがちゃちゃを入れる。
「確かに異常と言える数でしょう。ここまでの適正を示したのは、今までいなかったのではありませんか?」
「お、おぉ。儂もこの仕事を長くやっとるが、こんなのは見たことも聞いた事もないわい」
そんなレアケースなのか!
「おぉ。じゃあ、選び放題ってわけか! 何にするかなぁ!」
「貴方はもう少しこの事態に付いて良く理解した方がいいわ……」
「全くです……」
「流石は、英勇様といったところでしょうか……」
三人が呆れた声を出すが知ったこっちゃないね!
やっぱり[魔術士]かなぁ?
……ん?
「…ところでさ、この下の方にある矢印って何?」
下の方に↓があるんですけど。
「は? 矢印ですと?!」
再び驚愕のおっちゃん。
心臓止まったりとかしないよな?
「ほら、ここ。……あれ?」
空いた右手で矢印に軽く触れたら、枠内の文字が切り替わった。
転職可能な職業一覧
↑
特殊職
[武芸百般]
どういうこと?
「まさか、いや。そんな…しかし……」
死体並に青褪めて、ぶつぶつ言ってるおっちゃん。
マジで大丈夫か?
「特殊職まで、転職可能だなんて……」
「呆れるべきか感心するべきか私にはわからんな」
「感心するべきではないかと存じます」
そんな、こいつ、ないわー。みたいな目で見るの止めてくれます?
「説明お願いします……」
仕方なしに青いおっちゃんに説明を求める。
「は、はい。先ほど、メイドの御嬢さんが説明した通り、戦闘職、生産職、一般職が普通であれば転職できる職になります。ですが」
「ですが?」
「先天能力や優れた資質をお持ちの方、儀式を受けた方などは、それらに当てはまらない特殊な職業を得ることができます」
「それが特殊職って奴ですか?」
「はい。そこにおられるアリサ姫様とディア様も特殊職をお持ちです」
「え、そうなの?」
「そうよ」
「頂いております」
二人して自慢げに言う。
特殊職って自慢できるものなのか。
「しかし、シュウヤ様」
「なんですか?」
しかし、で止められると困る。
「この[武芸百般]ですが、記憶にある限りは初代のグリンドナード国王様のお仲間である、戦神様が最初になられた職業であったかと」
「戦神様?」
「名前とか容姿とか一切伝わっていないのよ。で二つ名の戦神っていうのだけが伝わってるから戦神様って言われてるの」
称号じゃなくて二つ名の方なのか。
「へぇ。じゃあこれにしようかな」
「軽いわねぇ。私たちにしてみれば、お伽噺で出てくるような名前が目の前にあるってことなんだけど?」
ジト目で見られても?
他の二人もジト目だし。
「そんなこと言われても実感ないし。これにしたいんですけど」
「で、では。なりたい職業の名前を指で触れてください」
タッチパネル的な物なのか?
ぽちっとな。
お。
切り替わった。
何々。
[武芸百般]
一次戦闘職の武術を全て扱うことが出来る。
装備品目:装備不可はありません。
職業固有能力
1:【達人の瞳】
2:未開放です。
3:未開放です。
※この職業は■■以外には設定されないようになっています。
上記に転職可能です。
転職しますか?
<はい/いいえ>
なにこのチート。
「こりゃまた、すごいな」
「これを見せたら城の歴史編纂係は卒倒するか狂喜するかのどちらかね」
「[武芸百般]の詳細って知らされてないんだ?」
「歴史書に名前がちらっと出てくるだけだからね」
「歴史の謎が一つひも解かれたのか」
「そういうことね」
「で、このまま。はい、に触れればいいの?」
「はい。左様です」
さっきまでの青い顔から一転、興奮からかやけに赤い顔になってるおっちゃん。
「それじゃ、遠慮なく」
押してみたけど、変わったところって無いよな?
「それでは、確認してみてください」
石版から手を離すと、窓枠が消える。
これも、離すと消える仕様なのか。
次いで、右手で腕輪に触れる。
「《ステイシア・ビュー》」
ゥン。
半透明の枠が現れる。
「おぉ! 確かに、職業が[武芸百般]になってる!」
「良かったわね……」
「なんで、そんな疲れた顔してるんだ?」
「驚き疲れよ」
「なんていうかその。ごめん?」
「疑問形で謝られても困るわ」
「ですよね。あれ、レベルも1になってるな」
せっかくレベル2になったのに。
「転職するとレベルが1になるのよ。レベル2以上なら、その時の才能値の半分の値が加算されるから、一気に弱くなるってことはないわ」
「なるほどね。これで、ここでの用事は終わり?」
「そうね。帰りましょうか」
「ご利用ありがとうございました。費用は、お城の方へ請求しても?」
「えぇ。話は通してあるからすぐもらえるはずよ」
「ありがとうございます。ではまた、ご利用ください」
おっちゃんの嬉しそうな声を後に店外に出た。
「やっぱりお金掛かるのか」
街の中心を貫く大通りを、城に向かって歩きながらぽつり。
「シュウヤは気にしなくてもいいわ。必要経費よ」
「そういってもらえると助かる」
心の中では借金ということにしておこう。
何かで返せるようにしないとな。
「あ、シュウヤに朗報よ」
「何?」
「今日の夕食は一人で食べられるわ」
「え、なんで?」
夕食も一緒に食べようぜってジーク様言ってたのに。
「戦前処理が上手く行ってないみたいで、忙しいって。着替える前にハラルが言ってきたのよ」
「ハラルさんが?」
「あの人が言うなら今日お父様に自由な時間はないってことだからね」
「なるほど」
「そんなわけで、今日のご飯は一人で食べて頂戴」
「了解。今度こそ、美味い飯を味わえそうだし、期待しとこう」
「料理長に言っておくわ」
「頼んだ」
「明日の予定は、夕食のときにでも伝えておくわね」
「あー、あんま厳しくないといいな」
「厳しいに決まってるじゃない」
「やっぱりかぁ……」
「ま、程々に頑張りなさい」
「うーい」
明日からの事を考えると憂鬱だなぁ……。
そんなこんなで、異世界初日は恙なく終わっていく。
評価ポイントが倍になってる……だと?!
ありがとうございます!
さて、やっとこさ序章も終わり、次話から第一章となります。
予定通り次で戦闘をちょろっと書けそうです。
では、また次話で。