第2話 「王女による説明会」
お城ってすごいね。
滅茶苦茶デカいね。
ネズミ―ランドのお城なんか目じゃないわ。
俺の通ってた高校よりもなお大きい。
目の前にある尖塔が真ん中に一本、周りに四本の石造りの城がグリンドナードの王城だそうな。
で、その城の正門から扇状に広がるようにして街が形造られてるらしい。
名前もそのまま〔聖王都グリンドナード〕って云うんだそうだ。
ちらっと見えた限りはそれなりに大きそうな街だな。
なんでちゃんと見れないかって?
城の裏手の丘から歩いてきたからだよ。
その丘にある〔聖なる御座〕ってとこから、1時間で城の裏門に到着。
こっち側は普段は騎士団の練兵場になってるんだとさ。
あ、俺の鞄は腕輪を持ってきた騎士さんに預けました。
じゃなきゃ、一時間もあるけねぇよ。
アリサはちゃっかり馬に乗ってたけどな。
ドレスの下はズボンだったらしいよ?
楽しやがって。
なんか途中でなんか変な幻聴も聴こえたし、思ってるよりも疲れたのかも。
てなことを、ぼーっと考えていると。
「呆けてないで付いて来なさい」
アリサに怒られた。
「付いていくのはいいけど、どこに行くのさ」
これまたドデカい門のところにいる門番二人に怪訝な顔で見られつつ訊いてみる。
「貴賓室よ。ま、お客様用の応接室だと思って頂戴」
「貴賓室ねぇ。貴い身分じゃないんだけどなぁ」
根っからの平民です。
「ま、お客様なのは間違い無いんだから気にしないの」
「りょーかい」
そのまま、ディアさん? とアリサを先頭に城に入る。
門まで一緒に来ていた兵士のみなさんはここでお別れした。
始めてみる石造りのお城をきょろきょろしながら、2階に上がり。
貴賓室、と書かれたネームプレートのある部屋に入る。
ん? なんで今読めたんだ?
日本語じゃなくて、崩れたアルファベットみたいな感じだったのに、読めてしまった。
そういえば、さっきのステータス画面に【全言語読解】ってあったな。
これのせいか?
「ま、適当に座って頂戴。ディアも座って」
「はい。失礼します」
入ってすぐの対面ソファに二人で掛ける。
「ふぅ、疲れた」
ため息を吐きつつ、反対側に座る。
「あれぐらいで、疲れるなんて、流石、レベル1ね」
やれやれ、って感じで首を振りつつアリサさん。
「いや、しょうがないでしょ。あっちの世界にレベルなんてないんだから」
「あら、そうなの?」
「そうなの」
「ま、私やディアはもっと高いレベルですけど?」
いや、そんな、軽いドヤ顔されても困る。
「さて、一息ついたことだし、もう一度ちゃんと自己紹介しておきましょう。私は、アリサスティーラ・ティリナム・グリンドナードよ」
「私は、ディアージュ・ブラム・ブリスティアという。アリサ様の専属騎士だ。ディアでいい」
「莢塚 秋夜。シュウヤが名前。俺もシュウヤでいい。よろしく、ディアさん、アリサ」
「シュウヤ殿、私も呼び捨てで構わん。アリサ様。早く説明してしまいましょう」
「それもそうね。シュウヤ、またステイシアの窓を見せてもらえる?」
「ステイシア? ……あぁ。ステータス画面ね」
「すてーたすがめん? ステイシアの窓のことかしら? まずは、それぞれの項目から説明していくわ」
ま、いきなり相手国のこと言われても困るからな。
まずは、自分のことがわからないとな。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
昔の人はいいこといったもんだ。
ん? 意味ちょっと違うか?
「了解。…《ステイシア・オープン》」
腕輪に手を置いて呟く。
ちょっと恥ずかしいな。
厨二病臭い。
ゥン。
半透明のウィンドウが現れる。
内容は……あれ?
