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2人は転生した(3回目)

第2章の開始です。

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 ある世界。


 大きな人口を抱える大都会だった。


 その大都会の名前を東都(とうと)と言った。


 東都の中心から地方に伸びる街道があり、その起点は川にかかる橋の上にあった。


 転落防止柵に寄りかかるようにして、若い男が自分の眼下から伸びている川面を見つめていた。


 彼の名前は、日向光(ひゆうがこう)と言った。


 大学院生だった。


 子供の頃から1人でいるのが好きだった。


 さらに、川の流れをずっと見てボッとしていることが好きだった。


(ああ、この川はいいな。いったい、どれくらい昔から流れているのだろう‥‥ )


 ところが――


 彼のお気に入りの時間は突然、さえぎられた。


「あ――っ。止めなさい!! 」


 女性が叫びながら走り寄った来た。




「えっ」


 日向光(ひゅうがこう)は驚いて振り向いた。


 振り向いてさらに驚いた。


 若い女性が自分の方へ血相をかえて近づいていた。


 さらにその容姿が彼を驚かせた。


 月の光のように輝く長い銀髪、大きな赤い瞳をしていた。


「ものすごい美人さん。外国の方かな」


 女性の名前は月夜美つきよみ、容姿と異なり外国人ではなかった。


 彼女が厳しい口調で言った。


「まだお若いのですよね。そうそう、私と同じくらい。これからの人生がんばらなきゃだめです―― 」


 橋の転落防止柵に寄りかかっていた彼が振り返っていた。

 

 背の高い若者は、独特の巻き毛の下に柔和で優しい表情をしていた。


 とても明るく楽観的で、愉快な性格がすぐにわかった。


 彼女はすぐに過ちに気が付いた。


「あの―― もしかして、私の勘違いですよね―― 」


 日向光はすぐに、それが何を意味するのか理解した。


「はい。たぶん、そうです。紛らわしくて申し訳ありません。まだまだ生きて行くつもりですよ」


 彼はニッコリして応えた。


 その顔を見た時、不思議なことに月夜美(つきよみ)は何回も見たことがある笑顔だと思った。


「ごめんなさい。私はとても小さなことにこだわってしまうのです。あなたが危険な状態だと勘違いして、いてもたってもいられなくなりました」


「いいです。むしろ、見ず知らずの私のことを心配していただいたことに感謝します」


 その時のことだった。


 2人にきっかけを与える事態になった。


 雨が降ってきた。


 ポツポツと。


 それから、雨はだんだん本降りになってきた。


「あっ、困った―― 」


 彼女は傘を持っていなかった。


「大丈夫です。私が2本持っています。1本お貸ししましょう」


「2本持っているのですか?? 」


「この川の周辺はよくにわか雨が降るのです。自分の部屋を出る時、玄関で傘を持ってきたのですが、ナップサックの中に予備の折りたたみ傘を入れているのを忘れていたのです」


 彼は背中からナップサックをおろし、中から折りたたみ傘を下ろして彼女に渡した。


「ありがとうございます。御迷惑を掛けついでにお願いしちゃいます。私の部屋があるマンションはこのそばなんです。そこまで傘をお借りしてもよろしいですか」


「もちろんです。マンションが近くなったら、僕はそこで待っています。そこから1人でお帰りになり、御自身の傘を持ってそこまで来ていただければいいですよ」


「ふふふふ、かまいません。私のマンションまで来ていただいても問題ありません。ところで学生さんなのでしょうか」


「はいC大の大学院に通っています。専攻は古代歴史学。それから昔話、伝説のたぐいです‥‥オタクっぽいですよね。引きました? 」


「全然、そんなこと全くありません。私も同じようなことが好きです。この町の図書館で司書をしています。C大の大学院生さんですか――安全な方だと思いますので安心です。私のマンションはすぐ近くです」


 それから、月夜見と日向光は並んで歩き始めた。


 初めてのことなのに、お互いの位置や歩くスピードはフィットしていた。




 運命の女神にふと、疑念が湧いた。


(これまであの2人は極めて近い関係で転生したわ。私が悲劇に進ませなければハッピーエンドを迎えるとこだった。2度あることは3度ある)


 その後、運命の女神は多くの神が光る球体でさまざまな世界を統括している大広間に歩いて行った。


 自分が悲劇の主人公にした2人の転生結果を確認しようとしたのだった。


 神の能力で、多くの世界の多くの人間達を検索した。


 すると――


 ある世界で運命が交差している2人に気が付いた。


「あっ!! この2人は!! しょうこりもなく、また、幸せになろうとするのね!! 」


 大変しつこい運命の女神は、2人の美しい悲劇を完成させようとした。


 たまたま、その世界を管轄している神が不在なことを良いことに、運命の矢を射った。




 日向光と月夜美が出会ってからもう3か月が過ぎようとしていた。


 お互いに大変相性が良い2人は付き合っていた。


 2人にとっては、いつもそばにいることが普通だった。


 その日も、彼女が努める図書館にいた。


 大学から帰宅途中の彼が、図書館で彼女の仕事終わりを待っていた。


 時間をつぶすために、古代歴史や昔話・伝承の本を手にとっていた。


 本棚に向い、彼は3回手をのばし、3冊の本を手にとった。


 1冊目は、オニ狩り剣士陽光とオニ族の王女月夜見の物語。


 2冊目は、大日皇子と月美との物語。


 そして3冊目は、暖光と月姫との物語だった。


 意識して手を伸ばしたわけではなかった。


 ただ、それらの本の表紙を見たとき、日向光は何かを思い出したような気がした。




 彼は受付に近づき、月夜美の前に3冊の本を置いた。


「月さん。本を借りたいのですが」


「はい。わかりました。日向さんはもう、この図書館のカードをお持ちですね」


 その後、彼女は3冊の本を手にとり題名を確認した。


「この3冊ですか!! 実は私もこの3冊が大好きなのです。もう何回も読んでいます」


「不思議なことに自然に手が伸びました。それぞれ悲劇っぽいですが」


「ネタばらしになってしまいますが、そのとおりです。でも、私は読み終えた後、全く違った感覚が湧きました」


「どういうことですか? 」


「それぞれの物語単体では悲劇として終わっています。しかし、この3つの物語はつながっており、絶対にハッピーエンドを迎えるという確信です」


「物語の2人を心の底から応援するのですね」


「はい」


 図書館の受付をはさんで、日向光と月夜美は笑顔でお互いの顔を見た。

お読みいただき心から感謝致します。

第2章からの展開、終局に御期待ください。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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