あなたを悪役にはしません2
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、作者にエールをいただければ、
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是非是非、お楽しみください。
女王アマテラスは、現在の陽光の父親、先代の陽光を想い出していた。
(まだ私は小さかったけど、立派な剣士だったわ。自分がやるべき義務を果たし、他人のために喜んで困難と背負い闘い。それを剣士の最高の名誉と思っていた。最弱だとみんなが言っていたのは違うわ)
女王は半ば笑い声で、最後の裁定をくだした。
「オニ狩り剣士陽光、予想どおりの回答ですね。良いわ。あなたの席次は第5席のまま、3席は戦士した激光の息子に継がせます。ただ、陽光には褒美を与えます」
その後、女王は自らの席から立ち上がった。
「あなたの父親もそうでした。あなたは世界最強の戦士、たぶん、オニ族のどの王子と戦っても勝つでしょう。ですから、あなたを新設する剣士長に任命します」
「女王様。剣士長とは? 」
「この先、また必ずオニ族との新たな戦いが起きるに違いありません。その場合、我がヤマトの国が大きな軍団を作って戦うことになりますが、その場合はあなたが指揮官になるということです」
「指揮官ですか―― 私のがらではないのですが」
「これだけは命令です。あなたが他のオニ狩り剣士達や兵士達を指揮するのです。それと、もう一つ。戦うだけではありません。オニ族、死人の国との平和が保たれるよう交渉役も命じます」
「交渉役ですか!! たぶん、私は今、オニ族から最大の憎悪の対象となっています。なにしろ、王女から無理矢理、宝剣黒斬を奪い今度の戦いで王子の1人を殺したのですから」
「あなたが、この最悪の歴史を止めるのです。今度の戦いで、人間やオニ族の数十万人が命を落しました。
こんなこと、今後も繰り返してはいけません」
陽光は純粋な心をもち、自分と同じ時を過ごす人々の幸せが最も大切だと思っていた。
そのため、女王アマテラスのすばらしい理想には心の底から賛同した。
「はい。女王陛下の御命令、謹んでお受けいたします」
女王との謁見の数日後、陽光は王都にある書物倉の中にいた。
地面から、かなり高い高床式の建物の中には、竹に書かれたたくさんの書巻があった。
女王から死人の国、オニ族との交渉役を命じられたので、領地に帰る前に知識を得ようとしていた。
(人間が亡くなると、その魂は一度、空の上の宇宙に上がり、そして死人の国で再度の生を与えられのか。そのサイクルは短くても百年以上なのか―― )
書巻を読んでいたその時、彼はある人の顔を思い浮かべていた。
(えっ!!!! すると、月夜見様は、もともと私より百年以上前に生まれた人間なのか)
その時のことだった。とても不思議なことが起きた。
陽光が読んでいた竹の書巻に丸い光りの輪が浮かんだ。
そして、そこにある顔が浮かんだ。
「月夜見様!!!! 」
「陽光様!!!! 」
2人はお互いに、驚きの大きな声を上げた。
あまりに大きな声を上げてしまったので、陽光は広い書物倉の中をのぞいた。
(よかった。誰もいない)
月夜見が話しかけてきた。
「陽光様。これはどういうことなのでしょう。私は今、巫女としてのつとめを果たす部屋に1人で座り、古い書巻を見ていました。すると、丸い光りが浮かび、あなたの顔が見えたのです」
「月夜見様。私の方もほぼ同じようなものです。これは何かの魔術でしょうか? 」
「わかりません。わかりませんが、たぶん、この書巻の能力なのでしょう。遠い場所にいる2人が顔を見て話すことができるようにする物ですね」
「よかった。まずおわびいたします。このたびの戦争で月夜見様の弟君の真龍様の命を奪ってしまいました。オニ族の方々にとって、私は最大の悪役でしょう」
「あのような嘘をつかれるからです。宝刀黒斬は、あなたに差し上げたのです。そして黒斬を見事に使い、影狼の大群から私の命を救っていただきました」
「‥‥‥‥ 」
「陽光様は、死人の国の中で私の立場が悪くなることを避けるため、あのような嘘をつかれたのですね。私を守るために―― 」
「‥‥‥‥ 」
「あなたはほんとうにすばらしいお方。自分を誇らないのですね。でも、損ばかりしますよ。私があなたを悪役にはしません」
「損ばかりではありません。今、最大の幸運が訪れています」
「何ですか」
「こうして、月夜見様の顔を見て話しています」
「最大の幸運ですか!! ありがとうございます。私も同じですよ!! 」
「あの~ 月夜見様。また、よもつひら坂を降りて高天原にいらっしゃることはできますか? 」
「今度の満月の日ならば。私の力が最大になり、空を飛ぶこともできるのです」
「満月の日ですか。すると、夜ですか」
「いえいえ、この星と月、太陽との位置が問題なのです。ですから、月が見えない昼間でも」
「それでは、その日の正午、よもつひら坂のふもとで待っています」
「はい。参ります。楽しみにしています」
「それにしても、この書巻はすばらしいですね。使うにはたびたび、王都まで来て、この書庫に来なくてはなりませんが。私の領地はここからかなり遠い辺境ですので時間がかかるのです」
「ふふふふ お持ち帰りになれば。女王陛下にお願いしていただくのです」
「そうですね。そうしましょう。それでは今からお願いに行きます」
「どうしたのだ。陽光よ、緊急の謁見を依頼するとはただ事ではないな」
「女王陛下、臣陽光からお願い申しわげます。この書巻は、人間とオニ族との古い記録が記載されている大切な資料です。知識を得るため、オニ族との交渉役となる私にいただきたいのです」
「なんだ。そんなことか、良いに決まっているではないか、よく読んで勉強してくれ」
「はい‥‥ 」
「陽光よ。私に何か嘘をついているのか? 」
そう指摘された陽光の反応が異常だった。
かなり、びくっとしたようだった。
「何も嘘はついておりません」
「うん。肌身離さず持って、しっかり役立てるのだ」
「はい!! 」
月夜見が陽光と会うため、高天原まで空を下る日がきた。
今日は、月の位置が満月となる日だった。
月夜見が目を覚ますと、体中に力がみなぎっていた。
「陽光様と今日、会えるのだわ。侍女達に見つからないよう早く出ましょう」
彼女は王宮にある自分の部屋のベランダに立ち、空を飛んだ。
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
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