百人力
暇だし総合掲示板覗いてみたけど、やはり装備が重要っぽいのは書かれていたね。相性の良い装備の組み合わせ、これこそが強くなる為の秘訣なのかもしれない。
「なぁプロレス、もしPKが居たらどうする?」
「カツアゲする」
「僕もそれが正解だと思うよ」
確かにPKは脅威だけど、それは成長したPKの話だ。成長途中のPKは僕達にとっては逆に餌にしかならない。もし倒せれば一攫千金も夢じゃないと思うんだ。
「お客人、依頼の物が完成したぞ」
バーガンディがそう言うと完成した蛮族シリーズの服と堅牢シリーズの鎧、そして槍、大盾、メイスを見せる。
蛮族シリーズは骨と皮が原始的な荒々しさを感じられる衣装となっており、物理攻撃力+30、素早さ+30と物理火力特化の性能をしており、スキルは〈蛮勇の雄叫び〉で、三分間のみ物理攻撃力+20、与ダメージ増加+10%、素早さ+20と攻撃面では頼もしいスキルとなる。
更に驚きなのが、骸牙槍と呼ばれる骨で出来た槍は物理攻撃力+50で、スキルは〈骸穿〉と〈骨界穿孔〉の二つもある。〈骸穿〉は〈クイックスラッシュ〉の槍バージョンで素早く相手を突く技となっている。〈骨界穿孔〉は必殺技の側面が強く同じく突き技であるが、一撃のダメージが大きい技で一度使うと自身に被ダメージ増加+10%が付与されてしまう。使い所に注意すべきだろう。
堅牢シリーズは鉄と外殻の強固で少しの攻撃ではびくともしない硬さを感じられる衣装となっており、体力+20、物理防御力+30、魔法防御力+30と防御特化の性能をしており、スキルは〈不沈艦〉で三分間のみ物理防御力+20、魔法防御力+20、被ダメージ減少+10%と防御面では頼もしいスキルとなる。
不動大盾と呼ばれる同じく鉄と外殻で出来た大盾は敵の攻撃が大盾に当たった時限定で被ダメージ減少+20%、スキルは〈挑発〉で敵の攻撃を引き付けたり周囲の味方のダメージを10%程肩代わりする事も出来る。対プレイヤーの場合は攻撃を引き付ける効果の代わりに、ダメージの肩代わり効果を30%と強化する。
鉄槌メイスも同じく鉄と外殻で出来たメイスで物理攻撃力+20だがスキルの〈震槌〉は攻撃すると相手を一瞬だけスタン&怯みを与える効果で相手を拘束するのには持って来いなスキルだ。頭に攻撃すると効果がより強くなるが、効果を発動するだけならどの部位でもいい。
「かっけぇ……オレこういう荒々しいの好きなんだよ」
蛮勇シリーズと骸牙槍はプロレスが装備する事になった。身軽な防具に軽くも丈夫な武器に大満足している様子。
「結構動きは重たいけど、これだけ硬いとどんな攻撃も弾けそうだな」
堅牢シリーズと不動大盾と鉄槌メイスは僕が装備する事になった。重厚な防具に頑丈な盾、拘束するのに役立つメイス、タンクとしては申し分ない装備と言えるんじゃないだろうか?
