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関西弁の銀髪ハーフ美少女が俺を照れさせたいらしいが照れてるのはいつもキミだ  作者: 夜天 颯


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43/43

43. 寝る場所決めるだけで、なんでこんな空気張るん

コテージは、思っていたより広かった。


 木の匂いが少しする室内。

 リビングがあって、簡単なキッチンがあって、奥に寝室が二つ。窓の外には芝生と、少し先に川が見える。


「おおー」


 最初に中へ入った土井海斗が声を上げた。


「普通にテンション上がるな、ここ」


「子どもみたいやな」


 白銀ルナが言う。


「こういうのは上がるだろ」


「それは分かる」


 七海も小さく笑った。


 でも、その空気が長く続いたのは数秒だけだった。


「で」


 七海が何でもない顔で言う。


「寝る場所どうする?」


「……」


「……」


「何で一気に空気変わるんだよ」


 土井が本気で引いた声を出す。


 湊は小さく息を吐いた。

 絶対に来る話題だとは思っていた。だが、到着五分で来るとは思わなかった。


「普通に分ければええやろ」


 白銀が言う。


「それが一番平和や」


「そうだね」


 七海が返す。


「私もそれでいいよ」


 美羅李も静かに言う。


「……」


「……」


「今の“それでいい”の圧が全然よくないんだけど」


 土井が真顔で言う。


 結局、一番普通な形に落ち着いた。


男子部屋 湊・土井

女子部屋 白銀・七海・美羅李


 平和だ。

 かなり平和な決め方のはずだ。


 それなのに、決まったあとも空気だけはなぜか張ったままだった。


「何その空気」


 土井がまた言う。


「まだ俺、何もしてないんだけど」


「それ、今日何回目や」


 白銀が言う。


「まだ二回目」


「少ないな」


 七海が笑う。


「増やしたくないけどな」


 土井がため息をつくと、美羅李が少しだけ口元を緩めた。


     ◇


 荷物を置いたあと、次は役割分担になった。


「買い出しどうする?」


 湊が聞く。


 夕飯のバーベキュー用の食材は、近くのスーパーで買う予定になっている。


「うちは行く」


 白銀が即答した。


「早いな」


 土井が言う。


「そら行くやろ」


「私も」


 七海が続く。


「じゃあ私も行く」


 美羅李も言う。


「……」


「……」


「じゃあ誰が残るの?」


 土井が冷静に聞いた。


 それはその通りだった。


「俺と土井が残ればよくない?」


 湊が言う。


「いや俺は買い出し行く」


 土井は即答した。


「この空気の中、お前一人残してどうすんだよ」


「それはそれで失礼やな」


 白銀が言う。


「別に何もせえへんし」


「それが一番信用ならない」


 土井の返しに、七海が吹き出した。


「土井くん、順応早いね」


「嫌でも分かるようになるだろ、これ」


 結局、買い出しは


行く組 湊・白銀・土井

残る組 七海・美羅李


 になった。


「何でそうなったんやろな」


 白銀が少し不満そうに言う。


「二人きりにしないためじゃない?」


 七海がさらっと返す。


「っ……」


「……」


「福原さん、それ今言う?」


「違った?」


「……」


「……」


「そこ、否定できへんのやな」


 白銀はそっぽを向いたまま、小さく言う。


「うるさい」


     ◇


 スーパーまでの道は、林の横を通るゆるい下り坂だった。


 昼の光はまだ強いのに、木陰に入ると少しだけ風がある。


「なあ湊」


 土井が前を向いたまま言う。


「何」


「俺、今かなり重要な役じゃない?」


「何の」


「緩衝材」


「自分で言うんだ」


「言うよ」


 その少し前を歩いていた白銀が振り向く。


「何こそこそ話しとるん」


「男同士の話だよ」


「怪しいなあ」


「怪しいのはそっちだろ」


「何でや」


「湊の横、自然に歩きすぎ」


「……」


「……」


「それは今言わんでええやろ」


 白銀はそう言ったものの、歩く速度は落とさなかった。


 湊の隣。

 前ならそこにいるだけで意識しすぎて、逆に離れていたかもしれない。


 でも今は、しんどくてもそこにいたかった。


「白銀さん、今日ちょっと元気だね」


 湊が言う。


「……それ褒めてる?」


「うん」


「ならええわ」


 即答してから、自分で少しだけ止まる。


「……いや、あんまよくない」


「どっち」


「分からん」


 土井が横で笑った。


「大変だなあ」


「他人事みたいに言うな」


 白銀が返す。


「他人事だからな」


「そこは否定しろや!」


 そのやり取りの途中で、湊はふと思う。

 白銀は前よりちゃんと笑うようになった。照れるし、慌てるし、相変わらず分かりやすい。でも、それでも前に出ることをやめなくなった。


 それが、少しだけ嬉しかった。


     ◇


 スーパーでは、バーベキュー用の肉と野菜、飲み物、紙皿、炭、マシュマロまで買うことになった。


「肉多くない?」


 湊が言う。


「キャンプやで?」


 白銀が返す。


「このくらい要るやろ」


「白銀さん、明らかにテンションで入れてるだろ」


 土井がカゴを持ちながら言う。


「雰囲気や」


「便利な言葉だな」


 その横で白銀は焼きマシュマロ用の袋を手に取った。


「これもいる」


「いるんだ」


 湊が言う。


「いるやろ」


「誰が焼くの」


「……うち」


「へえ」


 その“へえ”が何か少し意味ありげに聞こえて、白銀がむっとする。


「何」


「いや」


「前、りんご飴で苦戦してたなって」


「それ今言う!?」


 白銀が半歩詰める。


「関係ないやろ!」


「串系に弱いのかなって」


「違うわ!」


 土井が吹き出した。


「湊、お前ちょいちょいそういうとこあるぞ」


「何が」


「何でもないなら、一生そのままでいろ」


「ひどいな」


 でも、その言い方の意味を湊はちゃんと理解できていない。

 白銀だけがそれを分かって、少しだけ顔を赤くした。


 買い物を終えて外へ出る。


 両手に袋を提げた土井がぼそっと言った。


「これ、一日目の昼でこの密度なんだよな……」


「今さら気づいたん?」


 白銀が言う。


「最初から気づいてるよ」


 土井は真顔で返した。


「ただ、想像よりだいぶ濃い」


 それには、湊も否定できなかった。

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