「なんか、レベル上がってる?」
「え? いくらレベル1だからって、そんなに簡単にあがるわけないでしょう?」
呆れた顔していうアリサ。
こんな顔ばっかだな。
「いや、上がってるって。見てみろ。…《アクティブ》」
しっかりと実体感を持つウィンドウ。
「嘘……」
「レベル2になってますね……」
「だろ? なんでレベルあがったんだ?」
目の前のウィンドウには。
名前 莢塚 秋夜
位階 Lv2
称号 ≪異界からの来訪者≫
二つ名 無し
種族 〈人族?〉
職業 [???]
能力 【来訪者】
【■運】
【?神の声】
付与能力 【全言語翻訳】
【全言語読解】
技術 無し
魔術 無し
才能値 基本値 職業補正 能力補正 装備補正
精神力 180
筋力 8
体力 8
速力 9
器力 10
知力 9
識力 10
運力 5 +?
と、出ている。
ステータスポイント、レベル1の倍以上じゃねえか。
「アリサ様。レベル2にしては、少し数値が高すぎる気がするんですが」
「そうね。下手するとレベル5に近いわね」
困惑する二人を見て、さらに困惑する俺。
「レ、レベルが上がった、ってことは、何か経験を得るようなことしたのか? 俺全然した覚えがないんだけど」
「私もさせた覚えがないわね。……ディアは見当がつくかしら?」
「そうですね……。兵士の訓練の中に隊列を組んで山道を歩き回るというのがありますが……。1時間程度では歩き回ったとは言えないでしょう」
「そうよねぇ……。称号とか先天能力があるみたいだし、そのあたりから調べてみたら何かわかるかもしれないわ」
「称号は、わかるけど先天能力ってなんだ?」
「普通、能力って、レベルがあがったり修行や儀式で得たりするものなんだけど、稀に生まれた時から能力を持っている人がいるわけ」
「なるほど。……神様からの贈り物みたいものか」
英語のギフトってのも才能って意味があったような?
「その通りよ。ま、本来はあっても一個、どんなに多くても二個くらいらしいから、シュウヤは神様に好かれてるのかもしれないわね」
「どの神様か、わかりかねますが」
真面目な顔で仰るディアさん。
もっと柔らかい雰囲気にならないかなー?
やっぱり神様って一杯いるのか。
「邪神じゃなきゃいいわね。じゃ、説明するけどいい?」
「邪神いるのかよ。いいぜ」
タコの出来損ないみたいな感じか?
いあいあ。くとぅるー。
「上から順に、行くわね。名前は、そのままね。その下の位階は、生物としての強さの指標みたいなものかしら」
「あー、やっぱりゲーム的なレベルなのか。それならわかるわ」
「わかるの? 異世界にもレベルの概念があるなんて思わなかったわ。シュウヤ、レベル1だったし」
「俺の世界はレベル制じゃないよ。ゲーム…お遊びでそういう設定の物があるってだけだから。概念的には一緒みたいだな」
「遊びねぇ。平和な世界なのね……。次は称号ね。詳細を確認しちゃいましょうか。手を置いたまま、《タブ・タイトル》って言ってみて」
タブってまんま、パソコンのエクスプローラとかにあるタブだろうか。付箋的な。
「あいよ。…《タブ・タイトル》」
呟いた途端に画面の内容が書き換わり。
称号一覧
1:≪異界からの来訪者≫
異世界から紛れ込んできてしまった証。
固有能力、【全言語翻訳】と【全言語読解】を付与。
とある。
「これで、異世界から来たっていうのは確定ね」
「確定なのか? もしかしたら間違いってこともあるんじゃ?」
エラーとかバグとか。
いや、無いと思いたいし、俺も異世界から来たと思ってるんだけど。
「確定よ。称号っていうのは、世界が認めた証なの。英勇のほとんどが称号を持っているし、高名な生産職なんかも持っていることだってあるわ」
「なるほどねぇ。二つ名ってのとどう違うんだ?」
「二つ名の方は、人々が認めた証よ。例えば、シュウヤのことを異世界人ってみんなが呼び始めたら、二つ名が異世界人になるの」
「ふぅん。でもさ、分ける意味ってあるの?」
「あるわ。称号には固有能力があるけれど、二つ名には何もないのよ」
「てことは、称号の方が価値があるってことかぁ」
「そういうことね。……次は、種族ね」
「一杯あるのか?」
「かなり多いわね。私みたいにシュウヤとほとんど変わらない見た目の人種を人族って云ってるわね。人族は一つだけよ」
RPGでいうところのヒューマン扱いなのかな。
「人族はってことは、他には、どんなのがいるのさ」
「種としては、魔種、天種、獣種の三種類ね。族としては、魔種だと、吸血族。天種だと、風精族。獣種だと、人狼族が有名かしらね」
「これまた、なんてお約束な。風精族ってもしかして耳が長かったりする?」
こんな感じで、とジェスチャーをする。
もしかして、エルフ?
