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第52話(ルイ視点)本気の告白

「……どうしようかな」


 鏡に映る自分を見て、そっと溜息を吐く。


 自分でも言うのもなんだけれど、鏡に映る僕の顔は美しい。


 陽の光を浴びれば透き通る銀色の髪も、翡翠色の瞳も、あまり見かけないものだ。


「髪、伸びたよね」


 ここへきた時は短かった髪の毛も、もう少しで肩につきそうだ。


「切らない方がいいかな」


 髪が長くなればなるほど邪魔になる。それに、綺麗に保つために時間とお金がかかってしまう。

 ありがたいことに、ここでは金に困ることはないのだろうけれど。


 中性的な顔に、華奢な身体。


 顔は変わらないとしても、体型は分からないんだよね。

 僕が華奢なのはきっと、長年栄養不足だったせいだろうから。


 ここへくる前は、満足するまで食事をとることなんてできなかった。

 ここへきてから、少し太った気がする。


 ……少しっていうのは、ちょっと嘘かも。


「髪が長い方が、女の子っぽく見えるかな」


 コルベット様は異性愛者だ。僕にとっては幸運なことに、なぜか彼の周りには同性愛者ばかりが集まっているみたいだけれど。


「化粧もすれば、きっとある程度年をとっても……」


 いつまでも美少年ではいられない。そんなこと、僕だって分かっている。


 でも、性別を理由にコルベット様を諦めたくない。


 実の親に売られ、雇い主には虐げられ、挙句の果てには性的暴行を受けそうになった。


 こうして振り返ってみると、僕の人生は最低最悪だ。

 そんな中で、初めて優しくしてくれたのがコルベット様だった。


 正直、この気持ちが恋だと断言することはできない。今まで、誰かに恋をしたことなんて一度もないから。

 でも僕は間違いなくコルベット様が好きで、他の誰かと彼が結ばれるところを見たくない。


 だからきっと、これは恋なのだ。


 コルベット様とベル様の正式な離婚が決定した。

 まだ領民たちに対しては公表していないが、近いうちに公表する予定だという。


 コルベット様は新しく妻を迎えるだろうか?


 今度の妻は、きっとベル様のような方じゃない。

 優しいコルベット様を本気で好きになるかもしれないし、好きにならなくても、妻として好きになるふりをするかもしれない。


 旦那に思いを寄せている美少年が屋敷にいることを許さないかもしれない。


 コルベット様には、散々気持ちを伝えてきた。

 好きだと何度も伝えたし、好きになってもらえるように頑張ってきたつもりだ。


 すう、と大きく息を吸い込む。ゆっくりと息を吐きながら立ち上がった。


「今日、僕はコルベット様に告白する」


 気持ちを伝えるのは初めてじゃない。でも、今までのように、ただ一方的に思いを伝えるだけの告白にはしない。


 クローゼットを開け、中にある洋服を眺める。

 コルベット様やベル様、そしてコルベット様の母親であるガブリエル様が用意してくれた物ばかりだ。


「告白するなら、今日の服は……」


 少しだけ悩んだ後、僕はそっと手を伸ばした。





「ルイ? いるか? ジゼルに、ここにいるって言われたんだが……」


 背後からコルベット様の声が聞こえてきた。

 振り向くと、僕と目が合ったコルベット様は驚いたような表情を浮かべる。


「どうしたんだ、その格好……あ、いや、それが普通か?」


 僕は今日、いつものように女物の服を着ていない。

 男だと判明した後にもらった、シンプルな男物のシャツとズボンを着ている。


「はい。僕は男ですから」


 僕の言葉に、コルベット様は困惑したようだ。

 無理もない。男だとバレた後も、僕は女物の服を着続けていたのだから。


 女の子っぽく、可愛くいた方がコルベット様の注意を引けると思ったからだ。

 僕自身は、服に対するこだわりは特にない。


「呼び出してしまって申し訳ありません。今日はどうしても、ここで話がしたかったんです」

「ここで?」

「はい。コルベット様が僕を見つけてくれた、この場所で」


 近くの茂みを指差す。

 体力が尽きた僕はそこで倒れ、たまたまコルベット様に見つけてもらったのだ。


「コルベット様」


 一歩距離を詰める。コルベット様はびっくりしたみたいだけれど、後ろへ下がることはなかった。


「貴方が、好きです」


 声と表情で、いつもよりずっと真剣な言葉だと伝わっただろうか。


 わざわざ男物の服を着ていたのは、僕が男だという事実を改めて突きつけるためだ。

 知った上で、コルベット様には答えを出してもらわないといけないから。


「ずっと、そう伝えてきました。でも、改めて伝えようと思ったんです。

 コルベット様が離婚なさるから」


 二人が真の夫婦関係にないと知った時、正直、舞い上がるほど嬉しかった。

 早く離婚してほしい、と何度も願った。


 そしてようやく、二人が離婚することになったのだ。


「好きです。だから、僕を貴方の恋人にしてください」

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