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アンノウンの道標〜旅は道連れ宇宙人も道連れ〜  作者: MeはCat
〜第一章〜 未知の足跡
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三人の狩人

「死にたい奴だけ前に出ろ」


「ちっ……なんだあの硬さ尋常じゃない。野郎共、撤退だ!! あんなの勝てる訳がねぇ!!」


「…………逃げられちゃった」


 プロレスならここからでも素早い動きで追撃をかける事も出来るだろうけど、僕は耐久特化だからなぁ。低酸素状態程じゃないとは言え動きは鈍重のままだから、直ぐに逃げられてしまうだろうね。


「ここら辺は誰も居ないだろうし合流した方が良いかな〜思ったより稼ぎが少ないや」


 この手の狩りはある程度火力を出す手段が整っているプロレスの専売特許だな。そう思うと僕も防御面だけじゃなくて火力面も強化したい所だけ――――――――


 ガンッと何かを盾で弾く。飛んできたのは緑色の矢だった。その矢はブヨブヨしていて、まるでスライムのようだった。その方向へと見やるが、誰も居ない。まさか、この矢を反射して当ててきたとかじゃないよね。


「…………っ!! 本当に跳ね返ってるじゃん」


 なんとか盾で防御しているけど、もし急所にでも当たったらダメージ入りそうで嫌だな。一体どこのPKか分かんないけど、筋のある奴も居るって事か。


「どうした!! 物陰に隠れて矢を撃ってるだけか!! そんなんじゃ鎧の隙間にすら当たらないぞ!!」


 撃たれ続けるのも癪だから、僕は敵に発破をかける事にした。これで少しでも顔を出してくれれば位置を特定出来るんだが、そう簡単に顔を出し――――――――


「………顔どころか全身出してくれるとは思わなかったよ」


 その者はフードを被っているが女性プレイヤーで、プレイヤーネームは百々目鬼だった。そして最も驚いたのは、プレイヤーネームが赤く染まっていないという事。つまり、このプレイヤーはPKでは無い。


「すみません、貴方がPKだと思いまして」


「……あ〜先客が居ただけか」


 どうやら百々目鬼はこのエリアでPKKをしていた同業者で、先程の跳ねる矢を利用して、死角からPKを狩ってたらしい。それで僕はその狩場に入ったからPKと勘違いしたと……いやPKかどうかはプレイヤーネーム見れば分かると思うけどな。


「私は足音で他のプレイヤーを探知して矢を放っていただけです。ですので、こうして顔を出すまで貴方がPKかどうかは分かりませんでした」


 なるほど……見えないのは自分も同じで、音で位置を把握してただけなのか。うっかり一般プレイヤーも狩ってしまったら、どうするつもりだったんだろうな……。


「…………てへっ」


「「てへっ」じゃないが……まぁいいや、猛スピードで尚且つ鬼の形相で他のPKを狩ってるプレイヤーを知らないか? 僕の仲間なんだけど」


「それって……あれですか?」


「あぁ……間違いなくあれだな」


 遠目で大量のPKが惨殺されているのが見える。PKの悲鳴と金切り声が空間を響かせ物語のヴィラン顔負けの悪人面をしながらPKを蜂の巣へと変貌させていく。

 確かに鬼の形相とは言ったが、誰が鬼になれって言ったんだよプロレス……完全に殺人鬼の風貌だよ?


「ごめんなさいごめんなさいPKなんてもう馬鹿な事はしませんからどうか許し――――――――

「〈蒼空穿〉」


 命乞いをするPKをプロレスは容赦なく殺す。獲物と認識した一切合切を抉り取り慈悲無く苦痛と恐怖を与える。


「――――――許す許さないじゃねぇんだよ。お前らがその道を歩んだって事はオレに身体をグチャグチャにされても良いですよって意思表示なんだよ。なぁおい、その首と腕と脚と眼球と舌と心臓を潰させてくれよ!! ちょっぴりで良いからさぁ……オレに貫かさてくれよ!!」


 その者は血を求めていた。闘争による渇望を求めていた。そう、そもそも彼は地球人ではない。彼はミュータン人であり、戦闘というただ一点において他の宇宙人を遥かに凌駕していた。自他共に認める戦闘民族。それは単純に戦闘において強いというだけではなく、心の底から戦闘を愛している宇宙人でもあったのだ。


「やい、そこのボケナス!! 流石にやり過ぎだ!!」


「………ん? あ、兄弟か」


 やっと正気に戻ったのか、声をかけたらいつものプロレスへと戻っていた。声をかけた瞬間に詰め寄られて首を刎ねられるんじゃないかと危惧していたが、特にそんな事は無いようで安心したよ。


