あなたを悪役にはしません3
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、
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一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
王女月夜見は、死人の国の空中を飛んでいた。
死人の国は1日中暗闇に包まれており、わずかに月光や星の光が照らしているだけだった。
よもつ坂の横を飛んでいた。
やがて、月夜見は人間界の地上に近づいた。
すると、明るい太陽の光りが照らす人間界の空に入った。
空中の気流はかなり強い。しかし彼女には少しも気にならなかった。
そして地上の高天原に近づくと、彼女には陽光の姿をすぐに認識した。
彼はある場所に、下を向いて立ちすくんでいた。
やがて陽光が上を向くと、上から降りてくる月夜見と目が合った。
2人にとってこれが2度目――
しかし、何回も繰り返したかのようだった。
月夜見は地上に近づくと、その能力でひらひらと落下速度をゆっくりにした。
そして、地上に立っていた陽光のそばに降りた。
「陽光様。お待たせしました」
彼女が見ると、彼が下を向いていた場所は特別な場所のようだった。
「その場所は? 」
「ここが私の父の墓場です。父はオニ族の軍勢をよもつひら坂の最上まで追い詰め、そして坂から落ちて
体がここにありました」
「そうでしたか。つらいことを聞いて申し訳ありません」
「いいえ。少しも問題ありません。剣士として恥じることのない、名誉を大切にする父は私の誇りです。今では父は私の一部になっています。それでいつも私を支えてくれています」
「すばらしいお父様だったのですね。私の父親とは大違いです」
「月夜見様。高天原には何回かいらっしゃったのですか」
「はい。この間、陽光様に助けていただいた時にいた場所は、さまざまな美しい花々が咲く私のお気に入りの場所でした。侍女達が私を守って命を落した悲しい場所、そしてあなたと初めてお会いできた場所」
「今日は、他のいろいろな場所を御紹介します。なにしろ私は高天原の領主ですから、領地内のことは津々浦々しっかりと把握しているのです。こちらへ」
陽光に案内されて少し歩くと、月夜見が見たことがない動物がそこにいた。
その動物は陽光が自分のそばに戻っていたことを見ると少し、いなないた。
月夜見はびっくりした。
「申し訳ありません。これは馬という生き物です。名前はコウ、私の友達です。人間を乗せて長い距離を、とても素早く走ることができるのですよ」
陽光はコウに近づいて言った。
「コウよ。今日は王女様を高天原に御招待したのだ。いろいろな場所にお連れするから、快適に移動できるようがんばってくれ」
すると、コウは陽光の言葉がわかったかのように、また、少しいなないた。
陽光は先に馬にまたがった。
そして手をさしだして言った。
「月夜見様。私の手につかまり、私の背中側にお乗りください」
彼女が恐る恐る手をつかむと、すぐに馬の背に引き上げられた。
(わあ。手の力が強いんだ!! )
「陽光様。私はこれからどうすれば良いのでしょうか? 」
「軽くでいいのです。ほんとうに軽くでいいです、後ろから私におつかまりください」
加減が分らない月夜見は、陽光にしっかりだきついてしまった。
「あ――っ そんなに強く密着しなくてもよいのです。それでは動きますよ」
高天原には美しい自然があった。
陽光は独特の感性で、美しい景色の場所に月夜見を招待した。
白糸のように幾筋も流れる滝、桃色一色がはるか彼方にまで広がる草原、
かなたの地平線が少し丸く見える海が見える高台‥‥
そこは山ではないが、調度、展望のために作られたテラスのようだった。
もうすっかり、太陽は垂直に昇っていた。
「あ――の 月夜見様。お腹がすきませんか? 変なことを聞いてしまいますが、食べ物は人間と同じもので良いのでしょうか? 」
「食べ物は人間と全く一緒なのです‥‥そうですね、そんなことすら、オニ族と人間の間では理解されていないのですね」
「家から出て外で食べるものとしてオニギリというものがあります。今日、月夜見様に食べていただければと、たくさん作ってきました」
「ありがとうございます。オニギリという食べ物のことは全く知りませんが、是非是非いただきます。それでは、飲み物は私が用意します」
そう言うと、月夜見は右手を上げて言った。
「素敵な場所、高天原。ここに育ちオニギリにとても会う飲み物を私にください。」
いつの間にか、彼女の手は透明なグラスを握っていた。
そして、そのグラスの中に美しい緑色の液体が少しずつ注がれた。
「今、この地上の中から生えている全ての植物を選別して、一番おいしいと思われるものからエキスを抽出してこの飲み物を作りました」
月夜見は陽光にグラスを渡した後、その手で空中に字を書いた。
「この飲み物の名前を作りました」
空中には『茶』という文字が一瞬浮かんだ。
2人で食べる食事はとてもおいしかった。
相性が最高な2人が話すことは無限にあった。
あっという間に数時間が過ぎた。
月夜見が気づいた。
「陽光様。もう日が暮れます。私は帰らなければなりません」
「もう、そんな時間ですか。帰りはどのように。よもつひら坂を登らなければならないのですか? 」
「いいえ。月の巫女でもある私は特殊なのです。月に近づく方向なら飛べるのです」
そう言うと月夜見は軽く空に舞い上がった。
「今日、楽しい思い出を作っていただいたお礼です」
月夜見は空中で舞い始めた。
それは指先の動きまで神業と思えるほど、とても美しかった。
(美しいな。心が洗われるようだ)
「それでは陽光様。今日のところはお暇します。時々、あの書巻で話しかけてくださいね」
「はい。もちろんです」
それから月夜見は軽く手を振ると天空を指指した。
そして、光のように空に向かって飛んで消えた。
その頃、死人の国の王宮では大騒ぎが起きていた。
もちろん、月夜見が誰も知らないうちに姿を消してしまったからだ。
これには、父親の炎王も大変困った。
それで、月夜見と最も中の良い第5王子深黒を呼んでいた。
「深黒よ。月夜見はどこに? 」
「父上、そのまさかだと思いますが、たぶん、今、人間界にいるのだと思います」
「なんで人間界にいるのだ? 」
「‥‥‥‥ 」
その時、謁見の間の扉が開き、呼ばれていない1人の王子が入ってきた。
「父上、兄上、理由はどうでも良いのです。月夜見が勝手に人間界に行ったことが問題です。宝剣黒斬を奪われ、真龍が敗北する原因を作ったのも月夜見です。私が捜しに行き、強く言い聞かせます」
真龍の双子の兄、第9王子、蛟竜だった。
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
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