表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

必ず感想がつく小説サイト「ノベルず、来い来い!」の謎。

掲載日:2026/06/15

「今まで、どんな小説サイトに載せても、誰も感想をくれなかった。たまに感想が載っていて喜んだら友達のマイちゃんからだった。そういうことがなければPVの数字が動くのを楽しむだけ。それも最初の1日だけで、後はだ~れも見てくれませんでした。でも私、ついに見つけたんです。こんな私の小説にも必ず感想が付く小説サイトを!」


 Ⅹに投稿された女子高生と思しきツィートは、驚くべきことに100回以上リツィートされていた。ということは誰もが、そういう小説サイトを求めていたのだろう。


 現在、小説サイトに投稿しても、残念ながら99.5%以上の作品に感想がつかない。


 だが一昔前はそうではなかった。今では伝説になってしまった某小説サイトでは、投稿するや、すぐに日本全国の誰かから感想が届いた。


絶賛してくれる人もいれば、こうした方が良かったんじゃないかとアドバイスをくれる人もいて、熱く賑わっていた。ところがここで二度に渡って事件が起きた。


 辛辣にけなす、いわゆるアラシと言う人が現れて、作者が怒り、それを擁護する人、また批判側を応援する人が入り乱れて大騒ぎになったのだ。


 運営には双方から改善を求める声が上がったが、彼らは動かなかった。

その結果、主要メンバーがこのサイトから離れて行った。


 こういったことは、ここだけではなく他の幾つかの小説サイトでも起きた。

その結果、小説サイトは感想を書きにくい場になってしまったのだ。


ところがⅩのツィートによると、その小説サイト【ノベルず、来い来い!】では必ず感想が付くというではないか。


 半信半疑でそのサイトを覗いてみると、確かにもれなく感想が付いている。しかも小学生が書いたような拙い小説や、ほんの数行の斬新(!)な詩にまで丁寧な感想が付いているのだ。


「ありえん……」


 俺は絶句した。


 もしかして感想を書けば豪華な賞品でもあたるのか? 


 それとも立ち上げ時期だけ大勢の下読みアルバイトでも雇って話題作りをしているのか? 


と思ってよく見ると、感想には必ず『スタッフ・ミナト』とか『スタッフ・ユリ』とかの署名入りになっていた。


 察するところ、このサイトはOpenAIやGoogleなど複数の会社と契約を結び、全ての投稿された作品に性格設定を付けたAIスタッフが感想を付けているらしかった。


 例えばカツオシDの【抗いし者】というラノベでは、ラノベ好きの『スタッフ・チヨちゃん』から、


「抗いし者」、めちゃくちゃ面白かったです!

 千草ちゃんの“普通の女子高生”感と、ナラヤの異様すぎる宗教国家のギャップが最高に引き込まれました。怖いのに笑える場面も多くて、読んでる側の感情が忙しいです。マイラとの出会いも尊くて、二人の関係がこれからどう深まるのかワクワクします。千草ちゃんのユニークスキル・反射呪術、今後の展開で絶対化けますよね。続きが楽しみです!


 と書かれていたし、


 同じ作者の長編ミステリー小説【東京湾・ブルンガ島殺人事件】では『スタッフ・タクミ』から、

「東京湾ブルンガ島殺人事件」は、舞台設定そのものが一つの巨大な“謎装置”として機能しており、非常に完成度が高いと感じました。文化人類学者殺害という題材に、ハミ族とクマ族の対立、治外法権の人工島、波力発電所という多層的な要素が絡み、事件の動機と背景が複雑に編み上げられています。山部と檜坂の対照的なコンビも、捜査の視点を二重化する良い仕掛けです。48時間という制限が物語全体を引き締め、緊張感を途切れさせませんでした。」