エルフって森の妖精だったけど、あり得る?
「えぇ、天種はみんなそんな耳をしてるわ。よくわかったわね。あっちの世界にもいるの?」
「いないけど、想像上の種族としているからね」
はい、リアルエルフ確定。
「あっちの世界の人って想像力豊かなのねぇ」
感心半分で、へーっと漏らす。
残りの半分は呆れで出来ています。
「俺の種族のところ、なんかはてなマーク付いてるんだけど、どうしてだと思う?」
「うーん。……あ! そういえば、ハーフやクォーターだとたまにはてなが付くって聞いた事あるわね」
「ハーフとかクォーターね……。バグかエラーに近い物があるのかな?」
「ばぐ、えらー? 何それ?」
「あー、なんだ。腕輪がしっかり認識しきれてないだけなんだと思うよ?」
「そんな学説もあったわね、たしか。じゃあ、貴方ハーフか何かなの?」
「いや、俺は生粋の日本人だし、向こうには天種? だのなんだのなんていない」
「にほんじん、ってのがわからないけど、いいわ。あっちとこっちじゃ、人族に違いがあるのかしらね?」
「多分、そうなんじゃないか?」
「ふむ。ま、それでいいわね。次は、職業ね。はてなばっかり並んでるけど、確認だけしておきますか」
「今度は何だ? 《タブ・ジョブ》でいいのか?」
いった瞬間に画面の中が切り替わる。
「理解が早くて助かるわ。……なにこれ?」
「いや、俺に訊かれても?」
窓枠内にはこうある。
職業一覧
1:〔???〕 Lv
この職業は設定されていません。
データベースとフラグが未検出です。
再設定をした場合、再度、読み込みを行ってください。
どうみてもRPGです。本当にありがとうございました。
「データベースにフラグかぁ。なんかいきなりこの世界の裏側見せられた気がするわー……」
「シュウヤ殿には意味がわかるのか?」
困惑顔のディアは、なんか雰囲気が変わっていいな。
険しい顔よりはよっぽどいい。
「なんとなくだけどね。俺、向こうの世界だと、高校生って職業だったんだけど、こっちにはないでしょ?」
「聞いた事ないわね」
小中高の学校制度ではない、と。
「学生ってのは?」
「ないわ。学園とかはあるけど、そこに入っていたとしても、職業は戦士とかなの」
「そうなのか。じゃあ、やっぱり、高校生って職業が、腕輪の中に登録されていないからはてななんだと思う」
「なるほど。再設定、とあるが?」
「多分、俺がこっちにちゃんとある職業に就けば、ちゃんと表示されると思う」
「ふむ。シュウヤ殿は博識だな」
感心したような声色で言われても困る。
「いやぁ、ただの推測だぜ? 当たってない可能性の方が高いよ」
「推測が立てられるだけマシだろう、私はそういうことを考えるのが苦手でな」
あぁ、見た目通りの人なのね。
「ただの当てずっぽうだって」
「推論でも見当がつけれるならいいじゃない」
「そういってくれるのは嬉しいけどさ。ま、いいか。で、職業ってどんなのがあるのさ?」
「そうねぇ。長くなるから、“職業鑑定組合”に行ってから説明するわ」
おっと丸投げですね?