◆◆◆◆◆
名前 ブライト
所持金 650G
武器 鉄槌メイス、不動大盾
防具 堅牢シリーズ
体力 50
物理攻撃力 20
物理防御力 30
魔法防御力 30
アクティブスキル
〈不沈艦〉〈挑発〉〈震槌〉
◆◆◆◆◆
ステータスの方もカチカチな性能をしてて満足だな。パッシブスキルは無いけど、アクティブスキル三つを使い分ければ問題ないだろう。
「ありがとうございます。バーガンディさん」
「また作って欲しい魔道具があれば来ると良い」
俺達は鍛冶屋を出て、もう一度都市の外に出る事にした。
◇◇◇◇◇
「〈震槌〉」
「〈骸穿〉」
「ガヴァ………!!」
[戦闘終了]
[550Gを獲得]
[強固な骨を4個獲得]
[ファットベアの毛皮を3個獲得]
[ファットベアの肉を6個獲得]
俺達は装備の使い心地を確かめる為に先程のエリアへと戻って来た。苦戦したあのファットベアを楽々と倒す事が出来るってだけで感動する。
「低酸素状態もこの装備なら全然動けるな!!」
「僕の場合はどちらにせよ移動速度遅い装備だから、影響は少ない。あの鍛冶師には感謝だね」
僕が挑発して攻撃を引き付けつつ、プロレスは相手の隙を狙って攻撃する。僕達はこのコンビネーションで既に多くのモンスターを仕留めている。
「この調子だと、頂上まで行けるんじゃないか?」
一体頂上はどんな景色なんだろうか。雲海都市でさえ雲の上の位置にあった。この山は一体どれ程高いのか分からないが、きっと絶景なんだろうと確信する。
「うっ光が……!!」
そろそろ洞窟も終わりが見えてきたようで、突然強烈な眩しい光が目に入るも、その先の景色が見たいと一歩一歩前へと進む。洞窟を抜けると――――――お花畑が広がっていた。
鮮やかな花に触れてみるととても暖かく、それらが寒いはずの青空を熱で癒やしている。
「ここが……頂上か?」
マップには『自由の国ノマディア 春風の花園』と書かれている。先程までの洞窟とは完全に別エリアで中々に広く、遠目では大きな坂があるのを確認出来る。つまり、ここはまだ頂上じゃないのかもしれない。
「頂上はあの大きな坂を登った先の、更に上の丘みたいだ」
頂上へと向かう為には花畑と坂を乗り越えなければならない。一見簡単そうに見えるが――――――――
[Cランク 憤怒の向日葵]
ここにはCランクのモンスターが居る。つまり、Dランクのモンスターを楽々と攻略出来る力を持たなければ、このエリアに入る資格など無いのだ。巨大な向日葵は怒りの表情でこちらを睨む。
「〈挑発〉」
「キシャァァァァァァ!!!」
僕は先手として〈挑発〉を使用し攻撃を誘導する。憤怒の向日葵は地面から根を生やし装甲を貫通せんと鞭のようにしならせ攻撃する。
「………っ!! 流石Cランクモンスターと言った所か」
多少のダメージはあったものの、一発一発は全然耐えれる程であり装備の有り難さを実感する。盾を構え的確に根の攻撃を捌きつつ攻撃を受け続ける。
「〈骸穿〉」
「キシャ?!」
プロレスは攻撃の隙を掻い潜り、憤怒の向日葵の茎部分を一突きする。驚きの声を上げた憤怒の向日葵だが、僕の〈挑発〉のお陰で攻撃の対象をプロレスに変更する事が出来ない。
「ほらどうした!! 僕を……倒さないと……穴だらけになるぞ……!!」
「〈骸穿〉」
「キシャッ、キシャッ、キシャァァァ!!!」
根を盾で捌き、槍で憤怒の向日葵の管状花部分を貫く。しかし、その傷は修復される。更に緑色の茎は赤色に変色し暴走モードとばかりに無差別に攻撃する。どうやら、僕の〈挑発〉も効果が切れてるようだ。
「第二形態の所悪いが……ワンパンさせて貰うぜ?」
プロレスは槍を構え直す。その姿はさながら武者のようで、誰もその威圧からは逃れられない。脚を踏み込み大地を駆け敵の懐へと潜り込む。その一撃は巨大で頑丈な植物をも消し飛ばす奥義である。
「〈骨界穿孔〉」
その瞬間、憤怒の向日葵は消えた。まるで、最初からそこに何もなかったように。
[戦闘終了]
[1280Gを獲得]
[優美なエキスを4個獲得]
[憤怒の向日葵の根を3個獲得]
[憤怒の向日葵の花びらを6個獲得]
「流石の高火力だな」
あの速度で近寄られて高火力な技で貫通する。やられる敵はご愁傷様だな。せめて何も分からないまま逝ってくれ。
「兄弟、何か勘違いをしてるが……これはオレの最高速度じゃ無いぜ?」
「………あっ」
そういえば、今は低酸素状態となっていて春風の花園に着いても解除されていないんだった。つまり、もしこれが無かったら更に速く敵を狩れるという事で――――――味方で良かったよ本当に。
「この調子でモンスターを薙ぎ払ってこうぜ!!」
「お前が居れば百人力だよ」