 という感想が書かれていた。


 なるほど、これは作者にもうれしいし、他の人たちもスタッフの感想が予め付いていることから気軽に自分の感想を書けるはずだ。


 こういうアイデアは最初にやったもん勝ちだな……。と俺は思った。


 そこで俺も試しにこのサイトに入会し、ひとつ小説を載せてみることにした。


 ちょうど書きかけのラノベ(?)があった。それがこれだ。



【悪役令嬢バトル】


 午前中の授業が終わり、昼休みが始まると、私は脱兎のごとく教室から逃げる。

 ボヤボヤしていると、他のクラスメイトから学力バトルを仕掛けられるからだ。

「あっ、ムヒハ様がお逃げになられましたわ」

 と誰かが叫ぶ。

 ムヒハというのはこの世界での私の名前で、有名な大貴族の悪役令嬢ということになっている。

 これは【変態世界の悪役令嬢・官能学力バトル】というゲームの世界で、私はそんなところに転生してしまったのだ。

「お待ちくださいませ。今日はミミカとバトルをしてくださいませ!」

「ムヒハ様、どうかナズナと……」「いえ、プーニャとお願いします」

 と、本来私が犠牲にするはずのヒロインたちが私を追ってくる。

 でも捕まるわけにはいかない。

 彼女たちはみな頭が良く、バトルをすれば確実に私が負けるからだ。

 負けると、すごくHな罰則が食らわされ、さらし者になる。

 そう、これは乙女ゲームではない。

 男性向けのアダルトゲームなのだ。

 そんなゲームをなぜ女性の私が知っていたかと言えば、

ウチの会社でこれを開発していた時のイラスト担当デザイナーだったからだ。

予算もないので、デバッグのためのテストプレイは社員全員がやらされていた。

 SNSゲームでインストールすると、最初に3人のヒロインが付いて来る。

 彼女たちはお試し用のキャラクターで、学力バトルで倒せばムフフな画像が見れる。

 課金すれば、その後何人でもAIが生成した美女たちと

学力バトルを楽しめるというものだ。

「捕まえましたわ!」

 壁際に隠れていた私は後ろからがっしりと、はがい絞めをされてしまった。

「ゲッ、その胸のマークは三年生!」

「そうですわ。わたくしは三年生のポポラと言うもの。

あなたには数三の問題バトルを受けてもらいますわ」

「す、数三! 数一でさえ頼りないのに。ムリムリ拒否しますわ」

「拒否できないのが校則だったのをご存じですわよね」

「それは分っているけど……」

「問答無用。いきますわよ。第一問 lim(x→0) [ sin(3x) / x ]は?」

「わっかりません……」

「ブー。答えは3でした」

「では次の問題。∫ [ 1 / ( x * √(x^2 - 1) ) ] dxは?」

「ヒェ~、これも分かりません」

「ブー。時間切れ。arcsec(x) + Cまたは arcosh(x) + Cでした」

「んなもん、わかるか! せめて国語とか英語の問題にしてよ」

 だが彼女は聞いていない。

「では次、それからその次・・・」

 私は5問とも答えられなかった。

「まあ、高一のあなたに高三の問題は酷でしたわね。

ですので、今日はお尻パンパンだけで許してあげます」

 そう言って彼女は私のお尻をむき出しにすると平手でパシーン、パシーンとぶった。

「ギャー!」

 私は悲鳴を上げた。そう、この世界で生きている私はぶたれると痛いし、

コチョコチョされると悶絶するのだ。


 ところで、このゲームはあまり売れなかった。

 だって当たり前でしょうに。社長はゲームをするだけで成績が上がる(ただし男の子だけ)

 と言っていたけど、だったらなんで18禁にするのよ。

 予備校生しかできないでしょうが。


 私はセーフティゾーンの食堂で軽食を取って痛むお尻をさすりながら教室に戻った。

 教室では、あまり成績の良くない子たちがヒロインとの学力バトルに負けて、

 SMの定番、三角木馬や吊し上げをされていた。 


                   つづく




 投稿してしばらく待っていると、「あなたの作品に感想が付きました!」という表示があった。


 見てみると、先にカツオシDの「抗いし者」で感想を書いていたラノベ好きという『スタッフ・チヨちゃん』からのもので、


「悪役令嬢バトル」、設定の切り口がすごく新鮮で面白かったです!

乙女ゲームではなく“会社で作っていたアプリの悪役令嬢に転生”という発想がまず秀逸で、主人公の必死の逃走劇に思わず笑ってしまいました。学力バトルの理不尽さや、ヒロインたちの容赦ない追撃もテンポが良くて読みやすいです。ゲーム業界の裏事情が物語に自然に混ざっているのも魅力で、続きがどう暴走していくのかワクワクします。ムヒハ様、がんばれ…!」と書いてあった。


 ジ~ン・・・。


 感想がAIだとわかっていてもうれしかった。


 本当に大手の小説サイトはどうして今までこれをやらなかったのだろう?