「さ、次はお待ちかねの能力ね」
「いや、別に待ってないよ? 《タブ・アビリティ》」
ホントに待ってない。
表示されている文字が移り変わる。
能力一覧
先天能力
1:【来訪者】
独自能力。
全ての成長率が5倍になる。
また、記憶力の上昇、記憶の掘り起こしが容易になる。
さらに、LVUP時の能力値の上昇値が最大値x2に固定される。
2:【■運】
遺失能力。
神の加護を得ずに運力に補正を得る。
半解放状態のため、補正値はランダム。
※この能力は、半解放状態です。
条件を満たすことで解放されます。
3:【?神の声】
希少能力。
?神が己の行いで起きた結果を囁いてくれる。
能力
未取得
付与能力
1:【全言語翻訳】
遺失能力。
全ての言語を理解し、話すことが出来る。
2:【全言語読解】
遺失能力。
全ての文字を理解し、書くことが出来る。
……は?
いやいやいやいや!
「【来訪者】ってやつおかしくないか!?」
なんだよ、5倍って!?
「独自能力なんて、初めて見たわ……」
「私もです……」
呆ける二人。
「なんだそれ?」
「今まで誰も得たことのない能力ってことよ。能力の希少さは上から順に、独自、遺失、希少、一般で、独自は今言った通り。遺失は、過去に何人か取得した人はいるけど、失われて久しい物。希少は、一般よりもより効果が高い物。一般は、そのままね、一般的な能力のこと。わかった?」
「わかったけど、独自能力ってそんなに凄いのか……」
「凄いなんて物じゃないわよ。下手したら、歴史書に名前が載る程のものよ、独自って」
「すげぇなぁ。けど、誰が判断してるんだ?」
「ステイシア様が腕輪を通して教えてくださっているって説が有力ね。まぁ、これで、シュウヤのレベルが上がったのは、この【来訪者】のせいなのは間違いないわね」
「成長率5倍とは、どういうことなんでしょうか?」
「普通の人よりも5倍速く成長できるってことなんじゃないか?」
いうなれば、経験値5倍。
「多分、そうでしょうね。その効果でレベルあがったんでしょう」
「才能値の上がり方が大きいのも【来訪者】の効果みたいですね」
「確か、レベル10までは、レベルアップの時に上がる才能値は1から3って言ってたわね」
「はい、私もそう習いましたし、4以上あがったことはありませんでした」
「3の2倍で6が固定で上がったのか、すげぇな」
「凄すぎよ。この才能値ならレベル5でも通るわよ」
最低だとレベル5で才能値オール5だもんな。
「記憶の掘り起し、ってなんだと思う?」
「思い出すのが楽になる、とかだと思う」
「……じゃ、私が一番最初に言った事、覚えてる?」
「んー? どうだろう。ちょっと待って」
えーと……。
『【来訪者】の効果による記憶の検索を行います』
ん?
なんか聞こえたぞ?
