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2人は転生した(1回目)

第2章の開始です。

運命の女神のいたずらで、悲劇の舞台に立たされた2人の恋愛物語です。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。

是非是非、お楽しみください。

 全ての光りが死人の国の中に入ると、周囲は再び明るくなった。


 大日皇子(おおひおうじ)が言った。


月美(つきみ)さん。立派に戦った戦士を人間、魔物を区別せず弔ったのですね」


「死を恐れるのではなく、名誉ある正しい死であれば敬わなければならないと」


「そうです。そのとおりです」




「皇子様。今からすばらいいものをお見せします。私の後ろに立ち、私につかまっていただけますか」


「えっ!! 女性に後ろからつかまるなんて!! 」


「どうぞ」


「ほんとうに良いのですか? 」


「はい。もちろん」


「では、しばらく気持ちを整えて」


「しっかりつかまってください」


 大日皇子が背中からつかまったことを確認すると、月美は飛翔し始めた。


「えっ!! 空を飛ぶなんて」


「大丈夫ですよ。私のオーラが皇子様をつかんでいます」


 上空から見ると、広い平野は単色の緑で美しかった。


 しばらく空を飛んでいると、単色の緑が変った。


 赤、青、黄色など、さまざな原色の絨毯(じゅうたん)のようになった。


「今、この平野の中でさまざまな花々が満開に咲いている場所の上を飛んでいます」


「きれいですね」


「私はここが好きなのです。ねぜだがわかりませんが、生まれる前から―― 」


 そう言うと、月美は下に降り始めた。


 そして、花々が咲き乱れる場所に大日皇子とともに降りた。




「きれいですね。私は生まれてから、王都の王宮の中でほとんど過ごしてきました。ですから、今までこんなに花々が美しい場所に来たことはありませんでした」


「ここは、山の上にある私の家からも少し遠いのです。ですから、特別な能力を使うことができる満月の日に飛翔しなければ、この場所を見つけることができなかったでしょう」


 そう言った後、月美は満面の笑顔で皇子を見て言った。


「私の心の奥には、昔昔、誰か、とても大切な方とこの場所で初めてお会いしたような記憶がよみがえりました。誰だかわかりませんでしたが、今、はっきりとわかりました」


「えっ、誰ですか? 」


「皇子様です」


「そうですか‥‥‥‥ 何か前世のような記憶ですか‥‥‥‥ あっ!!!! なんとなく」


「想い出されましたか。不思議ですよね」


「はい。この場所で魔物のような生き物の大群から、月美さんのために戦ったような」


 それから、皇子は腰に差していた宝剣:黒斬を抜いた。


「黒斬にも何か関係があったと思います」


 皇子は黒斬を天に向かって突き上げた。


 き――――ん


 不思議なことに、宝剣からかん高い振動がこだました。


 そして、その振動は世界のすみずみにまで届いた。


 黒斬が起こした振動は、重要な運命が成就した(あか)しだった。


 しかし、それは2人にとって、大きな不運を招いた。




 2人が1回目に転生した世界は、運命の女神が統括しているものではなかった。


 別の神が統括していたが、天上界における席(位置)は、運命の女神の(となり)だった。


 宝剣:黒斬から出たかん高い振動は、別の神の光る球体から漏れ出るほど大きかった。


 き――――ん


「なに!! 」


 別の神は不在だったが、当然、隣にいた運命の女神が興味をもった。


 運命の女神は、隣の神が世界を統括する光る球体をのぞきこんだ。


「あっ!!!! この2人は!!!! 」


 かって、自分が統括していた世界にいたオニ族の王女月夜見、とオニ狩り剣士陽光であった。


「2人でこの異世界に転生したのね。そして、もう、こんなに親密に。最高神様の仕業ね、これでは悲劇が完成したことにならないわ」


 天上界では、それぞれの神が自分の統括する世界以外に力を行使することは禁止されている。


 しかし、運命の女神はどうしても、2人が結ばれることを阻止したかった。


「どうすれば良いかしら。そうそう、こうすれば悲劇の結末になるわね」


 運命の女神は心から微笑んだ。


 そして、別の神が統括する世界に自分の力を行使した。


「この世界に生きるすべてのもの。あまねく2人の敵になりなさい!! 」




 その頃、王都の王宮、大王の執務室に異変が起きていた。


 大王と側近の大臣達がいる大きな部屋の一部の空間が闇に(おおわ)われた。


「これは?? 」


 大神官が叫んだ。


「大王。魔界と連結する窓が開きそうです」


「衛兵!! 衛兵!! 」


 しかし、あっという間に窓は開き、そこから重々しい無気味な姿が現れた。


 それは、魔王アスモデウスだった。


「人間の大王。お会いするのは初めてだな。今日は建設的な和平案をもってきたぞ。人間側があることをしてくれれば、魔界はこれから一切、人間界への侵攻を行わない」


大嘘(おおうそ)をつくな」


「大嘘ではないぞ。私は自分の血で誓約書を書き、さらに、その誓約書に自戒魔法を込めた。これを見ろ」


 魔王は大王に誓約書を渡した。


 それを読んだ大王の顔は苦悩にゆがんだ。


 大王は最も信頼のおける大神官にそれを見せた。


 すると、大神官の顔も苦悩にゆがんだ。


 しかし――


 大神官が苦悩の中から決断し、誓約書を大王に返すとともにうなずいた。


「大王様。仕方がありません。我が国家と人民の幸せのためであれば‥‥ 」


「‥‥そうか。そうであるな‥… 」


 魔王の誓約書にはこう書かれてあった。


(大日皇子が命を落すなら、魔王アスモデウスは魔界と人間界との永遠の平和を約束しよう。この約束を魔王アスモデウスが破る時は、魔界は永遠に消滅する)




 赤、青、黄色など、さまざな原色の花々が絨毯(じゅうたん)のようになった美しい場所だった。


 月美と大日皇子は、ただ黙って並んで腰かけていた。


 2人は黙っていたが、たくさん会話していた。


 それが永遠に続くと思われたが――




 はるか向こうから、早馬が掛けてきた。


 それは、大日皇子がもっとも信頼する従者だった。


(さかき)!! 」


 全速力で来たらしく、皇子のそばに転がるように現れ、やっとのことで平伏する体制をとった。


「皇子様。お探し致しました。大王様からこれをお渡しするようにと、お預かりしました」


 榊は皇子に何かを渡した。


 それは、魔王が大王に渡した誓約書だった。


 読んだ後、大日皇子(おおひおうじ)は顔色一つ変えなかった。


 そして、隣にいた月美に誓約書を渡し、言った。


「月美さん。もう一度、御一緒に高い高い空に登りたいのですが」


 月美はもう、誓約書に書かれていたことを読んでいた。


(あなたは、人間の世界を守るために、命を落すつもりですね―― )


 2人はお互いに、にっこりと微笑みあった。


 その後、2人は一緒に空に飛翔した。


 高く高く、太陽の光りが消え、やがて、宇宙の暗黒になった。


 月美が言った。


「このような場所でも、私は命を落すことができません」


 彼女の美しい赤い瞳は、大粒の涙に満ちあふれていた。

お読みいただき心から感謝致します。

第2章からの展開、終局に御期待ください。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

御遠慮されず御評価いただけると大変ありがたく思います。

一生懸命、書き続けます。





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