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一話

誤字脱字多数。気にしないでね。


テレビを観ては思うことがある。


あぁ、もう別次元に生きているんだな……。


昔、いつも無駄に振りまいていた笑顔は、今やとても遠い存在となってしまった。

運という要素もあるだろうが……それは、彼女が頑張った結果の証であり、それに見合う舞台が用意されただけ。それだけ。


その活躍を喜ばしく思う反面、昔の事を少し思い出しては、寂しく思ってしまうのだ。

同じ時を歩みながら、全くの違う世界に行ってしまった。近くて遠い異世界に……。


だから、僕は……。





「なぁ、長澤」


昼休み。そう馴れ馴れしく僕に声をかけてきたのは、同じクラスの男子だった。


「……なに」

「実はさ、少し聞きたいことがあるんだけどさぁ」


内心、またかとため息をつく。ニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべる目の前の男子が非常に胸くそ悪い。

どうせ、次に言う言葉くらい簡単に予想がつく。


「お前、あのアイドルの佐山 夏帆とは幼なじみだって本当か?」


やっぱりか。

耳元で小さくそう囁いてくる言葉に辟易する。

ええい、肩を組んでくるな。馴れ馴れしい。


「……そうだけど、それがどうしたって言うのさ」

「いやぁ〜、是非とも紹介してくれないかと」

「嫌だ」


ハッキリと拒否の姿勢を示した。こういう輩はしつこく、そして陰湿なんだ。


「いいじゃないか。友達のよしみでさ」


いつの間に友達になったのだろうか。

今までそんな素振りすらなかったではないか。寧ろ、クラスメイトに呼応する形で、僕を無視する姿勢ではなかったか。

どうせ、アイドル佐山 夏帆との関係を知って、自分も関係を持ちたくて取り繕ってきたんだろう。

その図々しくも見え透いたゲスい下心には怒りすら覚える。

何が友達だ。ただのパイプに過ぎないんだろうが!


「止めてくれる。いきなり友達面するの。下心が見え見えだよ」

「なっ!」

「そういうことだから」


そう言って、僕はその場から立ち去った。

後ろから舌打ちとクソが!というテンプレートな捨て台詞が聞こえた。

なに、よくあることだ。





僕には友達と言える存在が少ない。

いや……正しくはいないだ。

もとより、独りを好む孤立主義だったし、社交的でもない。だから、友達という存在を求めたこともない。

よく、人間は一人では生きていけないなんていうけど、それは今の社会体系が、経済的にそうであるというだけで、人間個体としての社会的、精神的、肉体的といった点では一人で生きていけると考えている。孤独死や、戸籍記録問題。人関との関係を断ち、一人死んでいく。これこそいい例だろう。

まあ、何が言いたいかって言えば、僕の周りには人がいないってことだ。

簡潔に言えば避けられている。

無視というイジメだろう。

そう、クラスではいないような存在として扱われている。

だけど苦痛ではない。寧ろ家にいるよりは快適だ。

僕がドMだからという訳でないことを言っておく。だれにも邪魔されないからだ。

しかしながら、こんな僕でも部活というものには所属している。面倒なことに、我が校では部活所属が絶対なのだ。

ガラリと開けたその部屋は、文芸部の部室。

僕は文芸部に所属している。

誰もいない部室に入ると、窓の片側だけにカーテンを走らせる。日を遮り、影を作ったところにパイプ椅子を持ってきて、座って静かに本を読み出す。

静かな部室。

この文芸部の部員は、殆どが幽霊部員。来た試しがない。

運動部の声、ブラスバンドや軽音部の少々ズレた音楽をBGMに、小説を読みふける。

何という楽園。

あんな子供じみたクラスメイト共や、暴君な両親に糞で下劣な兄貴がいないこの空間は、世界に唯一の癒やしの空間だった。

しかしながら、幽霊部員が殆どのこの文芸部にも例外というのがいる訳で……。


「やっ、長澤!」


入ってきたのは一人の女子。

文芸部というより陸上部といった感じの、ショートカットで活発そうな彼女は長谷部 深春。

その印象通り、本を読むより体を動かす方が好きな体育会系である。

何故、文芸部に入部したのかは知らない。知りたくもない。

ただ、こうも簡単に崩れてしまった楽園が残念で仕方がなかった。


「溜め息なんか吐いちゃって、幸せが逃げちゃうよ?」


お前の所為だよ。とは言えず、背中をバシバシと叩かれる。痛い。


「では、僕はこれで帰るから」


帰っても良いことはないけど、この壊された楽園なんかに居たって何にもならない。


「あれ?帰るの?」

「…………」


その疑問に僕は何も語らず、部室を出た。

長谷部も同様に部室出る。


「ねぇ、帰るんなら寄り道しない?いい喫茶店見つけたんだ」

「どうぞ。お一人で言ってください」

「寂しいじゃない」


そうだろうか。ゆっくり出来るじゃないか。

一人でいるのは寂しいことなのだろうか。


「一人は寂しいですか?」

「うん、寂しい」

「そうですか。僕は落ち着きます。だから一人が好きです」


――ですので、僕を放っておいてください。


そういうと、長谷部は目を丸くして驚いていた。

まるで信じられないようなものを見たか、珍獣でも見たかのようなリアクションに少しカチンときた。


「何ですか。ポカンとして」

「本当、寂しい人だなって」

「……失礼ですね。あなた」


僕が寂しい?

全く、失礼だ。笑わせてくれる。

実際には笑わないけど。


「あのさ、もしかして私と居るのも……嫌?」

「もしかしなくても嫌です」


隠したりオブラートに包まず、バッサリ言い捨てる。


「あはは……そっかぁ、ちょっとショックだな」


長谷部は少し影の差した笑顔を浮かべた。


「でも……うん。じゃあさ、私と居るのを嫌って言わせないようにするよ」


その強引さに、少し頭が痛くなってきた。


「……だから、僕は一人で居たいんです。放っておいてください」

「嫌」


ああもう!この人は!


「放っておけないよ。一人でいるほうが幸せなんて……寂しすぎる」


勝手に人の幸せを決めるな!

人の幸せを不幸とするな!

僕を憐れむな!

心の中で叫ぶ。

だから、こういう善人ぶった人は嫌いなんだ。

人の心を土足で汚していく。その癖、自分は救世主と勘違いする。

自分の行いに陶酔する厄介者だ。


「あなたは自分が幸せだと思ったことを押し付けているだけです。それが相手にとって幸せとは限らないことに気付かないのですか」

「それは……!」

「あなたはただの独善者です」


長谷部はその場で立ち尽くし、悔しそうに下唇を噛んだ。

その姿を一瞥して、僕は一人帰ろうとした。

しかし、制服の袖を掴まれて動けなかった。


「まだなにか?」


俯いて僕の袖を掴む長谷部は、らしくないほどにしおらしくなっていた。


「君に独善者と思われてもいい。だから、お願いだ。今日は私と少し寄り道して……。嫌ならすぐに帰ってくれてもいい。だから、お願い……」


本来の僕なら、どんな状況だったとしても嫌だと断って、関わりを持たなかっただろう。

でも、この時は何かが違っていた。らしくない長谷部のしおらしい姿を見たからかもしれない。


「……少しだけです。すぐ帰りますから」


僕はOKしてしまったのだ。

ごめんなさい。

誤字脱字多数でごめんなさい。

もう一つの連載どうしやがったというのは無しでお願いします。

全10話予定です。

どうなるか分かりません。

何分、不定期更新ですので……。

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