えらく棒読みだったけど。
「……随分、お若い英勇ね、だったな」
一瞬であの時の光景やら、台詞などを思い出した。
「ふむ。結構、使い道が多そうな効果ね」
「聞き流しても忘れないとか、マジで向こうの世界に居たときに欲しかった……」
思わずぼやくのもしょうがない。
そうしたら授業中だってぼーっとしてられたのに。
「この【■運】ってなんでしょうね?」
ディアが訊いてくる。
【■運】で、きょううん、ね。
嫌な感じしかしない。
「運力が変化するなんて、かなりのスキルでしょうね。遺失能力だし」
「半解放とありますが、解放したらどうなるんでしょう?」
「多分、補正値が固定されるんじゃないかな。何に変化するかはわからないけど」
そう書いてあったし。
「せめて、【凶運】じゃないことを祈るばかりね」
「やっぱ、それ気になるよな」
「まぁ、大丈夫でしょう。次は、【?神の声】ですが、これもはてなが付いていますね」
「確か【神の声】って、何れかの神からの加護を賜ると、得るはずね」
「私もそう聞いていましたがはてなが付いていますし、能力に加護がありませんね」
「ということは、これも神様が設定されていない状態なんじゃないか?」
「可能性は高いと思う。シュウヤ殿には神の声は聞こえたか?」
それだけ聞くと、新興宗教の文句みたいだな。
「さっき、思い出そうとしたときにそれらしいのは聞こえたな。中性的な声でかなり棒読みだったけど」
「ふーん。本来の【神の声】ってその神様の声だから男性だったり女性だったりするって話だし、きちんとした神様による加護を得ていない中途半端な能力ってのも確定と考えていいみたいね」
「どういった内容の声が聴けるのか、わかる?」
「ものの本によると、レベルアップしたときとか自分が取得したアイテムの名前とか転職条件を満たしたとか。そういった情報を教えて下さるみたいね」
「……システムメッセージみたいなものか」
「なにそれ」
「あっちにも似たようなのが…いや、似てないっていえば似てないか。近い物があるんだ」
テレビゲームの説明したってわからないだろうし。
「向こうって凄いわね」
「いやぁ、これも想像上っていうか。そんな感じ」
「どんな感じよ。ま、いいわ。で、付与能力だけど」
いいのか。
「全言語というのは初めて目にしました」
ほかにも種類があるってことかな。
「遺失ってあるってことは、昔何人か同じ能力を持ってたのか」
「そうでしょうけど、随分昔のことでしょうね。【共通語読解<コモンリーディング>】くらいなら、持ってる人多いんだけれどね。頑張れば取得できる類だし」
「あれ、能力って頑張ればなんとかなるの?」
「なるわ。私も、ディアも【共通語読解】は、勉強して得たモノだもの」
「勉強ですか……。他にはどんなのあるの?」
こっちでも勉強しなきゃならなくなるのは嫌だな……。
「【格闘】とか【調理】とかね。一般能力は大体が努力すれば身に付くものよ」
「へぇ。希少以上は?」
「それ以上となると、才能あるいは適正がないとダメでしょうね。未だに条件がわかってないものも多いから」
「才能か……。俺、なさそうだしな」
「【来訪者】だけでも才能の塊みたいなものよ。最後は、才能値ね」
「あー、これはなんとなくわかるよ。筋力が力の強さでで器力が器用さ…みたいなものだろ?」
「あら、良くわかるわね。向こうにも似たようなのがあったの?」
「あぁ。似たような物を見たことあるよ」
ゲームでな。
「同じような物があるとは異世界って恐ろしいところなのかしら?」
「いや、平和そのものだって。想像上の英雄になりきって遊ぶってなりきり遊びで似たようなのがあるんだ」
RPGのことですけどね?
「楽しそうな遊びね。ちょっとやってみたいかも」
現役のお姫様が何をおっしゃる。
「機会があれば遊び方教えるよ。あ、そういや、この精神力ってのがわかりづらいんだけど」
テレビゲームじゃないテーブルトークの方だけどな。
この精神力ってのだけ、なんか桁が違うんですけど。
「精神力は、技術や魔術を扱う時に必要になる燃料のようなものの最大値ね。全て使い切ると、気絶一歩手前か下手したら気絶するわ」
「あー。MPみたいなもんか」
基本的には、そこらのRPGと変わらないみたいだな、やっぱり。
で、現在値はわからない、と。
HPもわからないみたいだな。
「大体理解してもらえたみたいね。さて、とりあえずは、ステイシアの窓についてはこんなものね」
ステータス画面はこっちではステイシアの窓っていうのか。
「ふむ。ステイシアって何?」
「神様のお名前よ。≪成長と経験の神≫。それがステイシア様。その腕輪もステイシア様の名前が冠されているのよ」
「成長と経験、ね」
なんとわかりやすい。
それと、この腕輪の名前は、ステイシアの腕輪、でいいのかな。
「腕輪って他に何ができるの?」
神様の名前をもらうくらいだから他にも何か出来そうじゃね?
