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2人は転生した(3回目)

長い長い悲劇が続きます。

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 日向光(ひゅうがこう)は祈祷所で、月夜美(つきよみ)のために祝詞を上げていた。


(私のために、大変な修業を‥‥ ありがとうございます)


 祝詞を読んでいると、そのうち不思議な感覚になった。


 彼女と心がシンクロし始めたのであった。


 それは、3回の転生の記憶だった。


 その都度、彼女と悲しく辛い別れを経験した。


 自分も夜美も少しずつ名前が変ったが、悲しい別れが3回もあった。


 今、自分の胸に感じている違和感は、また2人を別れさせようとしているものだった。


 これまで転生したとしても、最高神のギフトによって、2人は同じ異世界に生まれ世界線が交わった。


 しかし、次の別れでは、2人ともはるか遠くの別々の異世界に転生する。


 そして、世界線が交わることは永久に無いことがわかっていた。




 やがて、2人が今生きる世界で、あっという間に新月の日から15日が過ぎた。


 日向光(ひゅうがこう)を、運命の神の干渉からできる限り守る体制がとられていた。


 彼の心臓に突き刺さっていた運命の矢は、女神の指示により大きくなり始めた。


 彼は激痛を感じた。


 しかし、その激痛は一定のところで治まっていた。


「日向さん。大丈夫です。私が月の力で運命の女神の力をできる限り否定しています」


「はい。夜美さんの力を私は信じます」




 たくさんの神が、それぞれの異世界を統括している大広間。


 光る球体が輝いていた。


 運命の女神はそわそわしていた。


 自分が統括している世界ではなく、月の女神が統治している異世界の状況が見たかった。


「あっ。もう満月の日になったのね。それならば、私が放った運命の矢が大きくなり、彼の命を奪うでしょう。それで悲劇は完成する。もう最高神様のギフトは無。永遠に2人の世界線は交会わないわ」


 運命の女神は大広間の通路で、月の女神が操る光りの球体を盗み見ていた。


 ところが何か変だった。


 もうとっくに運命の矢が大きくなって、陽光の生まれ変わりの人間の命を奪っているはずだった。


 しかし、彼の心臓に突き刺さっている運命の矢を何かの力が強く包んでいた。


 包んで大きくなることを防いでいたのだった。


(何? 何が起きているの? あの力は、『月の女神の力じゃない』!! 私の運命の力と同等。いや、あの娘の力に加わったとすると、私の運命の力を上回るかもしれないわ!! )


 その後、運命の女神を仰天させることが起きた。


 自分の光る球体を見つめていた月の神が振り返った。


 そして、運命の女神の方を見てにらんだ。


(何!! 私がのぞき見していることがばれたの!! )




 運命の女神の力は強大だった。


 女神の呪文を実現するために、運命の矢は信じられない力で伸びようとした。


 月夜見(つきよみ)は、日向光ひゅうがこうの心臓をそのオーラで包んだ。


 社務所の広間に結界を作り、彼はそこで横たわり、激痛に耐えていた。


 その横には彼女が控え、自分の力を絶えず送っていた。


「日向さん。ごめんなさい。運命の矢の膨張を防ぐだけで精一杯です。ほんとうは消滅させたいのですけど」


「私のためにありがとうございます。でも、絶対勝つことができます。無限の時間・無限の次元を超えてわ私達は転生してきたのです」




 天上界で大広間ではものすごいにらみ合いが続いていた。


 運命の女神と月の女神が目を目を合わせたまま固まっていた。


「運命の女神よ。あなたは、私が不在の時。私が統括するこの世界で生を受け、生きているこの人間の若者の心臓に向けて運命の矢を射ったわね」


「そうよ。それがなんで悪いの。どの神が統括する世界に生きている人間であれ、その運命を決める権限を私はもっているのよ」


「違うわよ!! その世界を統括する神が、その世界に生きる人間の運命を決めるのです!! あなたは、いろいろな異世界にちょくちょく力を行使して!! 違反ばかり!! 」


 月の女神は大激怒していた。


 その回りには、別の多くの神々が集まってきていたが一斉に拍手が起きていた。


 みんな、気まぐれな運命の女神に反感をもっていたからだ。


 それで、多くの神々も運命の女神をにらみつけ始めた。


 しばらく、その場の状況は重く硬直していた。


 しかし突然、それは破られた。


「最高神様!!!! 」


 その場に最高神が姿を現わした。


「運命というものはとても気まぐれ、それは仕方がない。気まぐれでなければ運命ではないからな。みんな、彼女のことを許してあげなさい。私は運命の女神をひいきしているわけではない」


 最高神はみんなを説得しようとしたが、全く効果がなかった。


「うん!! みんな私が最高神だということはよく知っているのだな。それでは、この場はこのように解決しよう―― あの人間の若者の命は救われる。日向光(ひゅがこう)とか言ったな―― 」


「お――う」


 たくさんの神々が驚いてどよめいた。


「ただ、それだけではないぞ。彼の命が救われるためには1つの条件がある。『記憶喪失』になるということだ。今の世界での記憶を全て失ってしますということだ」


 それから最高神は運命の女神に向かってやや強い口調で言った。


「運命の女神よ。これでよいな。それから、彼は月の女神が統括する世界の人間だが、お前が『記憶喪失』になる運命を決めても良い」


「はい。わかりました」


 運命の女神は心の中で(ひそ)に思った。


(ああ。やっと、これで私の悲劇が完成するわ。深く深く愛し合った2人は、3回転生して巡り会った。でも最後には永遠の別離が訪れるの!! 彼は相手のことを完全に忘れてしますわ!! )


 笑みがこぼれそうになるのを女神は必死にこらえていた。


 しかし最後は笑みが現れた勝ちほこった表情で月の女神の光る球体に近づいた。


「最高神様。御指示のとおり私の力を行使します。運命の矢を消滅させるかわりに、この若者の記憶を完全に消滅させます」


 自分の力を確実に送るため、運命の女神は光る球体に触り、自分の力を行使した。




 神社の大広間で、激痛に耐えていた日向光(ひゅうがこう)のうめき声が突然消えた。


 その横で、心臓に刺さった矢の膨張を防いでいた月夜美(つきよみ)にはわかった。


「運命の矢が消えた!! なぜ!! 私は勝ったのね!! 」


 彼女の美しい大きな赤い瞳から涙が流れた。


 そして、彼女か彼の額をなぜはじめた。


「陽光様。やっと、運命の女神に勝つことができました。ゆっくりとお休みください」




 彼は目を開けた。


「陽光って誰ですか? あなたは誰ですか? ここはどこですか? 」

お読みいただき心から感謝致します。

みなさまに心に届けます。

運命に抗う2人は負けません。


次からは、最終章です。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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