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2人は転生した(2回目)

第2章の開始です。

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 王都の裏門のそば。


 高くそびえる塔の屋上に牢獄があった。


 彼の命が燃え尽きようとしていた最後の最後の時だった。


 暖光(だんこう)は両手両足に鉄鎖をつけられたまま牢獄の中に寝そべっていた。


 今日も、月氏王国の国王と静姫が彼に問い掛けにきた。


「暖光よ。もういいだろう。お前がこんなに、この静姫がいやだとはいえ、死ぬことはあるまい。静姫と結婚して国王になれるのだから、側室をもてば良いではないか」


 国王は暖光の様子を見るに見かね、究極的な言葉を彼に投げた。


 彼にとって、その言葉ははるか遠くから聞こえてきたように感じた。


 しかし、最後の力を振り絞って彼は首をやっと動かし横に振った。


 この後に及んで暖光が徹底的に拒否するのを見て、静姫の本性が表に出た。


「ふふふ ばかな剣士。冷酷魔物であるお姉様がほんとうに好きなんて。ぼろ切れのようになって、すぐ死になさい!! 」


 そう言うと、静姫はくると回れ右をして、さっさと立ち会った。


 残された国王は言った。


「ほんとうに申し訳なかった。我が王都を救い、多くの住民を救ってくれた勇者に対して、恩をあだで返してしまった」


 国王は横たわる暖光に丁寧に一礼して、牢屋の前から去っていった。


 もう消そうな意識の中で、暖光は考えていた。


(どうしてかわからないけど、月姫さんのために私の人生があることは確信している。だからもうすぐ、ここで命を落したとしても、すばらしい人生だった)




 次の日の朝。


 王都の住民達が外に出た時、みんなが異常に気がついた。


 外気はとても冷たく、雪が降り始めていた。


 さらに時が経つにつれて、気温はどんどん下がるとともに大雪になり始めていた。


 最後には氷点下までとどき、豪雪と言ってよいほどになった。


 まず最初に国王が気が付いた。


 そして近衛団長を呼んだ。


「国王陛下。この異常気象は‥‥ 」


「そうだ。だぶん、あの娘が王都に近づいて来ているのだろう」


「冷酷魔物ですか? あっ 王女様に向かって申し訳ありませんでした」


「かまわない。月姫は激怒している。たぶん戦いになるだろう。王都に備蓄してある燃料を全て使い、いろいろな場所で火を焚くのだ。それに、王宮の堀に石油を流し燃やすのだ」





 やがて、王都の正門に続く街道の向こう側に人影が見えた。


 もちろん、たった1人で誰かが歩いてきた。


 白い着物をきた女性のようだった。


 銀色の神、赤い瞳は無気味に輝いていた。


 そして赤い瞳の中には怒りの炎が燃えさかっていた。


 彼女はとても冷たく言い放った。


(こお)れ、凍こごえよ」


 その女性がそう唱えると、猛吹雪は完全な密度になった。

 

 世界は完全な闇に包まれた。


 もし、空を眺めた人がいたならば、空には月が出ていることを気づいただろう。


 絶対零度の気流が吹いた。


 その気流は物に当たれば、その分子を粉々に崩した。


 ただ不思議なことに、気流は住民達にはとどかなかった。


 月姫が意識的に暖かいものを避けた結果だった。




 王都は大混乱になった。


 住民達は狂乱し、正門と反対側の裏門から続々と逃げ出した。


 事前に冷気対策のため、王都のさまざまな場所で火が焚かれていた。


 しかし、たとえ炎でも、絶対零度の冷気に振れると一瞬に消えて凍り付いた。


 やがて、特別な防寒着を着た近衛師団が月姫の前に現れた。


 1万人くらいの弓兵が火矢をつがえた。


「討て」


 指揮官の命令でたくさんの火矢が放たれ、空を埋め尽くした。


 ところが、


 たくさんの火矢が月姫に向かって落下に入った時、彼女が言った。


「凍りつき、元に返れ」


 火矢は凍り付き炎が消え、まるで打ち返されたように射手の元に飛んだ。


 それはたくさんの兵士に向かって逆に振りそそいだが、彼らの命は奪わなかった。


 矢尻が丸い氷に覆われていたからだった。


 ただ、その衝撃は多くの兵士達を打ち意識を奪った。


 その後、彼女は1歩1歩前進し始めた。


 そして、正門から王都の中に入った。


 普段はたくさんの人々が歩いていたが、今は誰もいなかった。


 まるで、廃墟のような様子だった。


 月姫はもう、談光がいる場所がわかっていた。


 彼の命の炎は、あと、ほんの少しだった。


「談光様、もう少しで参ります」




 その頃、高い塔の上の牢屋に横たわっていた暖光の心臓の鼓動は止まりそうだった。


 そして鼓動の間隔が長くなった彼の心臓のダメージになったのは、この冷気だった。


 月姫の冷気は王都の空気を覆っていたが、牢屋の中も例外ではなかった。


 もう口を動かすことができない彼は心の中で考えていた。


(月姫様。1回しかお会いすることができませんでしたが、その時、もう何回もお会いしたことがあったような気がしていました。お近くまで来ていただけたのですね。私が死んでもきっとまた会えます)


(悲・し・ま・な・い・で‥‥ )




 その時、月姫は王都の中を歩いていた。


 後、少しの距離で談光に再会できる場所だった。


 幅広い道の真ん中で彼女はすぐ前に見える高い塔を見上げて全てを悟った。


 手を挙げれば今にも触れそうな近かった。


 しかし、遠く遠く、無限の距離があった。


 そして彼女は絶叫した。


「なんで、なんで、こんな目に合うの!! 」


 一瞬、彼女は気を取り乱し完全に錯乱したように見えた。


 ところが、彼女の気持ちは強かった。


 悲運にもへこたれなかった。


 気持ちは負けないように努めた。


 彼女の心に希望が浮かんだからだった。


 最後には全てを想い出した。


(私は、月夜見、月美、そして今は月姫。そして彼は、陽光、大日皇子、そして今は暖光様、また転生して、必ず交わる世界線を生きることができます。希望はあります)




 天上界でさまざまな神々がそれぞれの異世界を制御している部屋の通路だった。


 運命の女神が立ち止まり、別の神の光る球体を見て心から笑った。


「やったー やりましたよ。最大の悲劇ができました。永遠の別離を迎えた時、そのタイミング、この距離はよかったんじゃない。2人ともお疲れね」




 運命の女神は十分に満足して、その場を通り過ぎた。


 ところが、彼女に不当に干渉された異世界を管轄していた女神が、後ろからその姿を見ていた。


 女神は自分の席に戻ろうとしていたのだが、全てを悟った。


「運命の女神よ。最高神のお気に入りだからといって、やって良いことと悪いことがあるわ」


 次に女神は自分の光る球体に映った月姫の毅然とした立派な姿を見て感動した。


 女神は月の女神。


 彼女はその力を行使した。


「アルテミスリング」


 1回だけだが、神を殺すことのできる力を秘めたリングが月姫の指に現れた。 

お読みいただき心から感謝致します。

第2章からの展開、終局に御期待ください。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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