「そうね。そのまま左手で、これを触りながら《キャッチ・イン》って言ってごらんなさい」
といってテーブルの上のハンドベルを指さす。
キーワードから察するに……。
左手で軽く触れる。
「…《キャッチ・イン》」
キン。
淡い光を放って、ハンドベルが消える。
「おぉ!?」
きた!
魔法っぽいのきた!
「次は、《タブ・アイテム》よ」
や、やっぱり、予想通りっぽいな。
「タ、《タブ・アイテム》……!」
窓の中が、移り変わる。
道具一覧
1:<王家のハンドベル>
王家で使用されているハンドベル。
すげー!
マジでアイテム入れちゃったよ!
「こ、これ、全部で何個まで入るんだ!?」
興奮を抑えられん!
さっきまでの画面の切り替えはパソコン感覚でやってたからな!
ここまで、魔法っぽいこと起きると興奮だってしちゃうってばよ!?
「お、落ち着きなさいよ。全部で20個ね。他の道具は纏められないんだけれど、お金だけは纏めれるから、財布として使う事が多いわ」
呆れた様子で教えてくれた。
「財布要らずか! いいな! 出すのはどうやるんだ!?」
見れば、ディアも呆れた顔で冷ややかな目線を送ってきてる。
だが、そんなのは気にしない!
テンションあがるわー!
「だから、落ち着きなさいって! 出したいアイテムの名前の後に《リリース》で出るわ。お金なら枚数を指定して出せるけど、他のアイテムは一つずつしか出せないから注意して」
「わかった! <王家のハンドベル>《リリース》!」
キン。
そして、淡い光を放ち、手にハンドベルが現れる。
「おお、魔法すげー!」
「いい加減、落ち着きなさい!!」
アリサの横にいるディアも驚く程の声で怒られた。
「あ、はい……」
一気にテンションが下がる。
仕方ないじゃないか。
魔法ぽかったんだもの。
「はぁ。注意点は、道具一覧で表示されてる名前を言わないと実体化しないこと。他人が所有しているものは勝手に入れれないこと。腕輪を着けた方の手じゃないと収納できないこと。ぐらいかしらね」
「了解した。いやぁ、いいもん見れた!」
「それじゃ、客間の用意は出来てるから、そこで待ってなさい」
「え? いや、いいけど?」
なんかあるんですか。
「その後、お父様とお母様に謁見してもらうからそのつもりで」
「ちょっ、アリサの両親って、この国の王様と王妃様だろ、いきなり謁見かよ!?」
「元々、予定されてたことよ」
しらっと言って、ハンドベルを手に取り、チリンと鳴らす。
「いや、俺、聞いてないし!?」
「言ってないし」
うわ、ひでぇ!
「お呼びですか、アリサ様」
なんて、話してるとノックの後ドアが開いて、メイドさんらしき人が入り、軽くお辞儀した。。
フリルとかなんも付いていないシックなメイド服だな。
「この方を、第3客室にお通ししてあげて。謁見準備が出来るまでのお世話もお願いね」
「かしこまりました。では、こちらに。ご案内致します」
ドアを開けて一礼するメイドさん。
「は、はぁ」
すげぇ完璧なリアルメイドだ。
肩口までの濃い赤紫の髪に、小振りにまとまった顔の作りが可愛らしい。
ちょっと年下かな?
アリサたちよりも背が大分低そうだし。
「ほら、さっさと行きなさい」
「あ、あぁ……」
思わず、ふらふらっとメイドさんの元へ。
「それじゃ、シュウヤのこと頼んだわよ、ミリア」
「はい、アリサ様」
そして、そのままメイドさんに連行されて部屋を出て行く俺。
リアルメイドの破壊力ってすげぇ。
すげぇ、しか言ってない気がするけど、すげぇわ。
やけに長くなってしまった割に説明に終始してますねぇ。
次話以降もまだ説明回ばかり。
はやくバトってみたいもんです。
さっそくの評価ポイント&お気に入り登録ありがとうございます!
批判感想その他もろもろありましたら是非くださいませ。
では、また次話にて。