運命の女神の気まぐれで事実が変わった
運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。
是非是非、お楽しみください。
オニ族の王子と人間界のオニ狩り剣士、2人は対峙した。
「私はオニ族を束ね、やがてはこの世界全てを統治される炎王様の第5王子深黒です。あなたはオニ狩り剣士のようですが、お名乗りいただけますか」
律儀な深黒は丁寧に名乗った。
ところが、オニ狩り剣士の激光は正反対だった。
「オニごときが何を言う。汚らわしい物に名乗ることなどしないわ!! 」
激光の失礼な言葉を、深黒は極めて冷静に聞いていた。
そして、激光の戦闘能力を確認した。
(観察眼発動!! )
深黒のオニの目が純粋な赤色に光った。
(えっ‥‥ えっ、えっ‥‥ )
心の中で大変驚いた。
(こんなに弱いのか、まあ良い)
無謀な激光が剣を振ってきた。
「あ――っ。すぐ終わってしまうのか。女王アマテラスは何をしているのだ。こんなことでは、人間の世界はすぐに滅ぶな」
普通の人が見れば、激光が振った剣の一振りは重くて早く見えた。
しかし、戦闘の達人から見ると、あまりにもおそまつだった。
深黒はハエを追い払うかのように剣を振った。
すぐに激光はその場に倒れた。
「人間のお偉い剣士様。100年待ちなさい。そうしたら、オニ族として新たに生まれることができますよ。
もう、俺は帰ろう。勝敗は明らかだ」
自分の弟である第10王子真龍だけで、この戦いは簡単に勝てると思った。
彼は夜空に開いた死人の国との暗黒の半円の通路に向かって、ジャンプした。
そして、死人の国に帰っていった。
「ダメじゃない!! 」
運命の女神がその異世界の中で起こっていることを、光りの球体の中に見ていた。
「これでは、あの2人の間に恋愛悲劇の種が蒔かれないわ―― 」
運命の女神はイラッとして、光りの球体を指差し神の力で事実をねじ曲げた。
オニ族の大侵攻は続いていた。
戦場から第5王子深黒が離脱したことを、第10王子真龍は気が付いた。
「兄上は厳しいな。『これくらいの相手なら私だけで片付けよ』ということか」
「真龍様。これから、どのように戦いますか」
「そうですね。人間の軍勢の数が多すぎるのです。少し数を減らしましょうか。今、人間の軍勢はどれくらいですか」
「だいぶ数を減らしていますが、まだ10万人台です。我が方と同じくらいです」
「なるほど。速やかに戦力の均衡を壊します。私が出ます」
オニ族第10王子真龍は、戦いの最前線に出た。
彼は、とても強い槍の使い手だった。
そして、その槍で人間の命を100人単位で奪っていった。
この時点で事実が変わり、アナザーストーリーになっていた。
王都ヤマトの近隣の村に、最強のオニ狩り剣士陽光の年老いた母親が暮らしていた。
調度その時、全く偶然に陽光は母親を訪ねていた。
そして、久し振りに母親の作った夕食を、母親の家の中で食べていた。
その内、家の外が異常に騒がしくなってきた。
彼は外に出た。
すると王都の方から、住民がたくさん非難してきていた。
「これは、どうしたのですが? 」
「あんた。知らないのかい。王都のそばの天空に穴が開き、オニ族が攻めてきたんだよ。そこら辺を守備しているオニ狩り剣士はすぐに戦死して、他の兵隊さん達もほとんどやられているみたいだよ」
(あそこは席次第3位の激光様が守る地、やっぱり弱かったんだ。オニ族があそこから攻めてくることはないと思っていたのだけどな‥‥ )
かって、陽光は女王アマテラスから席次3位に昇進し、王都周辺を守る領主になるよう言われた。
しかし、彼は断った。
その時、そのことを聞いていた現席次3位の激光といざこざが起きるのがいやだったからだ。
陽光は反射的に、王都に向かって走り出した。
彼の足は馬よりも強く早く地面を蹴ることができた。
それを見た人は、何かの魔術だと思うくらいだった。
確かに、彼は鍛錬に鍛錬を積み、最終的に大地の精霊に祝福を受けていた。
だから、計算以上、異常に早く動くことができた。
あっという間に、陽光は戦場のまっただ中に着いた。
すると、わずかに100人程度となった人間の兵士達が、10万人のオニ族に囲まれていた。
100人の兵士達は、自分達の命がすぐに消えることを確信し諦めていた。
その時のことだった。
「卑怯だな」
よく通る凜とした声が聞こえた。
同時に、人間の兵士達を囲む一方の方向のオニ族が、たちまちのうちに切り伏せられた。
オニ族が倒れた場所には長い道ができた。
そしてその道を人影が全速力で駆け抜けてきた。
最後には、背の高い若者が目の前に現われた。
「陽光様だ。よかった。これで助かるぞ!! 」
人間の兵士達は大歓声を上げた。
背の高い若者は、独特の巻き毛の下に柔和で優しい表情をしていた。
とても明るく楽観的で、愉快な性格がすぐにわかった。
さらに人間なのに、オニ族を恐怖と憎しみの目では見なかった。
陽光はオニ族の大軍に向かって大音量で話し始めた。
「帰りなさい。ここは人間の世界です。あなた達の世界があるじゃないですか。帰らないと、ほんとうにいやなのですが。私はあなた達の命を奪わなければなりません」
「あっ 最強のオニ狩り剣士陽光だ。ここからはるか辺境の高天原の領主なのに、なぜここにいるのだ」
「ほんとうに悪いことは言いません。オニ族は自分達の世界にお帰りなさい。私はあなた達の命を奪いたくはないのです」
陽光の言葉を聞いていた司令官、第10王子真龍が副官に聞いた。
「どうしましょう。相談役の深黒兄様はもう帰ってしまわれた。ここで私は、最強のオニ狩り剣士陽光と戦うべきでしょうか」
「王子様。もう20万人に近い人間の命を奪っています。大勝利です。ここで凱旋しましょう。あの陽光という剣士と戦うべきではありません。必ず負けます」
真龍はそう言われたが、初陣の彼にとって、陽光が恐いから戦いを止めたと言われたくなかった。
「いえ。私は末席とはいえ、オニ族の王族。義務を果たす必要があります」
そう言うと大軍勢の全面に進み、包囲している人間の兵士達の前に出た。
そして告げた。
「人間最強の剣士陽光様。私はオニ族第10王子真龍です。実は今日は私の初陣なのです。この初陣の思い出に、あなたが恐くて戦わずに逃げたという記憶を残したくありません」
真龍のその言葉を聞いた時、陽光は黙って首を振った。
そして兵士達の前面に出て、真龍と対峙した。
「第10王子様。苦い記憶も、時が経てば必ず意味を持ち、最後には大切な思い出になるはずです―― 必ずです。私が補償致します」
お読みいただき心から感謝致します。おもしろいかとても心配です。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