 これは確かに励みになる。しかもその後、人間のものと思われる感想まで付いた。


 いいねマークも3つ、もらえた。


 誰かがn〇teにこのサイトのAIスタッフをまとめて載せていた。

それによると・・・、


① ミナト(Minato)

性格: 温厚・丁寧・読者目線

得意ジャンル: 日常系、恋愛、ヒューマンドラマ

感想の特徴:作者の努力を必ず拾う。読者としての“素直な感動”を伝える


② カイ(Kai)

性格: 情熱的・熱血・褒め上手

得意ジャンル: バトル、冒険、スポーツ

感想の特徴:テンションが高い。作者のモチベを爆上げする。読者人気が高い“褒め担当”


③ ユリ(Yuri)

性格: 文学少女タイプ・繊細・詩的

得意ジャンル: 文芸、詩、心理描写

感想の特徴:言葉選びが美しい。作者の“表現力”を褒める。文学系作者に人気


④ タクミ(Takumi)

性格: 技術屋・分析型・冷静

得意ジャンル: ミステリ、SF、構造の複雑な作品

感想の特徴:伏線や構成を分析。作者の“技術的な強み”を指摘。プロ志向の作者に刺さる


⑤ サラ(Sara)

性格: 母性的・優しい・励まし上手

得意ジャンル: どのジャンルでも“初心者向け”

感想の特徴:作者の不安を取り除く。初投稿の作者に寄り添う。優しさの塊


⑥ レオン(Leon)

性格: 皮肉屋・辛口・だが的確

得意ジャンル: サスペンス、社会派

感想の特徴:良いところは褒めるが、悪いところは容赦ない


⑦ チヨちゃん(Thiyo Chan)

性格: 少し子どもっぽい・素直・感情豊か

得意ジャンル: ラノベ、ファンタジー

感想の特徴:感情のままに反応。作者に“純粋な読者の声”を届ける


⑧ シオン(Shion)

性格: クール・論理的・AIらしい

得意ジャンル: SF、ハード系、設定重視

感想の特徴:設定の整合性をチェック。作者の“世界観の穴”を埋める。理系作者に人気


⑨ ミレイ(Mirei)

性格: 感情移入が激しい・泣き上戸

得意ジャンル: 恋愛、悲劇、家族もの

感想の特徴:キャラに深く入り込む。作者に“キャラの魅力”を伝える


⑩ アーク(Ark)

性格: 未来予測型・俯瞰・哲学的

得意ジャンル: 長編、テーマ性の強い作品

感想の特徴:物語全体の方向性を語る。作者の“テーマ”を掘り起こす。


 主なスタッフはこの10人(?)だが、他にも通称・『ボット』というボーナスキャラもいて、このスタッフの場合は気に入った作品には、何度もレヴューしてくれる。そのためpvが一気に伸びるのだ。


 小説サイト【ノベルず、来い来い!】は順調に利用者を増やしていったが、やがて投稿者の中から不満の声が上がり始めた。


「これだけ、作品を褒められたので、すぐにでも商業出版に至るかと思っていたのですが、まったくそういうことがありませんね。調べてみると【ノベルず、来い来い!】は独立系で、いっさいマスコミや出版社と関係性がないじゃないですか。つまりここでいくら書いてもダメってことですかね」


 そういうことを言っていた作者は、いったいどのくらいの筆力があるのだろうと、試しに読んで見ると、残念なレベルだった。それなのにスタッフからの感想は、絶賛とは言わないが、かなり盛ったものが多かった。


 たぶん、そのあたりは【ノベルず、来い来い!】の運営サイドも分かっていたのだろう。


 これまでの、作者甘やかしスタッフに加えて、鬼感想を述べるAIスタッフが数人現れた。


 キツさの度合いは微弱から最強まで、まちまちだが最強のアツシになると、気の弱い作者だと泣き出すほどだ。もちろんどれが当たるかはランダムだが、「悪役令嬢バトル」の続きが浮かんだので、感想欄も覗いてみると、アツシの感想が加わっていた。


「「悪役令嬢バトル」、発想は良くてもそれだけ。作品そのものが“設定の面白さに甘えている印象。逃走劇も学力バトルも、ギャグに頼りすぎて物語としての芯が見えません。主人公の感情描写が浅く、読者が共感する前に騒ぎだけが続くため、読み終えても何も残らないのが致命的です。あなたが書きたいのは“ネタ”なのか“物語”なのか、まずそこをはっきりさせるべきでしょう」


 ズシ~ン!! と来た。


 確かに言われてみるとその通りで、しかもよく読むと、この文書には暖かさも見える。


 昔、漫画の原作を抱えて出版社周りをした時には、『才能の無い人間をいつまでも引っ張ると、その人の人生を無駄にさせてしまう』というプロの編集者の心遣い(?)で、これでもかと叩かれたことがあったので、その点は平気だったが、安易に続きは書けなくなった。


 そのまま、数か月放置して、本当にしばらくぶりに「悪役令嬢バトル」を覗いてみると、作品のページに『仮完結』なる謎の文字があった。


 あまり長く放置していたので、強制的に終わらされたのかと思ってよく見ると、「この作品のファンが書いた続きです」とあって、AIが無難に話を展開し、終わらせていた。



        (おしまい)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