「お、百々目鬼も居るのか!! さっきぶりじゃねぇか」


「知り合い?」


「はい。リスポーン地点で絡まれました」


 そのゲッソリとした顔、余程うざ絡みされたんだな。それならプロレスにフレンド申請を教えたのもこの人なのかな。


「全く、貴方のようなミュータン人のせいで、宇宙人全員が凶暴だって思われたらどうするんですか」


「え、オレ凶暴なの?」


「先程の行為を振り返ってみろよ……って、その言い分だと百々目鬼も宇宙人?」


 このゲームは地球産だから地球人が多いとは思ってたけど、案外他の宇宙人もこのゲームやってるんだな。


「宇宙人――――――私達はその言葉は好きではないですね。私はユーマ人です」


 ユーマ人……確か最近共栄圏に入った宇宙人だっけ。噂だと五感が優れているから、遠くまで見えるし音も聞き分けられると聞いた事がある。バラエティチャンネルの格付け番組でステーキの判別を速攻でしてたの見たなぁ。


「ブライトさんですね。フレンド申請送っておきます」


[百々目鬼様のフレンド申請が届きました]

[了承しますか? はい いいえ]


 勿論僕は了承する。僕は別に他のプレイヤーと交流しないシャイな人じゃないからな。積極的にフレンド申請は了承したい派なんだ。


「それで、百々目鬼はどうする? 僕達はこのまま山から降り続けるつもりだけど」


「お許しを頂けるのなら同行させて下さい」


「この三人なら怖いもの無しだな!!」


 僕達はこのまま薄暗い鉱区の奥地へと突き進んで行くのだった。時々現れるPKも難なく倒す事が出来て、この突発イベントのお陰でかなりお財布が潤ってきている。少し前なんてバーガンディにお金取られて金欠だったのに、こんな事で回復するなんて。


「それにしても、見た所お二人の装備はかなり高ランクですよね。こんな序盤でどうやって手に入ったんですか?」


「これは……あ〜兄弟言って良い感じか?」


「百々目鬼なら言っても良いんじゃないかな。僕達は頂上を目指して登ってたんだ。そこのモンスターの素材を使ってるんだよ」


 百々目鬼は一瞬驚愕するも、その顔は好奇心のような興味津々の眼差しをしていた。それもそのはず、このゲームリリースされてまだ一日しか経っていない。しかもPK騒動も起きてたら良い装備なんて持ってる人の方が珍しいのか。


「上の階層には低酸素状態の異常空間があったはずですよね。どうやって対処したのですか? 教えられないのなら別に言わなくても構いませんが……」


「どうやってって?」


「…………あの場所でモンスターを倒したんですよね。それなら、低酸素状態を無効化なり軽減なりする手段をお持ちかと思いまして」


…………あ〜そういう事ね。確かに手段は持ってる。持ってるけど……別にそれ使って攻略した訳じゃないんだよな。


「一応低酸素状態を無効化する霊峰のブレスレットは持ってるね。頂上のボスを倒した素材で出来てるよ」


「やはりそうなんです―――――――ちょっと待って下さい。では、ボスを倒すまでの道中はどうやって……?」


「ゴリ押し」


 プロレスがそう言うと、百々目鬼は更に困惑と混乱に脳を支配されような、そんな顔になった。

 そういえばそうなんだよな……素早さが遅くなるだけならゴリ押しで動きに適応すればなんとかなってたし……。


「実は低酸素状態のまま戦ってただけなんだ」


「………聞いた私が馬鹿でした」


 最終的には呆れ果てた顔になった。

 だって……ねぇ? なんとかなっちゃったものは仕方ないというか何と言うか…………ほら、プロレスも頷いてくれてるじゃないか。


「………まぁ良いです。そんなお二人と私が居れば、もしかしたら攻略出来るかもしれないですね」


「攻略? ここの近くにダンジョンでもあるのか?」


 ダンジョンか〜そう言えばまだダンジョン行った事が無いんだよな。聞いた所によると、中は迷宮になってて地形は完全にランダムになってるんだとか……楽しみだな。


「いえ、ダンジョンではありませんが……それに近いものかもしれませんね」


「なんだダンジョンじゃねぇのか〜んで、百々目鬼が言ってるその場所はどこよ?」


「あれです」


 ………確かに広義的に捉えればダンジョンかもしれないな。でもあれって……PK集団の本拠地じゃないか?

 僕の目の前には不法に立てられた建造物があった。その中には多くの赤色のプレイヤーネームが次の襲撃場所を話し合っている。


「最後のメインディッシュって訳だ」


「これが済んだら僕達大金持ちだね」


「やる気満々で助かります。今こそ殲滅しましょう」


 三人の狩人は獲物の腹にある財産を喰らう為に歩き出すのだった。

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