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嵐の夜

異世界物の小説です。

まだまだ至らないところもあるかと思いますが、気になった部分はなんでも言ってください。

皆さんの意見も含め、よりよい小説を作る努力をしていきたいと思います。

王都、エストニア。昼から降り始めた雨はやがて風を纏い、嵐へと変わっていった。昼から夜へと時が経つにつれてその勢いは頂点へと達し、王都に暮らすすべての者は空を見上げ、家へと籠った。


嵐吹き荒れる夜、誰もいないはずの広場に十数人の騎士達が小さく円を作り集まっている。

全員が全員、鎧の上にマントをはおり、吹き荒れる豪雨の中で言葉を交わす。外へ出るものなど誰もいない夜、隣の者の声を聞き取るのも困難な嵐の広場は、騎士たちにとって格好の合流地点となった。

何故ならば、彼らには魔法という人の理解を超えた力があるからだ。円の周りに小規模な竜巻を作り、その中で会話を始める。

嵐の中にできた無風の空間で彼らの会話は始まった。


「剣は?」「はっ、ここに」


円の中から一人の騎士が懐から布を巻かれた剣を取り出し、柄の部分だけ布を外し、全員に見せる。少しの汚れもない柄を見て、一同に頷いていく。


「術式結晶は?」「こちらです」


今度は別の騎士が淡い黄色の光を放つ水晶のようなものを取り出し、また全員に見せる。


「よしっ。まずは、ここに集ってくれた者全員に礼を言いたい」


確認を終えるとその中の一人、比較的小さい人影が全員に向け頭を下げた。

その突然の動きに目を見合わせる者、返すように頭を下げる者、彼らは様々な対応を取る。

小柄だが、頭を下げた人物はこの集団の中のリーダー格のような存在だ。そんな人物にいきなり頭を下げられ、困惑するのも無理はない。

だが、その中において一番体躯の大きな騎士が一歩踏み出し、口を開く。

「クレア殿、礼を言われるのはまだ早いです。我々はただ集ったのではありません、貴方の意に賛同しその目的を果たすために集ったのです」


低く、静かな言葉だった。それなのにその言葉の中にはクレアと呼ばれた者に対する敬意と、クレアの軽率な礼に対しての諌めの二つの意志が込められていた。皆、最初の礼の言葉は嬉しかった。それでも、そこで達成感など抱けるはずもない。それほどまで彼らはここに集ったことに、全てを掛ける信念を持っていた。

大柄の男が放った言葉に残りの者たちも自分たちも同じ意見だと言わんばかりに頷く。


全員の乱れない心、揺れることのない強固な意思、そして何よりも深く繋がれた絆。それらすべてを確認したクレアは瞳に涙が浮かびそうになるのを堪えながら、意を決したように口を開く。


「そうだったな……ブラムス殿。我らは大いなる理想の為にここに集った。故に我らが思いは一つ、我らが命は一つ。誰一人として欠けることは許さない」


言葉を紡ぎながら自らの懐へ手を入れ、小さな玉を取り出す。


「我らが願いは唯一つ。祖国エストニアの為、我らは今羽ばたく!」


天高く掲げられた小さな玉は極光を放ち全員を包む。

嵐を裂き、夜を吹き飛ばすかのような光の後には誰の姿も残ってはいなかった。





それが物語の始まり。

最初の夜――『嵐の結集』

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